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日立物流がTCFD提言に賛同を表明、情報開示に反映

2021年9月14日 (火)

環境・CSR日立物流は14日、気候変動の影響を考慮した経営や財務情報の開示のあり方を検討する「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言への賛同を表明したと発表した。TCFDの提言に基づき、気候変動が事業にもたらすリスクと機会を分析し、財務面への影響をより分かりやすく解説する情報開示を、広くステークホルダーに対して推進していく。

▲気候関連財務情報開示タスクフォースのロゴマーク

日立物流は、経営理念「日立物流グループは広く未来をみつめ人と自然を大切にし良質なサービスを通じて豊か な社会づくりに貢献します」に従い、気候変動対応を経営の最重要課題と位置付ける。持続可能な社会の実現に向け、2020年度に「環境中長期目標 2030/2050」を策定し、CO2排出量削減に向けた取り組みを推進している。世界的に脱炭素社会実現への取り組みが加速するなかで、さらに積極的な取り組みを進めるため、ことし7月にはCO2排出量を2013年度比で、2030年度に50%削減、2050年度にはカーボンネットゼロに見直し、脱炭素社会の実現に貢献していく方針だ。

TCFDは、2015年に金融システムの安定化を図る国際的組織である金融安定理事会が設立した、気候変動を考慮した経営や財務情報の開示について考えるプロジェクトチーム。8月25日現在で、TCFDの提言に世界全体で2400、国内では475の企業・団体が賛同している。

機関投資家の「監視」を意識して持続的成長を図る好機に

日立物流がTCFDの提言への賛同を表明した背景には、気候変動の影響を考慮した経営方針や具体的な活動を示すことで、機関投資家をはじめとするステークホルダーに対する企業価値向上を推進する狙いがある。裏を返せば、こうしたTCFDの趣旨に賛同できないと烙印(らくいん)を押された企業は、社会から厳しい視線を送られ、持続的な成長戦略にも支障が出る可能性があるということだ。

ESG(環境、社会、コーポレートガバナンス)投資が世界に広がっている。欧米の多くの機関投資家が、気候変動をポートフォリオの重要なリスク要因に位置づけ、投資で優先すべきテーマに掲げる。気候関連にかかる情報開示が不十分な企業に対しては、議決権を行使して改善を求める集団的エンゲージメントや、投資そのものを引き上げるダイベストメントの動きを強めている。もはや、これは欧米市場だけの話ではない。日本にも着実に広がり始めているのだ。

海外の機関投資家が株式を保有する日本企業の場合、気候変動に関する情報開示に消極的と判断されてしまうと、こうした反応を受けることになる。日本政府は2050年のカーボンニュートラル実現を宣言しているように、社会活動を支える存在である企業にとっては気候変動を考慮したCO2削減などの取り組みは、もはや当然のこととして認識されなければならないだろう。ステークホルダーの「監視」が強まるなかで、従来の財務報告と気候関連財務情報との親和性を高める取り組みは、結果として企業の成長につながる。こうした意識を持つことは、社会インフラを支える物流企業ではなおさら必要だろう。気候変動の影響を考慮した経営方針の開示、これは物流企業にとって自らの活動の「通信簿」にもなるはずだ。(編集部・清水直樹)