荷主トイレットペーパーの供給・配送状況について、経済産業省の発表で複数回にわたり大量の商品陳列が紹介されているイオンに取材したところ、グループの物流を担う「イオングローバルSCM」(千葉市美浜区)が、毎日50台規模の店舗直送トラックを手配していることが分かった。
イオングローバルSCMは、トイレットペーパーの店頭在庫切れが騒動に発展した先週4日から、卸や物流拠点を経由せずに、生産拠点倉庫から大型店舗に直送するトラックを直接手配。4日から10日までに、10トントラックを中心とする延べ232台のイオン店舗専用運行でこの供給難に対応している。
取材に応じた担当者は、「現在では毎日50台のトラックで直接配送を行っている。当社グループは、過去の地震や台風から、緊急性の高い事象については即時対応できる体制が整っており、今回のケースでは生産拠点倉庫に直接車両を手配することにした。しかし、昨今のドライバー不足もあって、そう簡単にはいかなかった」と話した。
トイレットペーパーなどの家庭紙は、かさばる上に単価も低いため、輸送で利益をあげることは難しく、さらに手積み手降ろしが基本となっていることから、トラックドライバーへの負荷も高い。こうした理由からメーカーの物流子会社は、家庭紙配送専門の物流会社に委託していることが多く、委託先では商品が隙間なく収まる低床トラックで配送を行っている。
こうした背景からイオングローバルSCMは、長距離対応かつ低床のトラックを即時・多量に手配することが難しく「そう簡単にはいかなかった」と先週を振り返る。では、急遽手配されたドライバーの負担はどうか。
担当者は「生産拠点倉庫ではメーカー側のスタッフが積み込みを手伝ってくれており、フォークリフトで荷台に積み込んでいる。また、店舗側では到着時間に合わせて人員を配置して荷降ろしを行っているため、ドライバーへの負担は少ないと思う」と説明。過去の教訓から緊急時の対応をとっている同社にぬかりはなかった。
現在は、「スコッティー」や「クリネックス」のブランドで知られる日本製紙「富士工場」を中心に、全国の生産拠点倉庫から全国の大型店舗に専用配送を行っており、中小店舗についても物流センターを経由して順次配送を行っているという。
流通・物流関係者の努力により騒動は沈静化に向かっているが、消費者にはマスクと異なる”店頭在庫切れ”の理由を認識してもらい、改めて冷静な対応を期待したい。