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食品宅配市場は今後も拡大基調維持、矢野経済分析

2021年9月17日 (金)

調査・データ2020年度の食品宅配市場は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う宅配ニーズの高まりで大幅成長へーー。矢野経済研究所(東京都中野区)がまとめた国内食品宅配市場の調査で、こんな結果が出た。

2020年度の食品宅配市場の規模は、前年度比14.3%増の2兆4969億円と推計。2016年度に2兆円の大台に乗り、少子高齢化の進行で国内の食関連市場が縮小傾向にあるなかでも、成長を続けてきたが、2020年度は、コロナ禍の影響による宅配需要の急拡大を受けて、2桁の成長を記録した。

▲食品宅配市場規模の推移と予測(出所:矢野経済研究所)

少子高齢化や女性の社会進出といった社会的要請を受けて、食品宅配サービスはその重要性を増してきている。コロナ禍を契機として消費スタイルの多様化が一気に進み、宅配サービスへの注目を集めた形だが、引き続き異業種のみならず、業態間の競争も激化している。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、飲食店のデリバリーサービスが充実するなかで、店内に飲食スペースのないキッチンのみの飲食店が注目を集めている。ゴーストレストランやバーチャルレストランなどと呼ばれるサービスだ。

ゴーストレストランは米国発祥と言われ、主にネットで注文を受けて店舗(キッチン)で調理を行い、デリバリーで顧客に料理を届けるサービス形態である。来店客がいないため店舗の立地にこだわる必要がなく、ホール(飲食スペース)やスタッフルームといったスペースも接客のための従業員も不要なことから、開業コストを大幅に削減できる。

クラウドキッチンを複数の店舗でシェアすれば、より少ない資金で出店することも可能。従来の飲食店が空き時間を利用して、別業態(ブランド)のゴーストレストランを展開するスタイルもあり、コロナ禍で来店客が激減している飲食店の新たな“副業”としても注目されている。新時代のフードデリバリーサービス市場の拡大を支えている。

食品宅配市場は2020年度から2025年度までの年平均成長率が3.3%と引き続き順調に推移し、2025年度の食品宅配市場規模は2兆9321億円に達すると予測する。矢野経済研究所は「コロナ禍を契機として急拡大した市場は、感染収束の兆しが見えないなかで2021年度以降も拡大を続けており、今後はフードデリバリーの日常利用が進んで、生活に不可欠なサービスとして定着する」と分析する。