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APT、人がつながれば設備も現場も変えられる

2026年6月4日 (木)

ロジスティクスAPT(アプト、千葉市美浜区)はつねに、現場の「人」を起点にしてきた。人がつながらなければ、設備もつながらない、その信念で、メーカーの垣根を越える最適解を積み重ねてきた。いま、その流儀を背負って動き出すのが、ヤマニ屋物流サービス(茨城県古河市)の西原誠氏と、APTの石川豪彦氏だ。二人三脚で、物流の課題に正面から向き合おうとしている。

3年越しの縁が、課題解決へと動き出した

西原氏は1990年、物流の最前線である関西の現場でキャリアをスタートさせた。その後、活躍の場を関東へと広げ、物流現場の指揮や営業に奔走する。2022年からは、食品の共同配送やチルド輸送を強みとする総合物流会社、ヤマニ屋物流サービスに身を置き、食品メーカーが抱える切実な課題と正面から向き合い続けている。

西原氏と石川氏との縁は前職時代にさかのぼる。当時は2人の間に取引こそなかったが、案件の行間まで読み切り、ひと手間を惜しまない石川氏の仕事ぶりが西原氏の記憶に残った。「やり取りしていても本当に親身だった。信頼できる方だと思い、転職後も接点をつないできました」と西原氏は振り返る。

▲ヤマニ屋物流サービスの西原誠氏

一方、石川氏も転機を迎える。縁あって、APTへと転職したのだ。それから今まで、両者の縁は変わらずに太いままだった。西原氏の現場の悩みを折に触れて受け止め、手札を温めながら差し出すべき瞬間を見極め続けた石川氏。数年を経て、ようやく協力の段取りがかっちりと噛み合う。「3、4年経って、ようやく西原さんの役に立てるところまで来ました」と石川氏は笑顔を見せる。

人海戦術の限界と、深刻な属人化

ヤマニ屋物流サービスの売上の7-8割は、食品共同配送が支えている。50社のメーカーから数千アイテムを預かり、1日平均13万ケースを配送している。繁忙期は22万ケース超。これら数字だけでも、倉庫内の空気の濃さが伝わる。だが現場は人海戦術を主体に運用されている。メーカー毎に手順や禁則が微妙に違い、作業の要点が特定の担当者に偏る属人化が、現場の柔軟性を削っている。

現場の厄介さは、教育の現場にしわ寄せが来る。良質な作業品質を維持するには、作業者が数十通りの運用ルールを覚える必要がある。 新しく来ていただいた方に、すぐ作業を理解してもらうのは正直難しい」と西原氏。だからこそ同氏は、経験や勘に頼らずとも迷わず動ける“共通の手引き”を急いで整えようとしている。

さらに現場を覆うのは、静かな高齢化の波だ。主力は50〜60代。頼れる背中であるほど、「この先、いつまで持つか」という問いが現実味を帯びる。WMS保守を担う2名も同様で、仕組みの継続性は個人の体力に依存のままだ。若手は指示には従うが、現状を疑い、手順を磨き直す視点がまだ育っていない。効率や合理性を自前で点検できないままでは、組織は長く息が続かない。西原氏の危機感は、そこにある。

まず現場を見る。それがAPTの流儀

石川氏は、提案書より先に現場へ足を運ぶ。机上で“正解”を弾き出さず、動線の癖や作業者の手つきを自分の目で確かめるためだ。見るのは効率よりも、まず安全の張り具合。規律が緩んだ現場に設備を入れても、成果は長続きしない。石川氏は「効率化は大事。でも一番気にするのは安全意識です。そこが甘いと、この業界の取引関係は簡単にひっくり返る」と言い切る。

▲APTの石川豪彦氏

ヤマニ屋物流サービスの現場を視察した石川氏は、その管理体制を高く評価した。スタッフの身だしなみや空調環境の整備状況から、同社の安全への真摯な姿勢を読み取る。「ヘルメットや安全靴、ユニフォーム着用もしっかりしていますし、空調も整っています。当たり前を当たり前に実行する管理体制に共感し、安心して集中できる」と言う石川氏は、この良好な土壌を生かした改善案の策定に着手する。

石川氏は幾つもの物流現場を渡り歩き、いつも最前線に立ってきた。荷役も配送も身をもって知っているから、現場の痛点が体温で分かる。手元の迷い、目線の曇り、ため息まで、小さなサインから滞りと不満をすくい上げる。だから提案は机上の図面に終わらない。理屈より先に「現場がうなずく」落とし所を探し当てる。改善は、現場を知る者の仕事だと石川氏は信じている。

