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ENEOS、実用水準CO2フリー水素FCV充てん成功

2021年11月4日 (木)

(出所:ENEOS)

環境・CSRENEOS(エネオス、東京都千代田区)と千代田化工建設、クイーンズランド工科大学(豪州)は2日、2018年から進めているCO2フリー水素の製造・輸送や脱水素に関する技術検証において、世界で初めて実用レベルに規模を拡大して燃料電池自動車(FCV)への充填に成功したと発表した。

水素を貯蔵・運搬するには、水電解によって生成した水素をタンクに一度貯蔵し、次に有機ハイドライドの一種であるメチルシクロヘキサン(MCH)に変換する必要がある。今回の技術検証では、その工程を大幅に簡略化し水とトルエンから一段階の反応でMCHを製造するENEOSが開発した「有機ハイドライド電解合成法」を採用。19年3月に本手法により豪州の再生可能エネルギー由来のMCHを製造し、日本で水素を取り出す世界初の技術検証を実験室レベルで成功していた。このたび、実際に使用できるレベルにまで規模を拡大して国内においてMCHから水素を取り出すことにより、実際に燃料電池車に充填して走行させることに成功した。

今回のサプライチェーン実証で、ENEOSは水素を介さずトルエンを直接MCHに還元することができる 高効率電解プロセス「Direct(ダイレクト)MCH」を活用。MCH製造に関わる設備費を半減できる。千代田化工建設は脱炭素反応技術を提供し、独自の脱水素反応装置と触媒でMCHの脱水素を実施。水素の収率が非常に高い。クイーンズランド工科大学は、太陽の位置に合わせてパネルの方向を調節し太陽光を集光・発電する「追尾型太陽光発電システム」を導入。従来の据え置き型太陽光パネルと比較して面積あたりの発電量が非常に高い。

▲サプライチェーン実証の流れとイメージ(出所:ENEOS)

ENEOSは、水素の大量消費社会の実現に向けてMCH製造量をさらに増加させるため、Direct MCH技術を活用する電解槽の大型化に取り組んでおり、今回の検証もこうした取り組みの一環。2022年度には大型電解槽のベースとなる150キロワット級の中型電解槽を完成させ、25年度をめどに5メガワット級の大型電解槽の開発を目指す。将来的には30年度をめどにCO2フリー水素サプライチェーンの構築に向け、技術開発を進めている。

3者は今後も、政府が宣言する50年までのカーボンニュートラル実現に向けて、産学連携でCO2フリー水素製造技術の社会実装に向けた商用規模での技術開発の早期実現を目指す。