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川汽「事実無根」と抗議、親会社の近鉄エクスは現地に担当役員派遣

APLロジ、顧客に川崎汽船の倒産示唆するメール

2016年9月23日 (金)
川崎汽船メール問題
空白

ロジスティクス韓進海運の経営破綻が思わぬ方向に飛び火した。

同社は川崎汽船など5社で共同配船のアライアンスを構成しており、加盟各社は目下、韓進海運の経営破綻に伴う混乱の対応で手いっぱいの状況だが、すでに世界では「韓進海運の抜けた穴」をめぐって荷主獲得競争が始まっている。

こうした中、近鉄エクスプレスが昨年5月に買収した大手国際フォワーダー「APLロジスティクス」(シンガポール)がその取引先に「川崎汽船に倒産の可能性がある」という内容のメールを発信し、APLロジスティクスから配信されたというメールに基づき、各国の荷主企業が川崎汽船に「倒産する可能性があるというのは本当なのか」などと問い合わせる事態に発展していることがわかった。

問い合わせが殺到したことに驚いた川崎汽船は、直ちにAPLロジにメールの撤回を強く求めて抗議。この結果、APLロジ側はこうした内容のメールを発信していた事実とその内容の誤りを認め、メールの撤回と訂正文書の送付を約束した。

しかし、ただでさえ韓進海運の経営破綻に伴う対応に追われている最中のできごとだけに、事態を重視した川崎汽船は「事実無根であり、非常に迷惑な話だ」と憤りを隠せない様子で、APLロジに対する法的措置も辞さない構えを見せている。

実際のところ、韓進海運の経営破綻が川崎汽船に及ぼす影響はどの程度になるのか。

直接的な影響は、取引先への説明や混乱の最中にある「貨物」にどう対応するかといった業務上の対応が中心で、総合海運会社である同社にとってコンテナ船部門は一部に過ぎず、「屋台骨を揺るがすほどまでは行かないのではないか」という見方が大勢を占める。

同社も「韓進海運と同じアライアンスに属しているわけだから、同業他社との『呉越同舟』による悪影響はあるが、財務面にはさほど大きなダメージとならないだろう」との見方を示すが、舵取りを誤れば影響が大きくなる可能性をはらんだ敏感な問題であることは間違いない。

そういう中で発覚した、APLロジによる川崎汽船倒産メールだけに、同社とその取引先が受けたショックは小さくないだろう。

23日時点でAPLロジは、このメールに関する公式声明を発していない。

親会社の近鉄エクスプレスは「そういうメールがAPLロジスティクスから発信されたという報告は受けているが、詳細を把握できていない」とコメントした。自社グループ入りしてからまだ日が浅いとはいえ、1500億円もの巨費を投じて買収したAPLロジによる行為であり、国際的な混乱が生じている韓進問題に関することだけに、知りませんで済む話しではない。

窮地にある物流企業のあらぬ噂を「あっても不思議ではないタイミング」で流したとなれば、企業姿勢やコーポレートガバナンスが機能していないのではないかという指摘も出てこよう。

子会社で発生した事態に、近鉄エクスプレスはどう対応するのか。

同社によると現在、近鉄エクスプレス品川本社のAPLロジスティクス担当役員がシンガポールに飛び、今回の事態を含めた詳細な状況把握と収拾に向け、陣頭指揮を執っているという。具体的な対応は未定だが、担当役員が帰国後、26日にも同社首脳が役員から報告を受けたうえで対応を協議する予定で、「事実関係を精査し、真摯に、スピーディーに対応していきたい」としている。

川崎汽船による反論
或るNVOCC企業により、あたかも当社に倒産の可能性があるかのごとき主旨のメールを同社の顧客に発信された事実が確認されております。当該メールは何ら根拠を持たない事実無根のものであり、同社に対しては当該メールの撤回を求め強く抗議を申し入れたとともに、今後必要な法的措置を講じることも検討しております。なお、同社も当該メールの誤りを認め、撤回と訂正文書の顧客への送付を約束しました。当社の財政状態は、下記のリンク先に見られるとおり、2016年6月30日現在の現預金が214,304百万円、純資産合計が330,392百万円、自己 資本比率が29.1%、流動比率が154.5%であり、格付けにおいても、他船社と比較して遜色ないレベルにあって、健全性を保っており、同社がその顧客 に宛てたメールが誤りであることは明らかです。

http://www.kline.co.jp/ir/library/bs/__icsFiles/afieldfile/2016/07/28/fh2016_1con.pdf

当社は今後とも高品質なサービスをお客様に提供して参ります。