APTが開いた、変化への扉

両社の歯車が噛み合ったのは、古河チルド事業所の業務委託受託が起点だ。365日動く現場を安定させるため、APTは人員体制づくりから伴走する。さらに、他事業所では倉庫建設・マテハン・配送を一体で提供する「Σ」(シグマ)導入も視野に入れる。初期投資をAPT側で資産化し、荷主は月額定額で使える。その設計が、現場の踏み出しを軽くする。「初動(イニシャル)は弊社が負担する。その分、お客さんはサブスクで利用できるので予算組みし易く、経営の安全性や柔軟性に寄与する」と石川氏は説明した。

▲「倉庫の現場をどう整えるか。そこから人手不足も属人化もほどけていくはず」と語る、APTの井上良太社長

物流の力関係は、静かに、しかし確かに組み替わった。かつては荷主が主導権を握り、物流会社は運賃を削られ、コンペで仕事が流れるのも日常だった。いまは逆に、骨の折れる案件ほど担い手が限られ、競争の舞台そのものが表に出にくい。結果として、物流側の発言権は相対的に増している。石川氏はこの潮目を踏まえ、互いの強みを預け合う関係が欠かせないと語る。選別が進む時代に、独自の付加価値を持つAPTの出番が重要になり、多くなる。

ベテランの心を動かした一言

現場に新技術を入れれば、必ず小さな抵抗が起きる。ましてや長年、手で積み上げてきたベテランほど、「自分の仕事が消えるのでは」と身構える。石川氏はそこを正面から受け止め、機械化を“排除”ではなく“負担の軽減”として言葉にする。「いちばん刺さったのは、作業負担が楽になる、という一言。手でやっていた動きが軽くなるだけで、体力の衰えを感じ始めた方の目が変わる」と語った。

外部の目を持つAPTは、組織改革を推し進める推進役になる。身内の言葉では届きにくい「なぜ今、変えるのか」を、第三者として筋道立てて言語化できるからだ。「APTさんのような外部が教育に入ると説得力が違う。みんなが聞く耳を持ってくれる」。西原氏はそう語り、専門家の知見が現場の意識をじわりと更新していく手応えをにじませた。

変化への抵抗は、慣れ親しんだ手順を手放す恐れに宿る。石川氏はセンター立ち上げやシステム改修の現場で「説得こそ最難関」を幾度も見てきた。役割を奪われる不安を、新しい技術を使いこなす矜持へ、その気持ちの置き場を整えることに腐心してきた。現場一人ひとりの声を拾い、対話を積み重ねて心の堤防を少しずつ低くする。技術を入れる前に、心を動かす。そこに石川氏は時間を惜しまない。

誰でもできる現場へ。2人が描く未来

西原氏の視線は、物流が抱える構造疲労の核心に向く。人手不足も属人化も、突き詰めれば作業環境の設計に帰着する。そう腹をくくり、「倉庫の現場をどう整えるか。そこから人手不足も属人化もほどけていくはずです」と言葉を選ぶ。APTの井上良太社長もまた、机上の論理ではなく現場の手触りを知る石川氏に期待を寄せる。「うちはシステムや機械の側に長くいました。だからこそ、石川さんのような方の参画は心強い。ヤマニ屋さんがこの段階で心意気を買ってくれたことが、本当にうれしい」と続けた。

石川氏は、これからも現場主義を手放さない。デジタル化が進むほど、最後にものを言うのは顔を合わせた会話だという。「コミュニケーションをもっと濃く取りたい。どちらかというと現場の人間なので、電話で済ますタイプじゃない」と石川氏。西原氏もまた、技術を支えるのは結局、人だと念を押す。「最後はやっぱり人間力。対話力や、その人の魅力が決め手」と2人は口をそろえた。

24時間稼働や年中無休という過酷な体制が広がり、物流現場は疲弊し切った。石川氏は物流業界のサービス過剰化に強い問題意識を持つ。週に1日でも休みを増やすだけで現場の空気は劇的に変わると主張する。利便性を追求しすぎた現状を見直し、昔のゆとりを少し取り戻すことが持続可能な物流への近道となる。APTはこのたび、第一種貨物利用運送登録が完了し、運送業務にも着手可能になった。同社はさらに、効率化の先にある「人間らしい働き方」の実現を目指す。無理のない循環が、業界の未来を救うと信じている。

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