ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

赤羽国交相の2021年年頭所感(物流関連)

2021年1月5日 (火)

行政・団体赤羽一嘉国土交通大臣による年頭所感のうち、物流関連は次の通り。

(以下、物流関連の抜粋)

2021年という新年を迎え、謹んで新春の御挨拶を申し上げます。

今般の新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に改めてお悔やみを申し上げますとともに、直接的、間接的に被害を受けられたすべての皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

また、新型コロナウイルス禍の中、国民の命と暮らしを守り、わが国の経済活動を支えるために、献身的に尊い使命と責任を果たしていただいている公共交通や物流、建設工事などの分野に携わるすべてのエッセンシャルワーカーの皆さまに、心から敬意と感謝を申し上げます。

感染拡大防止対策の徹底とわが国の社会経済活動の両立を図るとともに、新型コロナウイルス禍を契機とする社会経済構造や生活様式の変化を踏まえ、国土交通省としても必要な施策を講じてしっかりと取り組んでまいります。

■危機に瀕する公共交通の維持・確保など

タクシーについては、ウィズ・コロナ時代の新しいビジネスモデルとしてタクシーが有償で食料・飲料を運送できるように措置しており、引き続き、地域の交通機関の輸送力や経営状況、貨物自動車運送事業の供給力などの状況も勘案しながら、適切な展開を図ってまいります。

自動車の自動運転については、道の駅「かみこあに」に続いて、2020年12月に福井県永平寺町においても、自動運転サービスの社会実装を開始したところでありますが、引き続き、ラストマイル自動運転や中山間地域における道の駅などを拠点とした自動運転サービスなどの実証実験を進め、準備が整った箇所から実装するなど、自動運転サービスの普及促進に向けた取組を推進してまいります。

また、ドローンについて2022年度をめどに有人地帯での目視外飛行を可能とするための制度整備を進めるほか、いわゆる空飛ぶクルマについては、23年度の事業開始に向けて、機体や運航の安全基準や操縦者の技能証明基準などの制度整備に取り組んでまいります。

■デジタル革命や規制緩和の推進

新型コロナウイルス禍を契機とする「新しい生活様式」への対応や、リスクに強い社会経済構造の実現が喫緊の課題となっております。このため、国土交通省においても、デジタル革命や規制緩和の取組を推進し、日本の活力につなげていけるよう全力で取り組んでまいります。

デジタル化については、インフラ・物流分野などにおけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)や関連する取組を推進してまいります。

物流分野においては、担い手不足の深刻化、物流生産性の向上という喫緊の課題に加えて、「新しい生活様式」に対応するための接触機会の最小化などにも取り組むことが求められています。このため、これまで取り組んできた、物流・商流データ基盤の構築やトラック隊列走行などの最新技術を活用した物流の効率化に加え、物流施設におけるデジタル化・自動化、ドローンの活用によるラストワンマイルの配送の機械化、港湾における「非接触型」のデジタル物流システムの構築による非接触かつ効率的な貨物搬出入の実現、緊急支援物資輸送プラットフォームの構築による大規模災害時における物資輸送のデジタル化を推進など、DX(デジタル・トランスフォーメーション)をより一層推進してまいります。

港湾分野においては、良好な労働環境と世界最高水準の生産性の確保、国際競争力のさらなる向上のため、AIなどを活用したターミナルオペレーションの最適化に関する実証や、港湾情報の電子化、データ連携を核としたサイバーポートの実現に向けた取組を進めてまいります。

海事分野においては、船舶産業におけるサプライチェーンの最適化や、船舶の設計から建造、運航に至る船舶のライフサイクルのすべてのフェーズにおけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の加速化、自動運航船などの次世代技術のトップランナーに対する技術開発支援、海洋開発における技術力の強化に向けた支援(j-Ocean)などの施策により、海事産業の国際競争力強化を図るとともに、国際的な安全・環境ルールの策定や造船市場における公正な競争条件の環境整備を推進してまいります。

また、物流分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進や、インフラ点検、医療などの幅広い分野での新たなサービスの拡大のための取り組みとして、無人航空機(ドローン)について、2022年度をめどに有人地帯での目視外飛行を可能にし、荷物配送などのサービスの安心安全な運用の実現を図ることができるよう、機体の安全性を認証する制度や、操縦者の技能を証明する操縦ライセンス制度の整備を図り、規制改革を進めてまいります。

■海事産業の再構築プラン

造船、海運、担い手である船員のそれぞれの分野は、現在、様々な課題に直面しています。

造船業においては、コロナ禍の影響もあり、新規受注が低迷している中、今後も地域の経済と雇用に貢献し、船舶を安定的に供給できる体制を確保するために、生産性向上や事業再編を通じた事業基盤の強化が急務であり、併せて、海運業に対して新造船発注を喚起する環境を整備することが必要です。

