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船主協会、「トン数標準税制の拡充」など重大ニュース発表

2011年12月19日 (月)

話題日本船主協会は16日、「2011年海運界重大ニュース」をまとめ、発表した。海運界重大ニュースは次の通り。

 

「トン数標準税制の拡充決定」
12月10日に発表された2012年度税制改正大綱で、「次期通常国会での海上運送法改正などを前提に、2013年度税制改正で拡充する」とされた。これにより、トン数標準税制が一定の外国籍船にも適用されることとなり、日本の外航海運の国際競争条件が諸外国に一歩近づくことが期待される。また、2012年3月末で適用期限を迎える「国際船舶に係る登録免許税の特例措置」「外航船舶に係る固定資産税の課税標準の特例措置」などの租税特別措置についても、ほぼ要望通りの内容で延長が認められた。

 

「東日本大震災が発生、海上輸送を含む経済活動に大打撃
3月11日に太平洋三陸沖を震源に、観測史上最大のマグニチュード9.0の大地震が発生、直後の巨大津波により沿岸部に壊滅的な被害が生じた。同協会は「東北地方太平洋沖地震支援対策本部」を設置し、支援物資の緊急輸送や内外からの義援金の提供に対応した。また、同時に発生した福島第一原子力発電所の事故による深刻な放射能漏れに起因し、放射能汚染に関わる風評が生じ、外国船社運航船の日本就航回避が発生した。これに対し、協会は政府と協力して、関係国・機関に主要港の放射線数値の情報を提供するなど風評被害の排除などに努めた。

 

「円高や燃料油の高騰と海運市況の低迷により外航海運企業の経営が悪化」
2010年夏からの円高が急進し、2011年10月には75円66銭と史上最高値を記録した。また、燃料油価格も高騰を続け、2011年はトン当たり600ドル以上と昨年に比べ高騰した。さらに、日本の東日本大震災や欧州の財政金融問題などにより、先進国では景気が低迷し、大型コンテナ船をはじめとした新造船の竣工などの船腹過剰感から海運市況は低迷した。このため、外航海運各社の2011年度の中間決算は、前年度に比べ著しく悪化している。

 

「ソマリア沖の海賊、活動範囲を拡大し依然猛威、当協会は芦田会長を団長とする訪問団をジブチに派遣」
アデン湾・ソマリア沖の海賊は2011年も猛威を振るい、依然として世界経済への重大な脅威となっている。2011年は事件が急増した2009年、2010年を超える220隻超となり、このうち約30隻がハイジャックされた。日本など各国の懸命な取り組みにもかかわらず、インド洋、アラビア海の全域で発生し、各国の艦艇による護衛や哨戒活動が及ばない海域にまで拡大した。このため、協会では海賊対策の強化を関係省庁や国際機関に働きかけており、特に日本籍船に自衛官や海上保安官など公的な武装ガードを乗船させるか、不可能な場合は民間の武装ガードの乗船が可能となるよう国会、関係省庁などに要望している。また、7月には海上自衛隊・派遣海賊対処航空隊のジブチでの活動拠点が開設されたことから、芦田会長を団長とする第2回訪問団をジブチに派遣し、海賊対処行動部隊、ジブチ政府関係者に感謝の意を表明した。

 

「船舶からのGHG排出削減のための技術的手法がまとまる」
7月に開催された国際海事機関(IMO)の第62回海洋環境保護委員会(MEPC62)で、国際海運でのCO2排出規制を導入するための海洋汚染防止条約(MARPOL条約)の一部改正案が採択された。これにより、新造船に対しては燃費性能に関する規制(EEDI)が、既存船を含むすべての船舶に対しては、効率的な運航を促すための計画書(SEEMP)の保持が強制化されることとなった。この規制により、何ら対策を講じない場合に比べ、2030年には約20%、2050年には約35%のCO2排出削減が期待できる。今後は、CO2の排出削減を目指して、燃料油課金制度をはじめとした経済的手法の検討が進められることとなっており、協会では引き続き、国土交通省と協力して、GHGタスクフォースを中心として適切に対応することとしている。

 

