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板橋トラックターミナルの全体再開発を計画する日本自動車ターミナル

南側に約5万m2の物流施設用地の創出が可能に

2021年12月22日 (水)

(イメージ)

話題埼玉県と境を成す荒川を間近に臨む、東京都板橋区高島平。都営地下鉄三田線の終点・西高島平駅を北側に抜けると、大型トラックが整然と並ぶ広大な敷地が目に飛び込んでくる。時間を問わず入場するトラックから手際よくバースに降ろされた大小さまざまな姿の荷物は、中型・小型トラックなどに載せ替えられて企業や店舗、個人宅などへの配達に出かけていく。

板橋トラックターミナル。東京都や日本政策投資銀行、物流企業などが出資する日本自動車ターミナル(本社:東京都千代田区)が1970年に供用を開始した、長距離用の路線トラックと配送用トラックの積み替えや一時的な荷物保管を行う拠点だ。東京都内には板橋のほかに京浜(大田区)、足立(足立区)、葛西(江戸川区)の3か所に公共トラックターミナルを設置し、東京と地方を結ぶ都市間輸送の結節点としての機能を果たしている。

そんな公共トラックターミナルの一角を成す板橋トラックターミナルで、ある計画が進行しているのをご存知だろうか。板橋トラックターミナルで進む二層式バース専用施設の建設工事は、その計画を見据えたものだ。その計画について話を聞くため、日本自動車ターミナル本社を訪ねた。

「延べ約15万平方メートル」の衝撃

▲板橋トラックターミナルの全体再開発について語る、経営戦略室副室長・小松智行さん

「板橋トラックターミナルで進めている計画、それはトラックターミナルの全体再開発です」。こう切り出すのは、日本自動車ターミナル経営管理本部経営戦略室の小松智行副室長だ。

計画の概要はこうだ。ターミナルに並ぶ南北4棟ずつのバース施設のうち、北側に二層式バース施設を2棟建設することでバース施設を北側に集約し、南側に約5万平方メートルにも及ぶ物流施設の開発用地を創出する。具体的なスケジュールは未定だが、二層式バース施設の整備が終了する2025年度以降を見据え、基本計画を策定する予定だ。敷地を最大限に活用すれば容積率は300%なので、延床面積約15万平方メートルと東京都内では最大級の物流施設用地の確保が可能となるわけだ。

なぜトラックターミナルの全体再開発なのか。「この計画は、板橋トラックターミナルの老朽化対応が端緒になっています」(小松さん)。高度成長期に開業した板橋トラックターミナルも、求められる機能は大きく様変わりしていた。幹線輸送と近距離輸送の結節点という役割は変わらないものの、人口減少時代を迎えて長距離輸送の荷物は減少傾向が続いている。さらに、3PLという新しい輸送形態が広がるなかで、東京23区内の「一等地」という圧倒的に優位な立地のさらなる有効活用が求められている。

(出所:日本自動車ターミナル)

「土地の高度利用を推進し、経営基盤の強化を図ることが、公共トラックターミナルの機能維持という日本自動車ターミナルのレーゾンデートル(存在理由)につながると考えている」(小松さん)

「京浜」の前例は通用するか

日本自動車ターミナルは、板橋トラックターミナルで創出される約5万平方メートルにも及ぶ物流施設用地の開発に向けて、具体的な仕様の検討を始めている。マルチテナント型(複数のテナントに対して賃貸するタイプ)かBTS型(入居者の要望に応じてオーダーメイドで建設され賃貸されるタイプ)か。あるいは複数施設の開発か。さらにランプウェイはどうするのか。決定する必要がある事柄は山積しているが、現在は「物流業界の動向も見据えながら決めていく」(日本自動車ターミナル経営管理本部経営戦略室の明智禎史次長)段階だ。

▲「物流施設用地の開発は、物流業界の動向を見据えながら」と語る経営戦略室次長・明智禎史さん

日本自動車ターミナルは、これまでも物流施設の開発を行ってきた。なかでも物流業界で話題となったのが、18年7月に完成した京浜トラックターミナル内の「JMT京浜ダイナベース」だ。東京湾岸エリアで延床面積約9万7000平方メートルの大規模施設は完成を待たずに契約済みとなった。とはいえ、今回の事例は立地条件も異なるうえに新型コロナウイルスによる自粛なども影響し、物流業界を取り巻く環境は激変している。消費スタイルの変革が加速するなかで、もはやJMT京浜ダイナベースの成功体験だけでは、新たな物流施設の成功にはつながらないという危機感がある。

▲東京ベイエリアの大規模物流施設「JMT京浜ダイナベース」

ブランド構築で荷主企業へ訴求力高める

こうした動きを受けて、日本自動車ターミナルでは「ブランドイメージの構築に向けた取り組みを進めています。物流施設開発に必要な荷主企業のニーズ探索にもつなげたいと考えています」(小松さん)。これまでのトラックターミナル運営だけではない、新たな戦略が求められている。

一等地を抱えるが故に、その有効利用策が強く求められる日本自動車ターミナル。激変する物流業界の動きを見据えながら、いかに柔軟な発想で最適解を導くことができるか。「トラックターミナルの運営を担ってきた豊富な経験や知見をフル活用しながら、新しいトレンドも逃がさず、物流業界に貢献できる施設にしなければならないと考えています」(明智さん)。

こうした両にらみの戦略が、新しい物流スタイルを生み出していく。板橋トラックターミナルがそのフロンティアの地になれるか、目が離せない。

板橋トラックターミナル概要
所在地:東京都板橋区高島平6-1-1
敷地面積:11万5828平方メートル
貨物取扱能力:約5250トン/日(大型トラック520台分)
供用開始年月:1970年10月
管理棟:管理事務所・会議室・防災センター
荷扱場:1・2・5~8号棟
地下配送センター:1・5~8号棟(地下配送センター)
その他施設:給油所(CNGスタンド併設)・洗車場
アクセス:首都高速池袋線「高島平IC」から1.8キロ/都営地下鉄三田線「西高島平駅」から徒歩1分

■物流施設特集 ‐東京近郊(内陸)編‐