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BTSにも「変幻自在」、2021年12月着工のマルチテナント型物流施設

関東の中央で進む、プロロジス「古河プロジェクト」

2021年12月22日 (水)

(イメージ)

話題関東平野のほぼ中央に位置する、茨城県西部の古河市。明治から戦後まで経済を支えた製糸業はすっかり衰退し、食品製造業を中心とした工業都市として生まれ変わった。かつての日光街道の宿場町は、今や複数の工業団地を抱える、北関東を代表する主要都市に発展している。

こうした工業団地のひとつ「北利根工業団地」の南西端に、17万6000平方メートルの広大な敷地が広がる。この一角に、2023年3月には延床面積12万平方メートルを超える巨大な物流倉庫がその威容を横たえることになるとは、にわかに信じがたい話だ。

「プロロジスパーク古河4」。多くの大型トラックが走り回り、首都圏から東北・信越地方へと次々と荷物の輸配送が繰り広げられる、首都圏でも有数のダイナミックな物流拠点が誕生するのだ。

BTS型から一転、マルチ型で開発へ

米国サンフランシスコに本社を置く物流特化型不動産会社であるプロロジス。物流プロバイダーとしては日本市場をけん引してきた存在として知られる。1999年に日本での事業を開始し、本格的に国内市場に参入した。先進的物流施設は「プロロジスパーク」のブランドで展開。今回の古河市の物件もこのブランドシリーズのラインアップに加わることになる。

プロロジスが古河市で物流施設開発プロジェクト「古河プロジェクト」をスタートしたのは2013年。すでにBTS型(入居者の要望に応じてオーダーメイドで建設され賃貸されるタイプ)の物流施設3棟が完成している。ところが、4棟目となるプロロジスパーク古河4は、当初のBTS型から一転、マルチテナント型(複数の企業に対して賃貸するタイプ)として建設することに決定した。

▲プロロジス「古河プロジェクト」の俯瞰イメージ。手前の大型施設が「プロロジスパーク古河4」だ

異色の経過をたどったのはなぜなのか。その理由を探ることで、プロロジス古河4を含めた古河プロジェクトの持つ差別化ポイントが浮き上がってくる。

▲プロロジス開発部の小山啓之さん

「古河プロジェクトの3つの強み、そのキーワードは『関東のど真ん中』『柔軟性』『従業員確保』です」。プロロジス開発部の小山啓之さんだ。そのうちの「柔軟性」に、このたび着工するプロロジスパーク古河4の存在が大きく関わっているという。早速、これら3つの強みに迫ってみた。

「関東の中央」から全方位へ

古河市が関東平野の中央に位置するのは、すでに説明した通りだ。ただし、ここでの「中央」とは「首都圏における道路網の中心」であるとの説明がより正確だろう。

とはいえ、それは最近の話。かつて、古河市は東北自動車道が比較的近くを通っているものの道路アクセスは決して良好とはいえず、物流拠点としては不向きなエリアだった。そんな場所を「関東の中央」に変えたのは、「新4号国道」と「首都圏中央連絡自動車道」(圏央道)だった。

▲「関東のど真ん中」に位置する古河市は、高速道路や主要国道を経由して湾岸エリアを含めた首都圏各地にアクセスしやすい

古河市の新4号国道は1987年までに開通。北利根工業団地のすぐ近くを通る幹線道路はこれだ。そこに決定的なアクセス向上をもたらしたのが、2015年に古河市近辺の区間が開通した圏央道だった。「圏央道の開業は決定していた段階で、古河プロジェクトは始まりました。とはいえ、圏央道の効果は正直なところ、未知数でした」と小山さんは振り返る。

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そんな心配も、今となっては杞憂だったようだ。圏央道は東北道だけでなく関越道など主要高速道路と結節。古河市からの広域アクセスが飛躍的に高まり、物流拠点としてのポテンシャルも大きく向上することとなった。古河市は、関東の中心として首都圏へ全方位でアクセスできる「物流適地」の地位を獲得したのだ。

「新4号国道の機能強化も見逃せません。埼玉県内の区間で「東埼玉道路」と接続することで、東京外郭環状自動車道」(外環道)と結ばれ、さらに東京近郊エリアへのアクセスはよりいっそう向上します」(小山さん)

