ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

<企画取材LT編集部> シーイーシー「LogiPull」でドライバー労働時間と拠点効率改善

荷主企業に迫る物流崩壊リスク、回避へ対応急務

2020年7月14日 (火)

話題新型コロナウイルスの感染拡大によって、物流機能の重要性が増している。緊急事態宣言が発令される直前の4月上旬、ある製紙メーカーは小売店に物資を運ぶ車両を確保できず、一時は自衛隊車両の投入が検討される局面もあったという。店舗からマスクやトイレットペーパーが消えた騒動や、外出を自粛しなければならない状況下で需要が急増したECを通じ、社会は「モノを運ぶ」という機能を維持することが、いかに難しく、トラックドライバーなど物流従事者がいかに大切な存在かを知った。

ウイルスとの戦いにまだ終りが見えない最中だが、実は荷主企業には、さらに腹を括って物流と向き合わなければ生き残りが難しくなる「期限」が近づいている。

■選ばれない荷主

トラックドライバーに対する改正労働基準法の適用が、2024年4月からスタートする。これにより、トラックドライバーは年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されることになる。将来的には720時間への短縮も検討されており、違反すれば「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」と社名公表という厳しい罰則規定も設けられる。

運送会社は「ドライバーの長時間労働の改善に協力しない荷主とは、怖くて付き合えなくなる」ということだ。現在でさえも車両の確保がままならない荷主企業は、ただちにトラックの運行効率の改善を自社の経営課題と認識し、運送会社による働き方改革に積極的に協力すべきだろう。さもなければ、そのような荷主に待つのは「物流会社に選ばれない荷主」の称号と、物流の崩壊である。

17年に改正された標準貨物自動車運送事業約款では待機時間料が明記され、付帯業務の記録が義務化、20年4月には標準運賃も告示された。他方ではEC需要が急激に高まっている。24年4月に迫った改正労働基準法の適用開始に向け、トラック運賃がさらに上昇していくのは避けられないと考えたほうがいい。

では、どうすればいいのか。

■「24年問題」への対応、自社に適した取り組みを

西日本事業部の柿沼譲事業部長(右奥)、同事業部第二サービス部の今村純グループマネージャー(左奥)、同部の今井勝行氏(右手前)、デジタルインダストリービジネスグループD3営業部の西山充氏(左手前)

トラックの運行効率改善ツールや物流現場の問題点・改善効果を見える化する物流シミュレーションツールなどで実績のあるシーイーシー(CEC)西日本サービス事業部の柿沼譲事業部長は「トラックの運行コストを引き下げ、ドライバーの労働環境を改善していく取り組みは、荷主が積極的に協力していかなければならない。そのために、まずは現状を把握することが重要」と指摘する。

「24年4月(の改正労働基準法適用開始)に向けて、多くの荷主企業が慌てる事態になるかもしれない。現状を正しく把握し、どこをどう変えればいいのか、システムでお手伝いしていくというのが当社のスタンス」(同事業部第二サービス部・今村純氏)

荷主の立場からトラックの運行効率改善を支援し、物流全体の効率を高めていくために同社が打ち出した「LogiPull」(ロジプル)は、バース予約管理、車両入退管理、車両誘導、バース実績管理、受付管理――の5つの機能を柔軟に組み合わせて導入できる物流ソリューションだ。

▼ LogiPullが持つ5つの主要機能(シーイーシー提供)

同事業部第二サービス部の今井勝行氏は「倉庫のトラックバースに事前予約制を導入して待機時間をなくす機能と、倉庫に入ってからの車両の動きを制御する機能を連動させることがポイントで、バース予約機能だけ、あるいは倉庫の敷地に入った車両を効率よく制御するだけでは不十分。導入効果の最大化を図るには、自社の実情に適した組み合わせとカスタマイズが不可欠」だと強調。同社はこうした考えに基づき、必要な機能を選択してコストを抑えながら倉庫内外の車両を整流化するツールとして、LogiPullの開発に至ったのだという。

■山善、LogiPullの導入で待機時間大幅に短縮

LogiPullを活用することで、主力物流拠点の機能改善に成果を上げる企業も出てきた。例えば、生産財や消費財を扱う専門商社「山善」の物流子会社、ヤマゼンロジスティクス(大阪市西区)最大の物流拠点である「ロジス関東」では19年9月、すべての仕入先メーカーに対してLogiPullを展開し、車両の待機時間を大幅に短縮することに成功した。

ヤマゼンロジスティクスのLogiPull導入イメージ(シーイーシー提供)

ほかにも「他社のバース予約システムを使ってみたものの、入力項目が足りない」「運行管理システム(TMS)と連携させたい」といった、企業ごとに異なる課題に対応できるのが、同社の強みだろう。「企業の物流現場が日々の業務を回しながら、どこにどんな機器を配置し、どんな仕様を採用すれば上手く業務が回るかを検証するのは困難なケースが多い。これらを含め、全体のシステム構成を提案し、機器の設置工事まで当社でサポートしている」(デジタルインダストリービジネスグループD3営業部・西山充氏)。

バース予約システムは数多く開発されているが、一定規模以上の物流拠点に適した仕組みを考えた場合、LogiPullの優位性はより鮮明になる。

同社では、LogiPullに続く物流改善ツールとして、倉庫内で熟練者などに属人化している業務を「誰にでもできる業務」に変えていき、倉庫内作業の効率化につなげる仕組みを準備しているという。改正労働基準法の適用が始まる「24年問題」で物流車両の確保がさらに困難になる前に、荷主として物流企業やトラックドライバーの課題に寄り添いつつ「選ばれる荷主」を目指すために、残された時間は長くない。

関連情報
ヤマゼンロジスティクスの導入事例詳細

LogiPullの詳細