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高速の無料化は先送りか、国交省部会が答申

2021年8月5日 (木)

(イメージ図)

行政・団体持続可能な高速道路システムの構築に向けた検討を続けている国土交通省の有識者会議「国土幹線道路部会」が、これまでの議論を踏まえた中間答申を取りまとめた。高速道路を有料にする期限を2065年までと定め、その後に無料化する予定の現行制度について、現在の有料期間の延長に向けた検討を求めている。終わりの見えない高速道路無料化をめぐる議論は、事実上の「断念」という決着を迎えるのか。議論の行方は予断を許さない状況だ。

無料化の実現が困難な理由については、高速道路の維持管理や修繕、更新などに必要な費用な財源が確保されていないことを挙げている。また、修繕を繰り返しても道路の性能が徐々に低下することは避けられないこと、構造物の劣化を予防するための保全を、適切なタイミングで実施することなどが難しいことなども指摘した。

現行の有料道路制度においては、建設に要した費用などをその後の料金収入によって賄う「償還制度」が取られており、それに伴い償還期間と料金徴収期間が2065年までと定められている。ただし、これまでにも見直しにより度々先送りされてきた経緯があり、同部会は「将来は無料になるという説明に対する不信感が高まっている」と指摘している。

その上で答申では、「最大の受益者」である利用者が料金割引を認識・実感できる、公平で分かりやすい料金制度を実現すべきとも提案。開催中の東京五輪に伴って実施している、特定時間帯に首都高速道路で取り入れているマイカーなどへの割り増しや、ETC搭載車両への割引を参考に、まずは大都市圏を対象に、時間帯や曜日を指定して経路の転換を促す料金制度の導入を提案した。また、将来的には「交通需要に応じて一定時間ごとに変動する機動的な料金」の導入を目指すべきとした。

無料化はさらに見通しにくい状況に

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答申においては「高速道路の更新や進化の取り組みを、将来にわたり継続的に実施するための財源を担保することは不可能」「必要となる更新費用の長期的な見通しを的確に立てることは困難」などと明記した一方で、先送り期間のめどなどについては示されておらず、無料化の実現はさらに見通しにくい状況になったといえる。同省によれば、現時点では必要となる財源の規模の把握なども難しいことから、今回の答申は“中間”ではあるが、議論に一区切りをつける取りまとめとも捉えているという。

一方で、五輪期間の特例措置をもとに「速やかに実現すべき料金制度」のあり方は示された。高速道路無料化の可能性が途絶えたわけではないが、当面は料金の徴収がなくならないものと考え、公平感のある費用負担を考えた、時間帯ごとや車種ごとの料金体系のさらなる検討や整備などが、「持続可能な高速道路システムの構築」のために必要になってくるだろう。(編集部・行松孝純)