海運業においては、船員は高齢化が顕著で、若手船員の定着が課題であり、船員の働き方改革を進め、人材を持続的に確保できる環境整備が必要であり、併せて、内航海運業の経営力の向上を図るため、取引環境の改善と生産性向上を促すことが必要です。

これら課題に対して、予算・税制・財政投融資による措置に加え、必要な制度の創設や改正を行うことで、わが国海事産業全体の基盤強化を一体的に講じてまいります。

■東日本大震災からの復興・創生

東日本大震災からの復興の加速は、政府の最優先課題の一つです。引き続き、現場主義を徹底し、被災者の方々のお気持ちに寄り添いながら、震災からの復興、そして福島の復興・再生に取り組んでまいります。

復興道路・復興支援道路については、国が主体となって整備を進めている550キロのうち、2020年内に466キロ、全体の85%が開通しました。さらに今年度内には71キロが開通し、総延長が537キロ、全体の98%が開通する予定です。残る三陸沿岸道路の普代~野田間の13キロについても、21年内に開通する予定であり、全線開通に向け、引き続き着実に事業を進めてまいります。さらに、常磐自動車道については、復興・創生期間内での一部4車線化の概成を目指すとともに、小高スマートICの整備を推進してまいります。

港湾関係では、東日本地域の電力供給を支える拠点として、昨年、小名浜港の国際物流ターミナルが供用しました。

■防災・減災、国土強靱化

近年の気候変動の影響により、激甚化・頻発化する気象災害や切迫する巨大地震などの自然災害に対応するための防災・減災、国土強靱化、インフラ老朽化対策、サプライチェーンの強化などの加速化・深化は、わが国の喫緊の課題です。

私は、大臣に就任した直後から、台風・地震などの被災地に30回以上足を運び、改めて、事前防災対策が重要であると痛感いたしました。また、全国の首長の皆さまからは、異口同音に、今年度で終了する「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」後も、防災・減災、国土強靱化の取り組みをさらに充実させるとともに、中長期的視点に立って計画的に実施できる必要・十分な予算の継続を強く求められてきたところです。

こうした観点から、国土交通省としても、2020年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」により中長期的な視点に立った計画的な取り組みとして、国民の安全・安心をより一層確保するための必要かつ十分な対策をしっかりと進めてまいります。本対策において対策を加速化・深化させるために25年度までの5年間で追加的に必要となる事業規模は、政府全体でおおむね15兆円程度を目途としており、国土交通省では、おおむね9.4兆円程度をめどとして、重点的かつ集中的に53の対策を講ずることとしております。

具体的には、「激甚化する風水害や切迫する大規模地震などへの対策」として、あらゆる関係者との連携のもと、ハード・ソフト一体となった事前防災対策に取り組む流域治水対策や高規格道路のミッシングリンク解消と4車線化、高規格道路と直轄国道とのダブルネットワーク化などによる道路ネットワークの機能強化対策など26対策、「予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策」として、緊急または早期に措置すべき社会資本に対する集中的な修繕などの対策など12対策、「国土強靱化に関する施策をより効率的に進めるためのデジタル化などの推進」として、線状降水帯の予測精度向上などの防災気象情報の高度化対策など15対策の計53対策に重点的かつ集中的に取り組んでまいります。

こうした取り組みのほか、交通運輸事業者による「運輸防災マネジメント」や所有者不明土地対策などを含め、「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」に基づく施策を着実に推進するとともに、さらなる充実を図りつつ、災害から国民の皆様の命と暮らしを守るための対策を全力で進めてまいります。

■重点的・戦略的な社会資本整備

社会資本整備については、コロナ禍により落ち込んだ経済を早期回復させ、持続可能な経済成長を確実なものとするため、ストック効果の高い事業を重点的・戦略的に進めることが必要です。

高速道路については、財政投融資を活用して、安全性・信頼性などの向上のための暫定2車線区間における4車線化を行うこととしています。

また、物流上重要な道路輸送網を「重要物流道路」として指定し、平常時・災害時を問わない安全かつ円滑な物流などを確保するための機能強化や重点支援・投資を行ってまいります。加えて、特車許可の審査の迅速化やデジタル化の推進による新たな制度の施行に向けた準備を進めるとともに、ダブル連結トラックの普及促進、トラック隊列走行の実現を見据え、高速道路インフラの活用について検討してまいります。

北海道新幹線青函共用走行区間については、現行時速160キロで走行しているところ、2020年12月31日から21年1月4日までの一部時間帯において、新幹線と貨物列車がすれ違わない時間帯を設定する時間帯区分方式により、営業運転で初めて青函トンネル内を時速210キロで高速走行する予定です。これにより、東京・新函館北斗間の現行最速時間が約3分短縮され、3時間55分になります。