「三級水先人が誕生、第一期生が免許取得」
水先制度改革により、人材ソースの多様化を目指して、船長経験者以外にも水先免許の途をひらく、一級から三級までのなど級別免許制度が導入された。2008年10月に登録水先人養成施設に入学した第一期生が、2年半にわたる養成教育課程を修了、その後国家試験を経て、6月に初の三級水先人として誕生した。

 

「国土交通省、わが国独禁法適用除外制度維持を正式表明」
国土交通省は6月、外航海運に係る日本の独占禁止法適用除外制度について、公正取引委員会と協議した結果、引き続き適用除外制度を維持し、2015年に再度見直しについて検討すると発表した。この制度見直しは規制・制度改革に関する対処方針(2010年6月閣議決定)を受けたもので、同省は適用除外制度維持に至った理由について、主要貿易国が制度を維持している現状や、EU競争法適用除外制度廃止の影響を挙げた。

 

「ILO最低賃金が3年ぶりに改定、一方、IBF交渉で3年ぶりに船員賃金改定」
各国の自国籍船に乗組む船員賃金の基礎となる国際労働機関(ILO)最低賃金(AB船員基本給ベース)は、リーマンショックに伴う経済危機の影響で、2008年12月末日以降は545ドルのまま凍結状態にあったが、4月の労使交渉で、2012年から2013年末までの間に585ドルまで段階的に引き上げることが決定された。一方、外国人船員の雇用条件を取り決めるIBF交渉は、従来のトータル・クルー・コストに対する引き上げ率を決める方式を見直し、船員賃金や組合関連基金などをA項目、その他をB項目と分けた上で、中央交渉ではA項目全体の引き上げ率のみ取り決めて、詳細は地域交渉に委ねる交渉方法が採用された。新しい方法に基づき、交渉が進められた結果、3年ぶりに船員賃金が見直され、現行のAB船員の手取り賃金564ドルの場合、2012年から2014年までの間で、合わせて72ドル増額されることとなった。

 

「外国人船員承認制度緩和に係る諸施策の実施が進む」
協会の要望などを受けて2010年度末、国土交通省は日本籍船に乗り組む外国人船員に対する承認試験などの合理化を図る方針を固め、その一環として、今年度から「機関承認制度」、新たな「船長による実務能力確認スキーム」が導入されることとなった。機関承認制度は、一定基準を満たした海外の船員教育機関の卒業生に対し、承認試験などを要せずに日本籍船の船舶職員として乗り組むことを認める仕組みで、2011年はフィリピンの船員教育機関3校が対象校として国交省から認定された。新たな「船長による実務能力確認スキーム」は、一定要件を満たした船社の船長による能力確認期間を3か月から1か月に短縮するとともに、対象国を従来のフィリピン、インドネシアだけでなく、インドと東欧諸国にも拡大するもので、これまでに3船社が新スキーム実施要件を満し、国土交通省から認定された。

 

「国際会計基準(IFRS)適用に関する海運業界としての提言をとりまとめる」
協会は、連結財務諸表へのIFRSの適用は任意適用が望ましいことなどを内容とする「IFRS適用に関する提言」をとりまとめ、3月以降、金融庁など関係方面に提出した。IFRS導入を巡り、米国証券取引委員会(SEC)での慎重姿勢、連合の「2012年度連合の重点政策」でIFRS強制適用見送り方針が示されたのに加え、多くの産業界からの意見などが相次いだ。こうした状況を受け、6月の金融担当大臣発表では、仮に強制適用を判断した場合でもその決定から5-7年程度の十分な準備期間の設定を行うこととされ、早ければ2015年3月期の導入が想定されていた連結財務諸表への強制適用は先送りされることとなった。

 

「IMO次期事務局長に関水康司氏が選出される」
2011年6月に開催された国際海事機関(IMO)理事会で、日本政府の全面的バックアップを受けて立候補した関水康司氏(現IMO海上安全部長)が次期IMO事務局長に選出された。協会は、事務局長選にあたりIMO理事国の船主協会に対し、関水氏への投票支持を呼びかけるなど協力した。その後11月に開催されたIMO総会で任命が正式に承認されたことを受け、同氏は2012年1月1日からIMO事務局長に就任することとなった。日本人がIMO事務局長に就任するのは初めて。