ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

「最後のフロンティア」で日本は主導的立場を担えるか?

西アフリカへの進出競争に日本物流業界は遅れるな

2021年7月26日 (月)

国際世界における「最後のフロンティア」とされる西アフリカ。将来の経済発展が見込まれることから、自動車や食品など多様な業種のグローバル企業が熱い視線を送る。こうした動きが活発化するにつれて、大きなビジネス機会が生まれるのが物流業界だ。先進国からアジア、南米などへとシフトが進む世界の経済重心は、いよいよアフリカに移ろうとしているのか。世界の物流業界も虎視眈々と時機を狙う。日本の物流プレーヤーにとって、決して出遅れてはならない「戦い」が始まろうとしている。

(イメージ画像)

英仏など欧州の植民地支配から相次いで独立した西アフリカ諸国のなかで、とりわけ大きな経済規模を誇るのがナイジェリアとガーナだ。ナイジェリアは世界有数の産油国であり、現在も石油とガスに外貨獲得の手段を依存しているのが実態だ。ガーナは、カカオ豆の世界的な産地として知られるほか、金も重要な輸出品だ。しかしながら、こうした西アフリカの経済国家でさえも、独立後に直面してきた課題から、アジアや南米のような経済発展を未だ達成できずにいる。

その課題とは何か。まずは、政争や部族衝突、外国人をターゲットとした犯罪が続いていることだ。こうした治安への懸念は、西アフリカ諸国にとって、対外ビジネス深化と内需拡大の両方を阻む要因となることから、経済の成長の足かせになっている。

もう一つが、海側と内陸との経済格差だ。ガーナを例にとってみよう。沿岸部は、テマ港とタコラディ港の2大主要港が整備されているほか、ハブ空港としてアフリカ各国や欧州への貨物便も就航するコトカ国際空港が、首都アクラの経済的な後ろ盾として機能する。しかし、沿岸部から内陸に向かう交通インフラの整備が進んでいないため、国内の物流網は極めて脆弱だ。海外からの貨物が空港や港湾に届いても、そこからの陸運がスムーズにいかないため、結果として荷主の求める物流が完遂しにくいのだ。

(イメージ画像)

とはいえ、若い世代が多く、将来の経済成長の潜在的なパワーを抱える西アフリカは、こうした物流インフラ投資の余地が大きい「最後」のエリアであるのは間違いない。世界のグローバル企業が着目するのは、当地におけるインフラ整備の行方だ。

2019年8月に横浜市で開催された「第7回アフリカ開発会議」で、当時の安倍晋三首相は政府として今後3年間で200億ドル(2兆2000億円)を上回る民間投資の実現を後押しする考えを表明。アフリカ支援で主導的な役割を果たす姿勢を強調した。アフリカ諸国も、日本が関与する形での経済発展への期待は大きいとされる。

ここは、マレーシアなど海外でのインフラ整備の実績もある日本の出番ではないか。沿岸部と内陸部へのインフラ整備について、日本のノウハウを具体的に反映させてイニシアチブを発揮する。西アフリカの経済発展の礎を築く役割を果たすことで、日本が当地との経済連携を深める好機となる。官民の枠を超えたプロジェクトとして、ぜひ取り組んで欲しい。日本の物流業界も西アフリカでのビジネスチャンス獲得に本腰を入れるだろう。動き出す時機は、まさに今だ。(編集部・清水直樹)