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ヤマトHD1Q、宅配ニーズ増加に対応し増収増益

2021年8月12日 (木)

財務・人事ヤマトホールディングス(HD)が12日に発表した2022年3月期第1四半期連結決算は、営業収益が前年同期比7.1%増の4198億4100万円、営業利益が同27.9%増の127億3400万円、経常利益が同54.3%増の162億4900万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同3.4倍の117億500万円で増収増益となった。ベンチャーキャピタルファンドへの出資金に関する投資事業組合運用益として営業外収益を30億円計上したことにより、経常利益と純利益が大幅に増加した。

営業収益は、前年同期の緊急事態宣言下で急増した需要の反動があったものの、成長するECへの対応による荷物の取扱数量増加や、物流の最適化に注力したことで増加。利益面は経営資源の最適配置によるコストの適正化などでプラスに転じたものの、取扱数量増に伴う輸送費用増や、燃料単価の上昇などによる営業費用増が響いた。宅急便の取扱量は同9.8%増の4億9100万個。クロネコDM便は同9.7%増の1億9400万冊だった。

2022年3月期の通期連結業績予想は、4月の公表数値から、営業収益を1兆7750億円から1兆7650億円に、経常利益は950億円から980億円に、純利益は530億円から540億円にそれぞれ修正。営業利益は950億円を据え置いた。第1四半期に営業外収益を計上した一方、第4四半期には連結子会社の株式譲渡による特別損失35億円の計上を見込むという。同社は22年1月にヤマトホームコンビニエンス(東京都中央区)の発行済株式の51%をアートコーポレーションに譲渡する。

努力は2年半後にどのような成果を結ぶか

ヤマトHDは4月にスタートした3カ年の中期経営計画で、2023年度の売上高2兆円、営業利益1200億円達成を目標に掲げる。初年度の2021年度は第1四半期で増収増益のスタートを切り、同時に公表した2022年3月期の通期業績予想修正でも、利益を上乗せした。しかしながら、目標達成に向けた勢いを感じるには弱気な数字だった印象が否めない。通期業績予想を大きく上乗せしたライバルのSGホールディングスグループと比べても、元気を感じられない。

もっとも、ヤマトHDにとっては、今が我慢の時だとも言える。ヤマトホームコンビニエンスの非連結化や本社の改修・建て替えなど、将来の成長戦略を見据えた取り組みに注力する段階にあって、今は新規ビジネス創出の基盤を整えるために必要な、経営体力を養う時期と位置付けているのかもしれない。

ヤマトHDは、ECの拡大を受けた取扱数量増に伴う輸送費用増などが営業費用を押し上げたと説明するが、目標達成に向けてはさらなるコスト管理や、EC需要の取り込みなどが必要になるかもしれない。中計では4000億円を投じて経営改革に取り組むが、その努力が2年半後にどのような成果に結びつくか。今後も引き続きヤマト HDの業績推移を注視していきたい。(編集部・行松孝純)