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「ドライバー確保」以外の解決策も模索すべき

幹線輸送ドライバー不足の深刻化不可避

2021年7月20日 (火)

話題2025年度に必要な幹線輸送ドライバー数は2017年度比18%増に――。国土交通省がまとめた、幹線輸送にかかる必要乗務員数の推計で、こんな衝撃的な数字が明らかになった。ある輸送拠点にそのエリアの荷物を集約し、別の拠点に大量に運ぶ幹線輸送は、国内の経済を支える大黒柱だ。それを支えるドライバー不足が顕著となり、高齢化も進む。幹線ドライバー不足の深刻化が避けられない状況で、ドライバー育成と幹線輸送そのものの効率化は、待ったなしの課題だ。

(イメージ図)

国交省は、貨物量が現状維持だと仮定した場合の2025年度の幹線輸送ドライバー必要数は17万7000人と推計。2017年度の15万人と比べると17.8%の増加となった。貨物量が今後減少すると仮定した場合でも、2025年度には2017年比で8.0%増の16万2000人のドライバーが必要であると試算した。

一方で、トラックドライバーは、募集してもなかなか集まらない傾向が強まっている。労働条件が厳しいことが一因で、ここ5年間のトラック運転者の有効求人倍率は全職種平均の2倍近い数値で推移している。結果として、トラックドライバーの高齢化は顕著であり、2017年度の大型トラックドライバーの平均年齢は47.8歳と、全産業全職種平均よりも5.3歳上回っており、定年退職などによる離職が今後進むとみられるなかで、若年層を中心としたドライバー確保が喫緊の課題になっている現状が浮かんだ。

なぜ、こんなにドライバーは不人気な職種なのか。ここに、全産業平均と比較した「平均労働時間の比較」と「平均年間賃金の比較」の2017年度データがある。大型トラックドライバーの平均労働時間は2604時間で、全産業平均より468時間多かった。一方で、平均年間賃金は454万円で、全産業平均よりも38万円少なかった。

長時間労働の要因は、運転時間もさることながら、物流センターでの荷待ち時間や荷役時間にある。特に年末などの繁忙期には、物流センターの周辺道路に大型トラックが列をなす光景がよくみられる。数時間単位での荷待ちもざらだ。

将来的に、幹線輸送による貨物量は、減少傾向になると予測されている。将来のトラックによる貨物量が減少傾向になるとみられる中で、労働条件が現状のままであれば貨物量に比例して必要な乗務員数も減少する。他産業と同等な労働条件とした場合、貨物量が将来的に減少しても、まだ現状よりも多い幹線輸送のトラックドライバーが必要な状況であるとみられる。

(イメージ図)

その要因の一つが、「働き方改革関連法」の自動車運転業務への適用が開始されることで発生する遵守事項を守る動き、いわゆる「2024年問題」だ。同法は2019年より施行されていたが、運送業やトラック含む「車両運転業務」に関しては2024年まで猶予されている。幹線輸送ドライバーも当然ながらその対象となり、一人当たりの労働時間を制限することになれば、それだけドライバー数を確保する必要が出てくるからだ。

ドライバーの確保は理解しているが、募集しても集まらない。賃金負担も重い――。幹線輸送企業からは、こんな悲鳴が聞こえてきそうだ。国交省も、若年層や女性のドライバー就労育成・定着化に関するガイドラインを策定するなど、ドライバー確保に躍起だ。日本物流団体連合会の池田潤一郎会長も、「物流業を若い世代に『等身大』で見てもらえる活動」に重点的に取り組む姿勢を明確にした。しかし、2025年度に17万7000人の幹線輸送ドライバーが本当に集まるのか、正直なところ厳しい印象だ。

むしろ、トラック自動運転や新幹線を使った貨物コンテナ輸送など、トラック輸送への依存を低くする取り組みの方が長期的には現実的な施策ではないだろうか。ドライバー確保策という狭い見識で議論をしていても、袋小路に入るだけではないか。実行的な議論に本腰を入れる時期に来ている。(編集部・清水直樹)