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プロロジスが岩手で物流施設を開発、23年冬完成

2021年8月6日 (金)

拠点・施設プロロジスが、岩手県矢巾町にマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク盛岡」の開発を決定した。プロロジスの東北地方における戦略は、最大の都市である仙台を拠点とした拠点展開だったが、あえて岩手で新たな開発に踏み切ったのはなぜか。その背景には、物流従事者が抱える課題も見え隠れする。物流拠点展開のあり方を考えるうえでのヒントになる事例と言えそうだ。

「プロロジスパーク盛岡」は、東北地方でも最大級の物流施設となる。既に日用雑貨や食品など複数の企業から引き合いを受けており、引き続き入居企業を募集中だ。

盛岡市近郊に位置する開発予定地は、東北自動車道「盛岡南インターチェンジ(IC)」から4.7キロメートルと10分圏内にある。盛岡市を中心とする県内の消費地にアクセスしやすいだけでなく、高速道路を経由して青森と秋田といった北東北エリアへの移動も容易だ。さらに、仙台を経由して南東北エリアや首都圏にも直結する、広域交通ネットワークの恩恵を受けられる立地が強みだ。開発地に隣接し、高稼働率を維持している物流集積拠点「岩手流通センター」には、大手物流企業などが進出し、東北三県の物流ハブとなっていることも、相乗効果を生み出せる意味で利点となるだろう。

プロロジスはこれまで、東北エリアにおいては仙台を中心に物流施設を提供してきた。今回の岩手における物流拠点開発は、東北エリアにおける物流機能の集中を避けて、あえて拠点を分散させることによるメリットを前面に出すことで、市場で優位性を示す狙いがあるからだ。

災害時のリスク分散による物流機能の継続性を重視したことに加えて、2024年4月よりトラックドライバーの時間外労働への上限規制が厳格化する「2024年問題」への対応として、東北エリアにおいても拠点分散化ニーズが高まっている。広い面積を有する東北地方で、南側に位置する仙台よりも北側のエリアに拠点を設けることで、長距離運転を回避できるメリットがあるほか、豪雪時などの物流インフラの途絶を回避できる。現在は東北の物流ハブとなっている仙台エリアに加えて、今後は北東北への中継地点として、開発地予定地周辺への立地ニーズが期待できると判断し、今回の進出を決定した。

(出所:プロロジス)

■「プロロジスパーク盛岡」の概要(計画)
開発地:岩手県矢巾町広宮沢
敷地面積:7万4000平方メートル
延床面積:10万平方メートル
構造:鉄骨造、地上3階建て
着工予定:2022年春
竣工予定:2023年冬

地方における物流拠点戦略の試金石に

プロロジスが岩手に物流施設を建設した狙いは、二つの意味で北東北エリアにおける物流インフラの途絶を回避する狙いがあると言えそうだ。

まずは、仙台以北の空白地に拠点を新たに置くことによる、物流ラインの強化だ。仙台と青森の中間に拠点ができれば、中継地としての役割を果たすことで、より効率的な輸送が可能となるだろう。また災害時における仙台の補完機能を担えるメリットは、荷主企業にとっても信頼感の醸成につなげられる。

もう一つが、「2024年問題」に代表される労務管理面での利点だ。国土交通省のまとめでは、トラックドライバーの健康問題に起因する事故は増加傾向にある。仙台から青森・秋田までの長距離運転を、岩手に拠点を置くことで回避できる。車両の効率的な分配も実現できることから、物流従事者の負担軽減に大きく貢献することになる。東京と大阪の間のトラック輸送を担う企業が、中間の浜松市で中継拠点を設けるのと同じ考え方だ。冬季の悪天候が懸念される東北地方ではなおさらだろう。

毎年のように国土を襲うさまざまな災害からインフラを守る観点で、「物流は経営戦略だ」と指摘する経営者が増えてきた。今回のプロロジスによる岩手の物流拠点開発も、まさに同じ文脈の発想だ。その意味で、地方エリアにおける物流拠点展開のあり方を問いかける取り組みとも言える。地域雇用の創出も含めて、今後の展開を注視していきたい。(編集部・清水直樹)