マルチ型なのにBTS型も可能な「柔軟性」

ここまで交通アクセスの観点から古河プロジェクトの強みを見てきた。では、2つ目の強み「柔軟性」とは何か。プロロジスパーク古河4に密接に関係する、注目のテーマだ。

「プロロジスパーク古河4は、マルチテナント型として開発します。しかし、顧客ニーズに対応して『BTS型』としても活用できる仕様とするのが特徴なのです」

小山さんの説明はこうだ。プロロジスパーク古河4は、交通利便性の向上などから、当初計画を変更し19年にマルチテナント型として開発することが決定したのだが、同じ工業団地にはすでに完成したBTS型物流施設が3棟ある。さらには、残りの敷地に3棟をBTS型で開発する計画もあるのだ。つまり、古河プロジェクトを構成する7棟のうち6棟がBTS型物流施設ということになる。

■既存のBTS型施設

物流施設開発で、同じ敷地内にBTS型とマルチテナント型が併存するケースは珍しい。さらに、「プロロジスパーク古河はBTS型だ」との認知も一定程度広がっている現状も踏まえて、どちらでも使える仕様としたのが特徴というわけだ。

「マルチテナント型のプロロジスパーク古河4の完成後に残りのBTS型3棟が着工することになります。その間にBTS型を希望するお客様には、一時的にプロロジスパーク古河4に入ってもらうこともできます。フレキシブルな対応で、お客様の物流ニーズに対応するというわけです」(小山さん)

それを象徴するプロロジスパーク古河4の機能が、ダブルスロープと2階の両面バースだ。施設の2方向にエントリールートを設けることで、あたかもBTS型のように活用できる仕様とした。いわば、2つの物流施設を組み合わせたイメージだ。片方をBTS型として活用し、残りをマルチテナント型として複数の顧客に入居してもらう。まさにフレキシブルな機能だ。

BTS型ニーズをがっちりとつかみながら、マルチテナント型仕様で複数の入居企業を呼び込む。実にしたたかな戦略ではないか。

マイカー通勤者「囲い込み作戦」

最後の3つ目の強みである「従業員確保」。小山さんは、古河プロジェクトそのものがマイカー通勤を想定した開発だという。自家用車で30分圏内となると、JR東北(宇都宮)線沿線の居住者がターゲットになる。北は栃木県小山市からの通勤も可能なのである。

考えてみれば当然のことではないか。古河市周辺といえば、まさに典型的なクルマ社会の土地柄。ところが、小山さんはクルマ社会であることだけが理由ではないという。

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「古河市は、隣接する埼玉県加須市や久喜市と異なり、先進的な大型物流施設がほとんど存在しない地域です。その点が、マイカー通勤の従業員を確保できる強みになると考えています」。加須市や久喜市では、東北道のインターチェンジに至近である立地条件を背景に、物流施設の開発が急ピッチで進んだ。一方で、古河市の工業団地周辺は、至近の高速道路インターチェンジがないため、物流施設の開発がほとんど進まなかったのだ。

古河プロジェクトが着目したのは、まさにそこだった。「加須市や久喜市では、物流施設間での従業員確保を巡る競争が起きていることがわかりました。古河市からもマイカーで埼玉へ働きに出向いていたわけです。こうした従業員をがっちりとプロロジスパーク古河4で確保できると考えているのです」(小山さん)。プロロジスパーク古河4では、大型と乗用車計409台収容の駐車場を整備した。

最高水準の有効高で保管効率確保

プロロジスパーク古河4は、化粧品やアルコール類などの保管も可能な小型倉庫を活用できるのも利点だ。さらに、施設内でも保管効率を高めた機能を整備する。保管効率を重視したメゾネット形式を採用。梁下有効高は6.3メートルと業界でも最高水準を確保。さらに広い床面積で各種ロボットを導入しやすくしているのも特徴だ。ワンフロア3万平方メートルはまさに「圧巻」だ。

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このスケール感であれば、近年浸透しつつあるオートストアやマジックラックがさらに効率よく活用できる。関東の中心に位置している点と合わせて、大量保管型の物流センターには理想的な施設と言えるだろう。

「関東の中央」で着々と進むプロロジスの古河プロジェクト。立地の優位性に依存せず、柔軟な発想で顧客ニーズをつかむプロジェクト運営手法は、「新しい生活様式」を見据えた物流施設のあるべき姿を提示している。古河プロジェクトの機能を最大化する仕掛けであるプロロジスパーク古河4は、2021年12月にいよいよ鍬入れを迎える。

プロロジスパーク古河4の概要
所在地:茨城県古河市北利根15
敷地面積:6万8123平方メートル
延床面積:12万3266平方メートル
交通:首都圏中央連絡自動車道「五霞インターチェンジ」6キロ

■物流施設特集 ‐東京近郊(内陸)編‐