アパレル三菱レイヨンは2日、炭素繊維・複合材料事業の欧州駐在員事務所を1日付で、ドイツ・デュッセルドルフの三菱化学ヨーロッパ社内に開設したと発表した。
これまで、欧州での炭素繊維の販売は炭素繊維製造子会社グラフィル社(米国カリフォルニア州)の英国事務所が手掛けてきた。今後は英国事務所の販売機能を維持しながら、ドイツの駐在員事務所を拠点に加え現地パートナー企業との中間材料開発、産官学プロジェクトへの参画、最終顧客との接点強化を進めていく。
現在、欧州の炭素繊維・複合材料市場は、ドイツを中心に急速に拡大しつつある。自動車分野では、炭素繊維・複合材料を車体構造材料に全面採用したBMWの電気自動車iシリーズが2013年に発売される。この電気自動車は、同社とSGLグループの合弁会社(MRC-SGLプレカーサー)が供給するプレカーサー(炭素繊維の原料となるアクリル繊維)を使用し、SGLグループとBMWグループの合弁会社(SGLAutomotiveCarbonFibers)が製造する炭素繊維を使用する。
再生可能エネルギー分野では、既に炭素繊維・複合材料を使用した大型翼を採用する欧米系風車メーカーは5社以上を数え、この先既存風車の高発電効率翼への交換需要の増大、北海での大型オフショア風車建設に向け、炭素繊維・複合材料を採用する風車メーカーはさらに増える見通し。特にいち早く脱原発と再生可能エネルギー導入を決定したドイツでは、環境負荷低減に貢献する材料としての炭素繊維・複合材料の高速加工技術開発を官民で推し進めている。
今般開設するドイツ駐在員事務所では、このような市場動向に対応するため、幅広い産業用途向けマーケティング、大手自動車メーカーへの新規材料・成形工法の提案、パートナー企業との産業用途での最適中間材料の共同開発を実施する。新事務所は、将来的に販売機能と開発機能を併せ持つ現地法人化を目指す。