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国交省概算要求、「効率的な物流」に4369億円

2021年8月31日 (火)

▲国土交通省

行政・団体国土交通省は、2022年度予算の概算要求を発表した。一般会計で21年度当初予算比18%増の6兆9349億円を求めた。そのうち、社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大に向けた取り組みとして、「効率的な物流ネットワークの強化」に21年度当初予算比22%増の4369億円を計上。持続的な社会の構築に不可欠なインフラとして物流が見直されるなかで、道路整備やトラック輸送と物流拠点との接続強化などの施策を盛り込んだ。

迅速・円滑で競争力の高い物流ネットワークの実現を図る施策として、大都市圏環状道路などの整備やピンポイント渋滞対策などを合わせて推進し、交通渋滞の緩和などに取り組む。特に、三大都市圏における環状道路などの整備を推進するほか、トラック輸送と空港・港湾など主要な物流拠点との接続の強化を図る。

さらに、平常時と災害時を問わず安全で円滑な物流を確保するための道路ネットワークの構築を進めていく。交通の円滑化や都市の活性化などを図るために連続立体交差事業を推進し、物流にとって効率の高い道路の整備に注力する。

トラック輸送については、「ダブル連結トラック」の導入促進による省人化を図ることで、ドライバーの就労環境の改善を推し進める。

政府による物流施策はやはり道路整備が基本なのか

国交省が22年度予算の概算要求で、「効率的な物流ネットワークの強化」に21年度当初予算比22%増の4369億円を求めたのは、物流が国民の社会・経済活動に不可欠なインフラであることを強く認識しているからだ。とはいえ、その根拠となる施策の中身はと言えば、やはり道路整備が中心で目新しさを感じられない印象だ。

イメージ図

確かに、物流ネットワークの効率化を実現する近道は道路整備だ。環境負荷低減の観点からモーダルシフトが推奨されているとはいえ、やはり物流の主役はトラック輸送であることを考えれば、当然の帰結かもしれない。物流現場の業務効率化に向けた各種ロボットやシステムの導入をはじめとするDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進は個別企業の裁量であるとしても、道路整備は国家プロジェクトだからだ。

だが、果たしてそうだろうか。物流ビジネスは道路での輸送だけで成り立っているわけではない。むしろ、サプライチェーンの発想で言えば、物流施設における効率化は全体最適化の実現に向けた大きな役割を果たす部分であるはずだ。

道路整備は物流の効率化に必要な施策なのは理解する。災害時の代替アクセス確保の観点から、大都市間の高速道路の「複線化」は極めて重要な施策だ。しかし、こうした道路インフラ整備は一巡しつつあるなかで、そろそろ現場寄りの施策に軸足を移す時期が来ているのではないか。その意味で、ダブル連結トラックの導入促進に向けた施策が重要課題として盛り込まれたのは、評価したいポイントだと思う。(編集部・清水直樹)