M&A日立製作所は8日、知能ロボットシステム開発スタートアップのKyoto Robotics(キョウトロボティクス、滋賀県草津市)の株式の96%を取得して子会社化したと発表した。同社は開発したピッキングロボットの活用法が、昨年度に日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「ロジスティクス大賞」を受賞した企業。買収は4月1日付で、株式取得額は非公開としている。
オンラインでの発表会見に出席した日立製作所産業・流通ビジネスユニットの森田和信CEOは、同社のインダストリーセクターでは初めてのスタートアップ買収となることを説明。合わせて、2019年に買収した米国のJRオートメーション社のロボットSI(システムインテグレーション)技術に続き、Kyoto Roboticsのロボティクス技術を獲得することで「物流とFA(ファクトリー・オートメーション)の自動化領域で技術トップをめざす」との考えを示した。
Kyoto Roboticsは2000年に設立した立命館大学発のベンチャー企業で、ロボットの目の役割を果たす3次元ビジョンシステムや、脳に当たる高精度積付アルゴリズムなどのAI技術に強みを持つ。ロボットによる完全自動化が難しいとされるパレタイジング・デパレタイジング作業について、国内でロボット400台以上の納入実績がある。
徐剛社長は「これまでにも多くの賞を受賞してきたが、我々の技術はロボットシステムに組み込まれて初めて価値を生む。ロボットSI事業に注力する日立グループの一員になることで、多くの顧客に技術を届けられる」と意欲を示した。
日立製作所は今後、同社グループが提供するロボットSIのさらなる高付加価値化を図る考え。具体的には、物流センターにおいて入出荷時のデパレタイズとパレタイズの自動化にKyoto Roboticsのシステムを適用したロボットSIを提供するとともに、日立インダストリアルプロダクツ製の小型無人搬送ロボット「Racrew」(ラクルー)や搬送設備なども含めて、自動化ラインをトータルで提供で提供することが可能になるとしている。
さらに、倉庫制御システム(WCS)や倉庫管理システム(WMS)と連動させることで「現場から経営までが一貫してつながる物流センターの高度化ソリューション」を提供する考え。同社グループが成長戦略の中核とするIoT基盤「Lumada」(ルマーダ)へのシナジーも期待する。