国内再配達をなくす置き配バッグ「OKIPPA」(オキッパ)を提供するYper(イーパー、東京都渋谷区)は19日、自律走行搬送ロボット(AMR)の「LOMBY」(ロンビー)による中山間地域での宅配便と生鮮食品などの配送実験を10月25日から5日間、広島県北広島町で実施すると発表した。中山間地域におけるラストワンマイル輸送のあり方を検証することで、効率的で実効的な物流インフラの構築につなげる狙い。
消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染症の拡大によりネット通販の市場規模は地方部でも急速に拡大している。一方で、人口が減少する中山間地域では宅配インフラの維持が課題となっている。今回の実証実験では、宅配サービスをAMRが担うことにより、地域事情に応じたラストワンマイル輸送の効率化を模索する意味合いがある。
実証実験で活用するLOMBYは、各種センサーの情報を統合して最適な配達ルートを自律走行する。AMRを既存システムと融合させてラストワンマイル配送に活用することで、宅配物と生鮮食品などなモノを自動で混載配送することで、離れた複数地点に設置されたステーションにあるボックス間配送の完全な自動化を図る。
今回の実証実験は、北広島町役場本庁正面玄関とショッピングセンターサンクス搬入口までの片道300メートルを1日4往復運行。ロボットの性能検証にとどまらず、中山間地域での物流の利便性を確保しながらAMRを新たな買い物支援として運用するための収益モデルの検証も行う。
地方発の物流DX化があってもいい
地方部での物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けた実証活動が広がりを見せている。Yperが広島県北広島町の中山間地域で実施するラストワンマイルのロボット配送実験も、こうした動きの一環だ。この北広島町にロボットによるラストワンマイル輸送が定着するかどうか。そこをゴールに設定した実証の機会となることを期待したい。
国土交通省や企業、各種団体が相次いでロボットによる自動配送システムのテストを全国で実施している。こうした取り組みは、本来は前向きに支援するべきなのだろうが、どうもロボットの性能試験としての位置付けから脱却できていない事例が目立つ気がしてならない。
今回のYperによる実証実験は、「新たなラストワンマイルインフラの構築」を目的に掲げている。今回は町役場と店舗を往復するルート設定だが、今回の実証結果を具体的に検証して、今後も継続してさらに実効的なトライアルを進めてほしい。複数の配送先を順番にめぐるなどの複雑な配送ルート巡回や、想定時間外の自動輸送など、高齢世帯の多い地域で本当に役立つ機能として定着するシステムの構築を現実的に進めるべきではないだろうか。
地方で実現できたサービスを全国に展開する「地方発」の物流DX。これも物流現場の効率化策の一つだ。(編集部・清水直樹)