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ユニセフ、IATAが各国政府に準備急ぐよう警鐘

コロナ対策ワクチン輸送、深刻な輸送力不足のおそれ

2020年9月14日 (月)

出所:ユニセフ

ロジスティクス日本ユニセフ協会は11日、ユニセフが「新型コロナウイルスの莫大なワクチン輸送を実行するための準備を各国政府が急がなければ、深刻な輸送力不足に陥るおそれがある」と警鐘を鳴らしていることを明らかにした。

国際航空運送協会(IATA)が9日、新型コロナウイルス感染症のワクチンが承認され、配布可能となった際にすべての準備が整っているよう、各国政府に業界関係者と協力して慎重な準備を始めるよう求めたのを受けたもの。IATAは、航空輸送におけるワクチンの輸送能力が深刻に制約されるおそれがあるとの見通しを示している。

旅客輸送の深刻な落ち込みに伴い、IATAは航空会社が空路を縮小し、多くの航空機を遠隔地の長期保管庫に入れていると報告。これにより世界の運航路線網は新型コロナウイルスの流行以前の2万4000路線から大幅に縮小し、ユニセフ(国連児童基金)、世界保健機関(WHO)などの国際機関は、これらの空路縮小によって「計画された予防接種プログラムを維持するのに大きな困難が伴っている」と、輸送力の低下を懸念している。

出所:ユニセフ

日本ユニセフ協会は、「現地でワクチンの製造能力がある先進国では、陸上輸送が配布の助けになるだろう」としながらも「航空貨物を大規模に利用しなければ、ワクチンを世界規模で配送することはできないだろう」との見解を表明。これまでの新型コロナウイルスへの対応によって世界の航空輸送能力が低下していることを考慮しなければならない、と警告した。

IATAによる警鐘を引用した上で、「世界の人口78億人に1回の投与量を提供するためには、8000機の747型貨物機が満杯になるほどの輸送力が必要」だとして、施設面、セキュリティの確保、越境プロセスといった準備をすすめるよう求めた。

施設面では、温度管理された施設や機器を最大限利用できるようにするために、既存インフラを転用し、新規の仮設建設を最小限に抑えることが必要だと指摘。このほかにも時間や温度に敏感なワクチンを扱うためのスタッフへの訓練、ワクチンの完全性を維持するための徹底したモニタリング能力を備えるよう要請。

また、セキュリティ面では「輸送物が異物の混入や盗難から守られるよう手配しなければならない」として、既存の「貨物輸送の安全性を確保するための手段」を拡張できるようにするための「早期の計画」が必要、とした。

さらに、越境プロセスでも規制当局の承認、適切なセキュリティ対策、適切な取り扱い、税関の通過を迅速に実施するために「保健当局や税関当局と効果的に連携すること」が欠かせないと主張。予防対策の一環として、多くの政府が手続きに時間を要する対策を実施していることを考慮すると「特に課題となり得る」との見方を示した。

出所:ユニセフ

具体的には、ワクチン輸送業務のための上空飛行、着陸許可のための迅速な手続きを導入すること、貨物のサプライチェーンを確実に維持するため、隔離要件から客室乗務員を除外すること、ワクチン輸送に制限がある場合の一時的な通行権を支援すること、最も柔軟なグローバルネットワークの運用を可能にするため、ワクチンを輸送する便の運航時間の制限を撤廃すること、遅延による温度上昇を防ぐため、重要な貨物の到着を優先すること、ワクチンの移動を容易にするための関税緩和を検討すること――などの必要な対策を講じるよう求めた。

ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は「全世界が安全なCOVIDワクチンを切望している。すべての国が安全で、迅速・公平に初回投与量を受け取れるようにすることは、私たち全員の責務だ。COVAXファシリティに代わってユニセフは、これまでで最大・最速のワクチン調達と供給を主導することになるだろう。航空会社や国際的な輸送会社の役割は、この取り組みに不可欠だ」と話している。

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