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三井不の船橋PJ完了、「経年優化の街づくり」へ

2021年6月30日 (水)

▲30日に完成した「MFLP船橋III」(中央)

拠点・施設三井不動産は6月30日、街づくり型ロジスティクスパーク「MFLP船橋」(千葉県船橋市)プロジェクトの3棟目「MFLP船橋III」が完成したと発表した。隣接する緑地空間「MFLP船橋・&PARK(アンドパーク)」と合わせて、MFLP船橋の開発プロジェクトが完了する。首都東京の衛星都市として成長し続ける、船橋市の東京湾岸エリア(南船橋地区)の開発を手掛けて半世紀余り。三井不がMFLP船橋プロジェクトで具現化した、物流施設に「街づくり」の概念を組み合わせた新しい都市開発の手法は、物流事業の在り方を問いかけている。

MFLP船橋IIIは、MFLP船橋プロジェクトの第3期(最終期)計画。三井不は、東側に隣接するアンドパークと合わせて、「MFLP船橋プロジェクトの集大成」と位置付ける。公園として整備したアンドパークは7月2日より、一般開放する予定だ。

▲MFLP船橋の全体を模したミニチュア。右奥が新築の「MFLP船橋III」

三井不の正式発表によると、MFLP船橋IIIは地上8階建てで延床面積は27万1051平方メートルと同社の開発案件で過去最大。各フロアの倉庫とトラックバースの合計面積は2万7000平方メートルと、業界でも最大規模を誇る。45フィートコンテナ対応バースを整備し、トラックバースには車番認証システムを採用。将来的には需要に応じて冷凍・冷蔵設備の導入も検討する。事務所スペースも3.6メートルの天井高を確保し、緑地空間を眺望できる仕様としたほか、オフィスビルと同水準のセキュリティ設備を整えた。MFLP船橋Iの「空」、MFLP船橋IIの「海」に対して、MFLP船橋IIIは「陸」をイメージした外観とし、緑地も含めて地域の景観にも配慮した。

広大な敷地に余裕のある設備構成が特徴のMFLP船橋III。それを実現した要因は、三井不の物流施設開発の信条である「地域に根ざしたコミュニティの創出」にある。

30日に現地で開いた記者説明会で、三井不の三木孝行・専務執行役員ロジスティクス本部長は、MFLP船橋プロジェクトの根幹をなす思想について、「経年『優化』する街づくり」と表現した。まさに、経年劣化の対語として編み出したフレーズであるが、それが色濃く反映されたのが、MFLP船橋IIIとアンドパークなのだ。

▲MFLP船橋IIIの完成について発表する三井不動産の三木孝行・専務執行役員ロジスティクス本部長

MFLP船橋プロジェクトは当初、第4期までの物流施設開発を想定していた。つまり、MFLP船橋IIIとアンドパークの部分は、計画段階では第3期と第4期の2棟を建設するスペースだった。しかし、隣接地に大規模マンションが完成すると、「ベランダの眼前に物流倉庫の壁面が広がり、住環境が悪くなることを懸念し、計画を変更した」(三木本部長)ことにより、マンションに接する区画を緑地とし、第3期計画をやや広げてゆったりとした敷地を確保した。つまり、物流施設の拡張と地域住民の住環境保護を両立したというわけだ。物流倉庫と住空間が同居しながら、互いに街を創造していく――。それが「経年優化」の意味するところであり、その実証事例がMFLP船橋プロジェクトだ。

それにしても、物流施設開発を「街づくり」「地域コミュニティ」と結びつける狙いは何なのか。その問いに対し、三木本部長の答えは明快だった。「『人』です。優秀な人、特に若い皆様に、ここで働くことがプライドだと思ってもらえる、そんな環境を作りたいのです」。物流現場の省人化は重要な戦略だが、最終的に仕事を作り上げるのは「人」なのであり、従業員の採用を含めて、働きがいのある施設を作るのは物流開発業者の使命だという。今後は、近隣で三井不が運営する「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO−BAY」と連携したイベントや割引の実施など、南船橋の他の開発施設を巻き込んだ従業員へのサービスも展開するという。

既に8割の入居テナントが確定しているMFLP船橋III。千葉県の東京湾岸エリアで競合する他物件に対する優位性を判断する場合、「街」として愛される存在であるか否かが、判断基準の一つになるのかもしれない。

■「MFLP船橋III」概要
所在地:千葉県船橋市浜町2-4-7
敷地面積:5万8857平方メートル
延床面積:27万1051平方メートル
構造:地上8階建・柱RC梁S造・免震構造
竣工:2021年6月30日
アクセス:JR京葉線「南船橋駅」徒歩9分、東関東自動車道「谷津船橋IC」から2.2キロ、京葉道路「花輪IC」から3.2キロ