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福山通運と近鉄が共同事業

名阪特急で貨客混載、名古屋・大阪間当日配送可能に

2021年3月29日 (月)

ロジスティクス近畿日本鉄道(近鉄)と福山通運は29日、近鉄が大阪難波・近鉄名古屋間で運転する名阪特急「アーバンライナー」を用い、夏頃をめどに貨客混載事業を実施すると発表した。必要な許認可が整えば7月にも提供を開始したい考えで、まずは小さな空きスペースの活用からはじめ、需要に応じて輸送力を強化する。(赤澤裕介)

これまで大阪市と名古屋市を結ぶ区間の貨物輸送は翌日以降に配送するサービスが主流で、当日中に配送するにはトラックをチャーターする方法が一般的だったが、名阪特急を活用して貨客混載事業を行うことにより、「安価な当日配送」が実現することになる。サイズや重量にもよるが、1個2000円から3000円程度で提供できるようになる見込み。

両社は、名阪間で工業製品・部品、日用品・衣料品などを配送する事業所間のニーズを想定しており、「鉄道を有効利用する運送サービスのため新たな投資を要さず、トラック配送と代替することでCO2排出量の削減につながる。また、道路事情にかかわらない安定した輸送ルートの確保やドライバー不足対策などさまざまな効果が期待できる」として、物流総合効率化法(物効法)に基づく総合効率化計画の認定申請も計画しているという。

(出所:近畿日本鉄道、福山通運)

狙いはチャータートラック便需要の取り込み

近鉄グループホールディングスが福通の株式7.82%を保有する資本関係を背景に、両社が協力して貨客混載事業に乗り出すのは、旅客需要の落ち込みと自動車運送業の担い手不足を既存資源の活用によって同時に解決する——というコストパフォーマンスに優れた取り組みであるからにほかならない。新たな収益確保策であるというだけでなく、CO2排出量の削減という社会的課題の解決にもつながることも、検討を進める原動力に作用した。

貨物を実際に積載するのは、大阪難波駅と近鉄名古屋駅間を運転する名阪特急のうちアーバンライナー「next」(ネクスト)と「plus」(プラス)で、この列車に荷物を積載することで「大阪・名古屋という二つの大都市間を当日配送で結ぶ」という新たな付加価値の提供につなげた点も見逃せない。

福通にとっては、チャータートラック便需要を取り込み新規顧客の開拓や収益確保を狙うとともに「道路事情によらない安定した輸送ルート」を確保できる利点が、近鉄には新たな投資なしに空きスペースを有効活用し、物流事業によって収益が得られるという利点がそれぞれ見込める。

配送サービスの窓口は福通が担当し、提供開始時点では幅1.7メートル、奥行き0.5メートルの小さなスペースを活用。利用者が増えてくれば「物置的に利用しているほかのスペースを充て、需要次第では専用車両を連結する可能性も排除しない」(近鉄)としている。