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早朝宅配のカノエ、6200万円調達し店舗運営本格化

2021年11月1日 (月)

▲置き配の様子(出所:カノエ)

フード日本初となる生鮮食品の早朝宅配サービス「モーニング・エキスプレス」を運営するカノエ(東京都目黒区)は1日、ANRI4号投資事業有限責任組合をリード投資家とし、Gazelle Capital を引受先とするシードラウンドの第三者割当増資を実施したと発表した。

既存引受先であるイーストベンチャーズ3号投資事業有限責任組合からの出資を含めて、総額6200万円の資金を調達した。今回の資金調達は、事業を加速するための人材採用と、東京都目黒区内での本格的な店舗運営に充てる。

カノエの早朝宅配サービスは、生鮮食品を夜22時までに注文すれば翌朝7時までに玄関先に届ける。早朝の時間帯を活用した日本初の物流サービスとして注目を集めた。完全置き配型の早朝ルート宅配方式を採用することで、費用を抑えるとともに、忙しい現代社会に合った便利な商品の受け取りを可能にした。

早朝ルート方式は、新聞配達で利用されてきた効率的な宅配スタイル。一般的なデリバリーサービスに使用されている店舗から顧客に直接商品を届けるピストン宅配方式とは異なり、あらかじめルートを決めておき、ルート上での宅配先の密度を高くすることで安価で効率的な宅配を可能にする。

主婦の発想で生まれた早朝宅配サービス、まさに物流ビジネスを活性化する「ニッチ戦略」の象徴だ

まさに「ニッチ戦略」の象徴だ。生鮮食品の早朝宅配サービスを手がけるカノエが、6200万円の資金を調達して事業拡大に着手する。多くのプレーヤーがしのぎを削る宅配ビジネスで、差別化を図りながら新たな価値を提供するカノエの取り組みは、物流サービスがいかに付加価値の「宝の山」であるかを教えてくれる。

消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染拡大に伴う「巣ごもり需要」で宅配サービスは2020年に一気に浸透が進んだ。コロナ禍がようやく沈静化の様相を呈してきた今でも、宅配ビジネスは好調さを維持。コロナ禍収束後の「新しい生活様式」でも、国民の宅配サービスへの依存度はさほど下がらないとの指摘も聞かれる。それは、今後も宅配サービス業界が激しい競争のなかで、生き延びていかねばならないことを意味する。

そこで勝ち残るのは、規模で勝る大資本でなければ、こうした独自の立ち位置を獲得したニッチプレイヤーにほかならない。早朝に特化した宅配ビジネスは、忙しい毎日のなかで「あっ、明日の朝の牛乳がない。夜頼んで、安心安全に朝受け取れたらよいのに。しかも使い続けられる価格で」との思いが発案のヒントになったという。

物量増と多種類化、人手不足と、まさに課題山積の物流ビジネスの現場。それを解決する手段の一つに現場業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化があるのは事実だろう。しかし、そのシステムを発案する企業は、日々の現場での見聞に裏付けられた直感とひらめきを大切にしている。カノエの事例も同様だ。改めて現場を振り返ってみるだけでも、課題解決や新規ビジネスの種は転がっているかも知れない。(編集部・清水直樹)