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「アライプロバンス浦安」完成、日通NPロジ入居へ

2021年10月28日 (木)

拠点・施設アライプロバンス(東京都墨田区)は28日、千葉県浦安市の浦安鉄鋼団地で進めていた、同社初のマルチテナント型物流施設「アライプロバンス浦安」の建築工事を完了した。11月に稼働する。電気製品物流を手がける日通・NPロジスティクス(大阪府摂津市)が2階と3階を賃借し、東日本エリアにおける基幹物流拠点の一角とする。

▲新井嘉喜雄社長

アライプロバンスがこの日、現地で開いた完成式典に臨んだ新井嘉喜雄社長は、「とても感慨深いものがある。安定した現状に満足することなく、社会から必要とされる企業であることを自身に問い続けてきたからこそ、今がある」と同社の歴史を振り返った。

アライプロバンスは、石油開発用掘削機器の製造技術で世界をリードした老舗の金属加工業。新興国の台頭による事業環境の変化で岐路に立たされると、2020年7月には総合不動産業に業態を転換するとともに、商号も「新井鉄工所」から「アライプロバンス」に変更。自社工場跡地の再開発を柱とする総合不動産業を展開する。今回完成したアライプロバンス浦安は、こうした開発案件の第一弾であり、旧浦安工場跡地に建設した。

▲施設前のバス待合所。工事残土を使用し、「土地の記憶の継承」と「エコロジー」を表現した。

アライプロバンス浦安は、市内で2008年以来となる、延床面積3万4600平方メートルの大型マルチテナント型物流施設。新たな物流施設の開発計画が次々と明らかになるなか、海上コンテナトレーラーが2階に直接アクセスできるスロープを市内で初めて採用し、「人と街をつなぐ」空間デザインで従業員の就労環境に配慮するなど、「ありきたりなものは作らない」(新井太郎専務)コンセプトを反映した。

1階と4階、2階と3階の複層階利用を想定してテナント企業を募集。完成時点では2・3階全面の1万2800平方メートルを日通・NPロジスティクスが「東日本グローバル物流センター」の一部として利用することが決まった。日通・NPロジスティクスは、同じ浦安市の港・千鳥エリアの複数施設を利用し、メーカーの海外工場から輸入される電気製品を国内に流通させる基幹拠点を構築していた。しかし、取扱量の増加に対応するため、新たな倉庫スペースを模索。立地や機能などの観点で検討した結果、アライプロバンス浦安の活用を決めた。

▲2階のトラックバースに続くスロープ

日通・NPロジスティクスの中林淳執行役員は、取引先の拡大による荷量増加に対応するため、「東日本グローバル物流センター」機能をこれまでの13万2000平方メートルから、22年中に18万4800平方メートルに拡大する計画を進めていることを明らかにしたうえで、倉庫スペースの賃借先をアライプロバンス浦安に選定した理由については、「既存拠点と同じ浦安エリアであることと、2階に直接アクセスできる利便性を評価した」と話した。

アライプロバンスは、複数の商談が進行中という1階と4階の入居企業の募集を進め、早期の満床を目指す。

後発ゆえの「個性派」施設、今後の運営面でも独自のカラーを打ち出して

アライプロバンスの第一号開発案件となる物流施設「アライプロバンス浦安」が完成した。著名な建築家でクリエイティブディレクターの菅原大輔氏に外構部のデザインを依頼するなど、かなりの前衛的な挑戦を経て完成した施設だ。物流施設開発事業者として後発である立場を逆に活力に変えて、果敢に既成観念の打破に挑んだ意欲的な施設が、ついに稼働する。

金属加工業から総合不動産業への業態転換による物流不動産業への参入は、業界でも驚きをもって受け止められた。製鉄工場の跡地を物流施設に変える発想は、広大で平坦な敷地を必要とする共通点を生かしたものだ。しかし、それだけでは他の不動産開発企業との差別化を図れず、埋没してしまう。そこで、思い切った施策を講じる必要があったのだ。

とはいえ、今回の浦安の物件は、あくまで「新生」アライプロバンスのスタートでしかない。22年夏に動き出す、東京都江戸川区の「アライプロバンス葛西」(仮称)プロジェクトは、浦安をしのぐ大規模案件となる。浦安で培ったノウハウをそのまま移植するだけではない、さらに斬新な発想を温めているという。

物流施設開発の「個性派」として注目される今こそ、業界にはびこる「常識」を打ち破るパワーを、今後も見せつけてくれると期待する。こうした戦略が間違いでなかったことを示すためにも、まずはアライプロバンス浦安の施設運営で独自のカラーを打ち出してほしい。そうでないと、せっかくの印象的な「ハコ」もくすんでしまう。(編集部・清水直樹)

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