ロジスティクスヤマト運輸は4日、LINEの音声応対AIサービス「LINE AiCall(AIコール)」を導入し、法人顧客の集荷依頼電話にAIオペレーターが応対するサービスを11月9日から開始すると発表した。まず9日に山梨県から導入し、12日に17府県に拡大、2021年1月20日に全国展開を目指す。
電話の集荷依頼は緊急性が高く、迅速な対応が求められる一方、コールセンターでは新型コロナウイルスの影響で人員縮小を余儀なくされているため、依頼が集中する時間に電話がつながりにくい状況が発生し、十分な対応ができない課題があった。
同社では、AIオペレーターが有人対応を補完することで、電話対応の待ち時間を大幅に削減し、顧客のストレス軽減と円滑なコミュニケーション環境の構築につなげる。
一部荷主を対象に実施したテスト運用時には、アンケートに応じた利用者の80%が「満足」または「非常に満足」と回答しており、「ドライバーさんに集荷依頼の電話をかけるとき、配達中なので申し訳なく思っていました。AIなので遠慮せずに電話ができて、良い取り組みだと思います」などの好意的な意見が寄せられたという。
■11月9日午後導入
山梨県
■11月12日導入
千葉県、神奈川県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
■2021年1月20日導入
全国エリア
個人向けサービスへの展開に期待
自動車業界でのトヨタがそうであるように、個配業界でのヤマトの先進性は依然として群を抜いている。川上での構造的改変や新しい仕組みによる自社インフラの構築と併せ、川下に位置する顧客フロントをより細やかに多様にする試みにも余念がない。二番手以下も必死に機構改革やサービス提供の充実をはかってはいるが、それ以上のスピードと手許足許感にあふれるユーザーヘルプを発信していることには感心と賛辞をおくりたい。
今回の「AIオペレータによる法人顧客向け集荷依頼対応」は、同システムを用いた各種個人向けのサービスへの布石だろうし、そこが攻めるべき本丸だというのは説明するまでもない。スマートフォンの普及によって高齢者層のLINE使用率も急増しており、音声応対AIサービスの導入は、使用者側の便宜にも大きく貢献するはずだ。
デジタルアシスタントの利便性は、もはや年代を選ぶことない周知の事実となった。さらなるサービスの拡張と、同業他社の別角度からの追従に期待したい。
(企画編集委員・永田利紀)