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2020 年頭初感

商船三井、池田社長「One MOL」で前進していきたい

2020年1月6日 (月)

ロジスティクス商船三井の池田潤一郎社長は6日、グループの全役職員に向けて年頭所感を述べた。池田社長は昨年の出来事を振り返りつつ「One MOL」としてのグループの成長について語った。

(以下、要旨)

▲商船三井池田社長

昨年は平成から令和へ、時代の転換とともにさまざまな出来事があった。マーケットを見渡せば、ドライ・タンカーともに波はあったものの、総じて堅調な仕上がりといえる。LNG船事業ではヤマル砕氷船をはじめ各プロジェクトが本格稼働し、安定利益の積み増しに貢献している。コンテナ船事業は昨年度の損益低迷から立ち直り、次につながるパフォーマンスを発揮している。世界経済の成長鈍化の懸念はあるものの、当社の営業セグメントすべてにおいて黒字を達成し、期初予想通りの収益を確保できる見込みとなった。

また、昨年海運業界として大きなトピックスであったのはSOx(硫黄酸化物)規制への対応である。当社はSOx2020年規制対応委員会を中心に、全社一丸となった取り組みで入念な準備を行い、コスト負担についても大部分の顧客の理解は得られている。とはいえ燃料切り替え当初のトラブルはつきものであり、安定軌道に乗るまでは引き続き細心の注意を払って対応していきたい。

また、昨年を振り返ると、商船三井グループの将来を占ううえで注目すべき案件が多数あった。

1つ目はLNG(液化天然ガス)関連ビジネスの進展。LNG燃料タグボート「いしん」竣工に始まり、シンガポールでのLNG燃料供給船ビジネスへの参画、KARMOLブランドで取り組むLNG発電船とFSRU(浮体式貯蔵再ガス化設備)事業の展開、そして日本初となるLNG燃料フェリーの建造決定があり、LNG燃料は環境課題の一つであるGHG(温室効果ガス)排出削減に対し、商船三井グループが示す現実的な解の一つであり、ことしも推進していく。

2つ目には、MOLケミカルタンカーによる総合ケミカル物流事業への取り組みである。大西洋ビジネスの強化としてノルディックタンカー社を傘下に加え、タンクコンテナへの領域拡大を狙ったデンハートフ社への資本参加を果たしたことで、従来の海上輸送だけでなく、ケミカル輸送を面で攻める戦略を着実に実行する。

3つ目として、「One MOL」の成果を挙げたい。営業部門、管理部門、グループ会社がひとつとなって、伸長するデジタル技術を用いたFOCUS(フォーカス)プロジェクトの推進、環境配慮の新型船としてのウインドチャレンジャー・e5プロジェクト、働き方改革の具体策としてのパイロットオフィス開設、サステナビリティボンドによる資金調達、といった取り組みを行ったほか、シップ・オブ・ザ・イヤー2018における自動車船とフェリーのダブルで受賞した。

2020年度の経営計画については現在議論を重ねている最中だが、ことしは「成長」というテーマについて考えてみたい。今の当社にとっての成長とは何か、その目的と機会の面から考えることにする。

企業の成長という場合、一般的にはその企業の規模が大きくなることをイメージするが、質的な成長、そして健康的な成長であることが重要だ。ステークホルダーからは収益性の向上はもちろん、社会に与える影響をできるだけポジティブにしていくことが求められる。昨年4月に特定したサステナビリティ課題は当社グループが社会課題の解決にいかに貢献していくかを示したものだ。収益性とともに社会の一員としての私たち商船三井グループがその役割を果たすことが、健康的な成長につながるのではないかと考える。健康的に成長することで、企業の活動領域が広がり、より多くのビジネスチャンスに挑むことが可能となるだろう。

社会や環境の変化は成長のチャンスでもある。社会の変化や顧客ニーズの変化を鋭い感性でしっかりとつかみ、ぜひ新たな領域にチャレンジしてほしい。ドライバルク、タンカー、自動車船など既存の海運ビジネスや営業部門を支える管理部門においても、視点を変え発想を柔軟にすることで、新たな領域、さらなる成長の芽を発見できるだろう。この挑戦は働き方改革にも通じるものであり、臆せず常に挑む集団でありたいと考える。

これらを実現するうえで、カギを握るのは組織の血流ともいえるコミュニケーションであると私は思う。昨年、組織風土の調査を行った。前回2017年度の調査結果に比べて改善傾向ではあるが、まだまだその途上であり課題も多く残っている。お互いの立場・役職の壁を越えて、素直で率直なコミュニケーションをもっと活発にしていきたい。私も率先して働きかけを行うので、各部署においても意識して取り組んでもらいたい。

コミュニケーションを軸として、企業と個人が健康体を保ちながら正の成長スパイラルを実現すれば、「相対的競争力No.1事業の集合体」に近づくはずだ。

安全運航は当社の根幹だ。安全運航の指標である4ゼロの維持にむけ、海上・陸上関係者は日々努力してきたが、遺憾ながら2019年も4ゼロは叶わなかった。当社グループにとって、いつまでも変わらない絶対的な価値であることを改めて確認したい。同様に、成長する局面においては、公平・公正の視点でプロジェクトを進める必要があり、コンプライアンスの順守を忘れてはならない。

世界は目まぐるしいスピードで変化し続ける。私たちは常にその前線に立ち、自らその道を切り開いていかなければならない。収益性を確保し、かつ社会から「選ばれる」サステイナブルな企業であり続けるために、カタチだけはない真の成長への決意を胸に、MOLグループ全体で前進していこうではないか。