ロジスティクス物流2024年問題、そして改正物流効率化法・貨物自動車運送事業法の施行。今、荷主企業に強く求められているのは、長時間労働の元凶とされる「荷待ち時間」の削減だ。その実現に向けた大前提となるのが、車両の入退場を正確に捕捉し、その動態を「見える化」することである。

▲レンゴー利根川事業所(出所:レンゴー)
しかし、実際の現場では「物理的なスペースの制約」や「複雑な周辺環境」が壁となり、正確な管理に踏み出せないケースも少なくない。そのなかで、段ボール国内シェア首位のレンゴーが利根川事業所で構築したシステムは、極めて示唆に富んでいる。

▲レンゴー利根川事業所のレイアウト。一旦B地区に入って待機したトラックは、指示を受てから、500メートル離れたA地区の燃料建屋、チップヤード荷移動する
同事業所が挑んだのは、「500メートル離れた待機所との連携」「狭小な進入路」「通学路の安全確保」という、一筋縄ではいかない複雑な車両オペレーションの自動化だ。この難題を、古野電気のETC技術を活用した車両管理システム「FLOWVIS」(フロービス)を活用していかにクリアしたのか。他社が参考にすべき、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の「一歩先」を行く運用実態をレポートする。
燃料転換が生んだ「物理的制約」という課題
利根川事業所が直面した課題の起点は、脱炭素とコスト最適化を目的に進めた非化石エネルギー(木質チップなど)への転換プロジェクトにある。燃料の輸送量増大に伴い、懸念されたのがトラックの滞留問題だ。

▲燃料建屋で廃棄物固形燃料を荷下ろしするトラック

▲チップヤード
燃料荷下ろしを行う「A地区(作業場)」は入り口が狭く、待機スペースも6-7台分と限られている。滞留が公道にまで及べば、周辺の交通を阻害する。そこで同社は、公道を挟んで500メートル離れた「B地区」に一次待機所を確保したが、この「離れた2拠点をリアルタイムでつなぐ管理体制」の構築が、効率化に向けた不可欠なミッションとなった。
異常気象も想定内、四方氏が貫いた「認識精度」へのこだわり
車両の動態を正確に記録・管理するためには、センサーによる自動認識が必須となる。システム設計の指揮を執った同社製紙部門生産本部生産部生産技術課長の四方(よも)修平氏は、選定にあたってあらゆる「不確定要素」を排除することに注力した。

▲B地区待機場に進入する車両。入り口のETCで進入が検知されると、オペレーションルームに自動で通知・記録される。ETCはこのほかB地区出口、A地区入り口、A地区台貫の計4か所に設置されている
「当初はカメラを使ったシステムも検討しましたが、利根川に近いという立地条件を考えると、早朝の深い霧や冬場の降雪でナンバープレートが読み取れないという懸念がどうしても拭えませんでした。我々が求めていたのは、天候に左右されず、かつ24時間365日、誘導員が不在でも『自動で確実に回る』仕組み。その絶対条件をクリアできるのが、認識率ほぼ100%を誇るETC技術でした」と四方氏は振り返る。

▲B地区待機場。電光掲示板で指示があった車両はA地区待機場へ移動する
周辺は小中学校が隣接する通学路であり、車両誘導のミスによる公道での滞留は、地域の安全を脅かすことに直結する。「通学路にトラックが並んでしまうのが、会社として絶対にやってはいけないこと。いかにスムーズに、公道に並ばせないようにするかを重視しました」と語るのは、同事業所施設部動力課長の西本竜也氏だ。

▲B地区待機場を退場する車両
四方氏は、この安全性を担保するため、単なる車両検知に留まらず、後述する「ショットガンシステム」という排他制御のロジックまでを精緻に組み上げた。
「ショットガンシステム」が実現する精密な誘導ロジック
FLOWVISを核とした運用は、四方氏らが考案した、通称「ショットガンシステム」と呼ばれる精密な排他制御で成り立っている。これは駅前のタクシープールをイメージすると分かりやすい。客待ちのタクシーが一度待機所に並び、乗り場が空くと先頭の1台だけが移動する仕組みと同様に、本システムも公道上にトラックが滞留しないよう、1台ずつ「射出」するように誘導を制御する。

▲A地区待機場に車両がやってくるとETCで検知しバーゲートが開く

▲A地区の電光掲示板では、どの車両がどこへ移動するかを表示
具体的な流れとしては、まず500メートル手前のB地区にトラックが到着すると、ETCアンテナが車両を特定して入場の記録を刻む。システムは常にA地区の混雑状況と公道の車両有無を判別しており、受け入れ準備が整ったタイミングで、電光掲示板を通じて特定の車両へ「ジャストインタイム」の出庫指示を出す。指示を受けた車両がA地区の狭小な入り口に到着すると、ETC認証によってゲートが自動で開放され、構内掲示板が荷役内容に応じた適切な荷下ろし場所をリアルタイムで指示する。

▲構内を管理するオペレーションルームで監視カメラのモニターと並んで設置されたFLOWVISの管理画面。A・B地区の入退場、公道を走行中の車両などが一目でわかるシンプルなインターフェース。確認できる要素や管理画面の構成は、古野電気と入念な打ち合わせを行って決定した
この一連の動作により、ドライバーは入構手続きのために車両から降りる必要が一切なくなった。従来のように受付での停車や降車に伴うタイムラグが発生しないため、構内に入る前の段階で車両が滞留することもなく、極めてスムーズな入構を実現している。

▲車両が台貫に載るとA地区を退出したことが通知され、B地区の車両に移動の指示が出される
運用の柔軟性と、計量事務自動化への拡張性
本システムの有用性は、単なる誘導に留まらない。同事業所では積み荷を積んだ車両が台貫(トラックスケール)に載った重量を計測し、空車重量との差を荷受量としている。現在はドライバーが降車して計測する運用となっているが、車両特定と同時に台貫と連携し、ドライバーが乗ったまま自動的に重量を計測することも可能だ。

▲システム構築を担当したレンゴー製紙部門生産本部生産部生産技術課長の四方修平氏
現在、同システムにはおよそ120台の車両が登録されており、1日あたり30台前後の燃料トラックが訪れる。特筆すべきは、システム導入時やその後の登録作業の簡便さだ。既存のETC車載器をそのまま利用するため、四方氏は「導入時の車両登録も非常にスムーズに運びました。運用開始後も、新規車両や臨時車両が来場する際は専用のテスターで情報を読み取るだけで登録が完了します」と、その拡張性の高さを評価する。

▲現在FLOWVISのシステムを運用しているレンゴー利根川事業所施設部動力課長の西本竜也氏
西本氏も「今のところ完全に認識しており、困ったことは一回もありません。認識率は100パーセントですね」と、その信頼性に太鼓判を押す。現場に過度な負担を強いない設計が、スムーズな定着を後押しした。
物流DXの本質を突く「利根川モデル」
荷待ち時間の削減に向けた第一歩は、現状を正しく把握することにある。レンゴー利根川事業所の事例は、四方氏ら設計チームが現場の物理的な制約(距離・広さ・気象)と地域社会への責任(通学路)を直視し、最も信頼性の高い「ETC」という技術で管理の自動化を完遂した結果だ。

▲【中央】レンゴーへの導入を担当した古野電気システム機器事業部第1営業部東京支店営業課主査の綱木健二氏
「止まらない、間違えない、そして記録を逃さない」。人手不足が深刻化する中で、安全を担保しつつ物流効率を最大化させるこの手法は、全国の工場・物流拠点にとって、今まさに取り組むべき「管理のスタンダード」を示していると言えるだろう。






























