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第5回「運びと地位向上全国キャラバン2025 in 金沢」レポート

金沢で地場企業が語った“トラック新法”の現実

2025年8月22日 (金)

ロジスティクスLOGISTICS TODAYは21日、石川県金沢市のしいのき迎賓館でシリーズ企画「運びと地位向上全国キャラバン2025」(運びとキャラバン)を開催した。同キャラバンは4月8日の大阪を皮切りに各地で実施しており、金沢は第5回となる。2024年問題以降の制度転換を現場から考える場として、講演とトークセッションを柱に据えている。

前回の福岡ではトラック新法の5本柱をテーマに議論が行われたが、今回は「事業許可の更新制」と「多重下請け是正」に焦点を当て、中小運送事業者が現場の視点から制度の本質を議論した。登壇者は野々市運輸機工(石川県金沢市)の吉田章社長、上田運輸(小松市)の上田真社長、日本貨物運送協同組合連合会(日貨協連)の星野治彦専務理事、LOGISTICS TODAYの刈屋大輔編集委員。ファシリテーターはトラボックスの吉岡泰一郎会長とLOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長が務めた。

▲トラック新法の5本柱(クリックで拡大)

冒頭、赤澤編集長は「運賃の値上げに反対する人はいないが、無条件な運賃上昇は業界全体の品質低下を招く」と指摘。「真面目に取り組む事業者が報われる仕組みが必要であり、その一つが多重下請け構造の是正だ」と述べた。これを受け、上田氏は「かつてトラックドライバーは小学校校長並みの給与を得られる職業だったが、現在はそうではない。人材確保のためにも運賃値上げは不可欠」と強調。吉田氏は「運賃が上がれば製品価格も上昇し、ものが売れなくなるのではないか」と懸念を示した。

▲(左から)トラボックス吉岡泰一郎会長、LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長

多重下請けについて、両氏は「仕事の内容と運賃が適正であれば問題ない」としつつ、吉田氏は「中には40%のマージンを取るケースもある」と指摘。赤澤編集長も「可視化によって不当な中抜きを防ぐべき」と述べ、刈屋委員も「仲介者の取り分を公開する制度が必要ではないか」と提案した。

▲LOGISTICS TODAY刈屋大輔編集委員

議論はさらに深まり、前回の福岡でも「下請けは一律に悪ではない」との意見が出ていたが、今回も吉田氏が「スポット便の帰り荷で求荷求車サービスを使うと3次請けになるためNGとされるような制度では、必要な仕事が受けにくくなる」と問題を提起。さらに「運賃が安くなる背景には、安価な案件を引き受ける会社が存在すること自体がある」との見方を示した。上田氏も「特に小規模事業者で情報を十分得られない会社が、水屋経由の安い仕事を請け負う傾向がある」と業界の課題を語った。

この点について、求荷求車システムを提供する星野氏は「新制度では原価を下回る取引を禁じるとされており、その仕組みをシステムに組み込むべき」と説明。その上で「現時点で善悪を断じるのは早く、運用を通じて制度を磨き上げることが重要」と述べた。吉岡会長も「多重下請けで問題が生じた案件については、ユーザーからの指摘を受け随時対応してきた」と、現場での取り組みを紹介した。

▲(左から)野々市運輸機工の吉田章社長、上田運輸の上田真社長、日本貨物運送協同組合連合会(日貨協連)星野治彦専務理事

議論は「事業許可の更新制」にも及び、吉田氏は「制度改革で運送業者は増えたが、行政は実態を把握できていない」と批判。上田氏も「社会保険未加入や車検未実施はデジタルで即時に確認可能であり、早急に導入すべき」と賛意を示した。ただし両氏とも「業界全体の足並みがそろっていない」「小規模事業者には負担が大きい」と懸念を示し、国による主導的な対応を求めた。

赤澤編集長はまとめとして「多重下請けを一律に否定するのではなく、問題のある部分を改善することが必要。関係者が不当に搾取されない健全な仕組みづくりが求められる。そのためにも地方や団体から中央に積極的に意見を届けることが不可欠」と強調した。

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LOGISTICS TODAY編集部
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