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エミレーツ、24年までに1140億円投じて貨物機増強

2021年11月19日 (金)

(出所:エミレーツスカイカーゴ)

国際エミレーツスカイカーゴ(アラブ首長国連邦)は19日、貨物機導入と機体改修に36億ディルハム(1140億円)を投資する計画を発表した。2022年にボーイング777F型機を新たに2機導入するとともに、23年から2024年にかけてボーイング777-300ER型旅客機4機を貨物機に改修する。

中東や欧州・アフリカの国際ハブ空港としての地位を確立しているドバイ国際空港(アラブ首長国連邦)を拠点に航空貨物輸送を展開するエミレーツグループは、旅客輸送とともに貨物輸送を成長の柱と位置付け、新型コロナウイルス禍からの経済回復新興国の経済成長を見据えて攻勢に出る。

エミレーツスカイカーゴは、貨物輸送に最適な機材として、ボーイング777型機を選定。優れた航続距離と積載能力により、時間や温度に敏感な貨物を出発地から目的地まで迅速かつ効率的に輸送できる機能と実績を評価した。

(出所:エミレーツスカイカーゴ)

エミレーツ航空・グループ会長兼最高責任者シェイク・アハメッド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム殿下は「ワイドボディ機の輸送力、広大なグローバルネットワーク、世界各地へのハブとなるドバイにある高度なインフラを通じて、世界中の顧客や消費者に必需品を提供する重要な役割を担う。今回の投資は、世界最大級の航空貨物輸送会社としての将来の成長と地位に対する自信の表れだ」と自信を見せる。

世界の航空貨物ネットワークに日本は積極的に関与していくべきだ

エミレーツスカイカーゴが、世界の航空貨物業界に衝撃をもたらしている。1140億円相当を投じて貨物機を購入・改修することで、輸送能力を増強する。貨物輸送の増加を見据えて先手を打った格好だ。日本の航空物流業界も、全世界に影響力を誇示するエミレーツグループとの連携を模索するなど、グローバルの視点で貨物輸送ビジネスのチャンスを逃さずつかみ取ってほしい。

エミレーツスカイカーゴが24年までに貨物機の増備に動く狙いは、コロナ禍の収束と新興国の経済成長に伴う物量増への対応だ。コロナ禍の収束による経済停滞からの回復は、すでに世界の大きなうねりとして多様な場面で影響をもたらし始めている。海上コンテナ不足による海運の混乱はその象徴だ。

(イメージ)

こうした国際貨物をめぐる動きは、今後もさらに広がることは間違いなさそうだ。世界の国際ハブ空港、特に新興国を背後に抱えるドバイやバンコクなどでは、今後の取り扱い貨物量の急増は容易に想像できる。近いところでは、韓国の仁川がその例と言えるだろう。

こうした世界のダイナミックな航空貨物輸送網の構築が進むなかで、どうも日本の存在感が薄い。高額な空港使用料など運用面も問題もあるのだろうが、決定的なのは実効的な国際ハブ機能を打ち出せていないことだろう。東アジアと北米、ロシアを結ぶ地理的位置にあるはずの日本が、国際貨物ハブの役割を演じることができないのは、実にもったいない。世界トップクラスの完成度の物流品質を持つにもかかわらずだ。

ここは、エミレーツグループのような「巨象」との連携を模索するなどして、国際貨物のネットワークに入ることが現実的ではないだろうか。アフターコロナを見据えた今こそ、官民で足並みを揃えた中長期的な戦略が必要な局面だ。(編集部・清水直樹)