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東急不やヤマト、冷凍宅配ボックス実証実験を開始

2021年8月5日 (木)

心斎橋東急ビルでの実証実験(出所:東急不動産)

調査・データ分譲マンションにおける冷凍宅配ボックスの実証実験が、東急不動産(東京都渋谷区)とヤマト運輸(東京都中央区)、パナソニックの3社の連携でスタートする。分譲マンションでの冷凍宅配ボックス導入は、実現すれば国内初の事例となる。消費スタイルの多様化や、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う宅配ニーズの高まりを受けて、冷凍食品のデリバリー需要が急増している。コロナ禍の収束後も、こうした生活様式は定着するとの予測もあることから、今回の3社による実証実験は、マンション開発業者と宅配事業者、製造業がタッグを組んだ、まさにアフターコロナを見据えた戦略と言える。

実証実験は8月6日から10月29日まで、心斎橋東急ビル(大阪市中央区)で東急不動産の社員140人が参加して実施。社員が注文した指定の商品を、ヤマト運輸が同ビルの冷凍・冷蔵ロッカーに配達する。実際の運用を見据えた、確認注文から配達までの運用における課題抽出と解決に向けた検討を行う。実証実験で使用する冷凍・冷蔵ロッカーはパナソニック製で、インターホンシステムや非接触キーなどの機能を追加で搭載している。

使用イメージ(出所:東急不動産)

分譲マンションにおける冷凍品の配達については、既存の宅配ボックスは活用できず、在宅時に手渡しで届けるしか方法がない。そのため、宅配業社における再配達増加の主な要因のひとつになっていた。冷凍機器を内蔵した宅配ボックスを常設する場合は、コストや維持管理の観点から、実現が難しいとされてきた。

しかし、冷凍食品の宅配ニーズがコロナ禍で急増していることから、東急不動産は宅配ボックスの冷凍機能が分譲マンションの入居者サービスや資産価値向上に資すると判断。冷凍品の配達効率化を進めたいヤマト運輸との意向が合致し、パナソニックの冷凍システムの開発技術を組み合わせた形での実証実験が実現した。

宅配ニーズ拡大が生み出す新サービス、その成否は?

コロナ禍によるライフスタイルの劇的な変化は、既存のビジネスに変革を迫るだけでなく、新たなビジネスチャンスの創出を強く促す。今回の実証実験の対象である、分譲マンションにおける冷凍宅配ボックスの導入に向けた取り組みは、まさに象徴的な事例だ。

分譲マンションへの冷凍宅配ボックスの普及が広がれば、宅配だけでなく食品業界にも影響が及ぶのは必至だ。不在時の多い単身世帯が冷凍食品をEC(電子商取引)サイトで購入する機会は確実に高まるだろうし、連動して新商品の開発も加速すると想定される。食品以外にも、医薬品など冷凍保存が必要な物品の配送もより容易になると考えられる。

冷凍食品の配送をめぐっては、パルシステム生活協同組合連合会などがドライアイスなどを詰めて梱包して、不在時の「置き配」サービスを行っているが、こうしたきめ細かい冷凍配送サービスの普及は、輸送効率の制約などから限定的なのが実情だ。宅配業界も、課題として認識していながらも、具体的な対応策を講じられずにいるのが現実だろう。

業界を超えた3社が挑む今回の実証実験は、こうした既成観念を打ち破る事例になりうる戦略的な取り組みと言える。コロナ禍が後押しした新サービスの創出につなげられるか。今後の動向から目が離せない。(編集部・清水直樹)