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佐川急便、離島・山間部のドローン輸送網構築へ

2020年11月4日 (水)

ロジスティクス佐川急便は8日、島根県美郷町、香川県土庄町、福井県越前町と共同で、離島・山間部でドローン輸送網を構築する実証実験を2020年度中に開始すると発表した。

実験では、佐川急便の営業所からドローン輸送の始発点となる配送拠点までトラックで荷物を輸送し、ドローンが公共施設などの中継地点でバッテリーを交換しながら終着点まで荷物を輸送する。ドローンの機材提供と運航管理をイームズロボティクス(福島市)が行い、佐川急便東京本社が遠隔地からのドローンの目視外操縦を行う。将来的には、始発点から複数の終着点に配送する「空の物流ネットワーク」の構築を目指すという。

▲「空の物流ネットワーク構想」のイメージ(出所:佐川急便)

計画では、最初に島根県美郷町で複数拠点間輸送を検証し、その後、小豆島の土庄町(香川県)で離島間海上輸送を実施。福井県越前町では、従来の2.4ギガヘルツ帯より混線や電波干渉が少ないとされる169メガヘルツ帯の電波を活用したドローンの運航に取り組み、災害などで携帯電話のLTE通信回線が途絶した場合を想定した実験を行う。

▲実験で使用するドローンのイメージ

複数拠点を経由するドローン輸送網の構築に着手した背景について同社は、「特に離島・山間部などでは、船舶輸送あるいは山越えが必要となる。集落間の移動距離が長いことなど、地理的特性もあり、今後このような地域において、現状の輸送手段だけではサービス品質の維持が困難となることが想定される」と説明。

新型コロナウイルスの影響で宅配需要が高まる一方、物流業界では人手不足の深刻化が懸念されており、全国を網羅する宅配輸送網を維持するには、「新たな手段の検討」が必要であることを強調した。

また、同社は災害対策基本法に基づく「指定公共機関」に指定されており、ことし4月のように政府が「緊急事態宣言」を発出したり、大規模災害が発生したりした際に、国の指示を受けて救援物資などを輸送する責務を負う。同社では、ドローンを救援物資輸送の「有力な手段のひとつ」と位置づけているほか、CO2排出量を削減する手段としても注目しているという。

離島・山間部以外の「孤立エリア」にも目配りを

自律モビリティの開発は、今や年次ではなく月次単位で目覚しい発展を続けている。離島や災害時には陸の孤島と化す山間部や半島部などへの救援物資供給は、ドローンをはじめとして、無人ヘリコプターなどによる実用化が待たれており、官民一体となっての試行が盛んだ。

これに関連した別視点として、離島・山間部ではないが、激しい過疎化と消費圏からの隔絶によって「孤立エリア」と呼ぶにふさわしい地域向けのデリバリールートも確保する必要がある。

決してへき地というわけでなく、常日頃は穏やかな気候に恵まれ、公の道路が敷設されているにもかかわらず、人知れず孤立状態にある、もしくは間もなくしてそうなることは明らかな地域のカウントを漏らすことないように、と言い添えておきたい。
(企画編集委員・永田利紀)

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