ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

積載効率の向上なくして物流課題の解決なし

Logistics2030へ加速、NECが積載率可視化公開へ

2020年2月12日 (水)

話題前回掲載記事(※)では「2030年の世界」として、車両、人員、拠点を含むあらゆる物流リソースが「ロジスティクスプラットフォーム」とつながり、さまざまな業種・企業のサプライチェーンが全体最適化されるというイメージを紹介した。NECが掲げるその世界では、輸送経路上の天候や交通状況、入出荷拠点の位置といった”関連情報”を考慮した上でロジスティクスプラットフォームが空飛ぶクルマに輸送を指示するなど、都市と地方の物流格差を実質的に解消する近未来図も描かれた。

前回掲載記事へのリンク
物流分断・積載率低下、解決へ不可欠なIT活用とは
NECが描く2030年の世界観、ロジプラットフォームで全体最適化
https://www.logi-today.com/365594

他方、足下の日本社会では少子高齢化とEC市場の成長に伴う多頻度小ロット配送の広がりが、物流企業に深刻な人手不足をもたらす。時間帯配達や土日配達の見直しといった物流サービスレベルの低下、運賃の高騰、積載効率の低下といった”物流危機”を招いた。15年度に4割を割り込んだ営業用トラックの積載効率は悪化の一途を辿り、18年度は39.0%を記録するに至る。言い換えると6割以上もの輸送能力が生かされていないにもかかわらず、荷主は「トラックを確保できない」のが実情だ。

積載効率の向上なくしてNECが描く2030年の世界は実現しない。飛躍的に利便性が高まる10年後と、出口の見えない現在の世界のギャップをどう埋めていくのか。

■ AIが情報を把握しながらどう動くべきかを的確に指示

この課題に対して同社が示す答えの一つが「積載率可視化ソリューション」だといえよう。このソリューションはトラックの荷室内を「認識」し、積載できる余地や積載率を算出するもので、走行するトラックの積載率を可視化することで荷室内の空きスペースを活用しやすくする上で重要な役割を果たすことが期待される。

この技術と結びつくことによって、例えばAIが近くを走行するトラックの空きスペースと荷物をマッチングし、ITを通じてドライバーに集荷を指示するなど、積載率向上につながるさまざまな課題の改善に欠かせないソリューションとなる。

この「積載率可視化」の分野は、荷物と車両のマッチングを図る多くの物流スタートアップ企業がここ数年、実現に向けて取り組みをスタートさせている注目領域だが、「現在と2030年の世界」をつなぐ取り組みの一つとして位置づけた点は重要だ。これが将来、全体最適となる輸送手段、入出荷場所を判断し、輸送経路上、車両荷室内、倉庫内の情報を把握しながらどう動くべきかを的確に指示するという、飛躍的に利便性が高まる「Logistics2030」構想へとつながっていく。

実は、同社が物流分野に画像認識技術の適用を開始したのは、OCRやバーコードなどで郵便番号と宛名住所を読み取り、あらかじめ指定された区分け口に郵便物を自動的に仕分ける「郵便区分機」を開発した1960年代に遡る。つまり画像認識技術を物流ソリューションへ適用していくNECの取り組みは、過去60年に及ぶ蓄積から生み出されたものだといえる。

積載率可視化ソリューションのイメージ(NEC)

もちろん重要なのは積載率を算出することではなく、算出した積載率データをどのように活用するかだ。同社が描く10年後の近未来では、積載率データがオープンなプラットフォームに集約されてAIがこれらを分析、積載率の低いトラックと荷物をマッチングすることで、物流リソースを有効に活用することも「活用法」の一つとして挙がっている。

60年の積み重ねを基盤として、同社はすでに「食品・消費財」「電機・電子部品」といった業界に対して、AIによるデータ活用の取り組みを開始している。

ロジスティクスプラットフォームを通じて物流リソースの情報がつながる(NEC)

また人手不足に対するNECの解決策は、積載率の可視化から発展させるソリューション群にとどまらず、輸送手段の進化を促すというアプローチも進行している。

離れた場所の車両を遠隔操作

「遠隔見守りソリューション」と名付けられたこのサービスは、物流企業の運行管理レベルを飛躍的に高める可能性を包含したもので、例えばドライバーが搭乗しない自動運転時の車両の遠隔監視とともに、緊急時には遠く離れた場所にいる運行管理者に対してNEC独自の通信技術によるリアルタイムな映像配信を実現。車両を遠隔操作によって、安全に運転できるようになるほか、ドライバーの過労防止にも役立つ手段となり、同社が描く2030年の世界へ向かっていくものとなるだろう。

2月19日に東京ビッグサイトで開幕する「国際物流総合展2020 INNOVATION EXPO」では、積載率可視化や遠隔見守りのほかにも10年後の世界観を見据えたソリューション群が展示されるほか、セミナーB会場(西2ホール)では19日15時から「ロジスティクスプラットフォーム」をテーマとしたプレゼンテーションセミナー(先着順)が予定されている。中長期のロジスティクス戦略を荷主企業、物流企業が立案する上で重要な情報に触れることができる、貴重な機会になりそうだ。