わが国への国際基幹航路の寄港回数を維持・増加し、企業の立地環境などを改善する観点から、国際コンテナ戦略港湾において、「集貨」「創貨」「競争力強化」の3本柱からなる国際コンテナ戦略港湾政策を引き続き推進してまいります。また、昨年、東日本地域の電力供給を支える小名浜港の国際物流ターミナルが供用しました。引き続き、国際バルク戦略港湾を拠点としたバルク貨物輸送の効率化に取り組んで参ります。

加えて、地域の基幹産業を支える港湾の整備や、災害に強いフェリー・ROROネットワークの構築などを通じ、多核連携型の地域づくりを目指します。また、農林水産省と共同で、産地と港湾が連携した農林水産物・食品の輸出促進を目指します。

■現場を支える人材の確保・育成などに向けた働き方改革

社会全体の生産性向上に加え、産業の中長期的な担い手の確保・育成に向けて働き方改革を進めることも重要です。

自動車運送事業では、2018年5月に策定された政府行動計画を踏まえ、労働生産性の向上、多様な人材の確保・育成、取引環境の適正化などの取組を引き続き推進するとともに、物流機能を安定的・持続的に確保するため、荷主企業や利用者などの理解と協力を得つつ、関係省庁と連携しながら「ホワイト物流」推進運動を進めることにより、働きやすい労働環境の実現などへの協力を呼びかけてまいります。また、18年12月に成立した改正貨物自動車運送事業法に基づき、トラックドライバーの働き方改革に向けて、荷主への働きかけなどを着実に実施してまいります。さらに、同法により昨年4月に告示した標準的な運賃のさらなる普及・浸透を図り、取引環境の適正化などを推進してまいります。

■次期総合物流政策大綱の策定について

物流分野においては、労働力不足や新型コロナウイルス感染症の流行などを背景として、さらなる労働生産性の向上やポストコロナ時代に対応した非接触・非対面型物流への転換が求められているところです。このような中、国土交通省においては、2021年度からを計画期間とする新たな総合物流施策大綱の策定に向けた議論を、関係省庁や荷主、物流事業者などとも連携して進め、20年12月に有識者検討会から提言をいただきました。

提言では、(1)AI、IoT、ロボットなどの新技術を活用した機械化・省人化の推進や物流標準化、サプライチェーン全体の最適化に資するデータ基盤の整備などによる「簡素で滑らかな物流」の実現(2)トラックドライバーの時間外労働の上限規制を順守するために必要な労働環境の整備や働き方改革、共同物流のさらなる展開をはじめとする労働生産性の改善に向けた革新的な取り組みなどの推進による「担い手にやさしい物流」の実現(3)感染症や大規模災害など有事においても物流が機能するためのインフラ整備や農林水産物・食品の輸出促進に対応した物流基盤の強化、国際物流のシームレス化や物流事業者の海外展開支援、カーボンニュートラルの実現に向けた施策の推進などによる「強くてしなやかな物流」の実現――という3つの方向性が示されました。

国土交通省としては、この提言を踏まえて本年春ごろには新たな大綱を策定し、関係省庁や民間事業者などと連携しながら必要な施策を的確に推進してまいります。

■2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みなどのグリーン社会の実現

「2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」に向けて、わが国全体で地球温暖化対策に戦略的に取り組む必要があります。国土交通省においては、電気自動車などの次世代自動車の普及、公共交通の利用促進や物流の効率化、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及促進などの住宅・建築物の省エネ化など、関係省庁と連携しながら、運輸・民生部門における温室効果ガスの排出削減に取り組んでまいります。

また、港湾や下水道などの社会インフラを活用し、洋上風力やバイオマスなどの再生可能エネルギーの利活用を推進するとともに、水素やアンモニアなどの次世代エネルギーに関して、ゼロエミッション船の実現に向けた技術開発支援や国際ルールの整備などの推進、港湾などにおける次世代エネルギーの利活用拡大などにも積極的に取り組んでまいります。

これら地球温暖化の緩和策のみならず、自然災害の頻発化・激甚化などの気候危機に対する気候変動適応策の推進、自然環境が有する多様な機能を活用したグリーンインフラの推進など、グリーン社会の実現に向けた取り組みを進めてまいります。

■さいごに

冒頭でも申し上げましたが、新型コロナウイルス禍は、人々の「働き方」、「住まい方」、そして「生き方」に大きな変化をもたらすと考えております。国土交通省としても、ウィズ・コロナの時代における社会経済構造や生活様式の変化を踏まえ、豊かで暮らしやすい地域づくりに取り組むほか、国土のあり方について長期展望を提示するとともに、関係省庁と連携し2拠点居住やワーケーションを推進するなど、適切な施策を講じてまいります。

本年も「現場主義」を徹底し、諸課題に全力で取り組んでいく所存です。国民の皆様の一層の御理解、御協力をお願いするとともに、本年が皆様方にとりまして希望に満ちた、大いなる発展の年になりますことを心から祈念いたします。