ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

伊藤忠、食品ロス減と物流効率化へシノプスと提携

2022年1月20日 (木)

フード伊藤忠商事は20日、需要予測型の自動発注システムを展開するシノプス(大阪市北区)と共同で、食品ロス削減と物流の効率化を実現する食品デマンド・チェーン・マネジメント構築に向けた業務提携を結んだと発表した。両社は今回の業務提携を契機に協業を加速させ、食品バリューチェーンの最適化をともに推進する。

農林水産省の推計によると2019年度の国内の食品ロス量は年570万トンで、このうち商品の製造、流通過程を含む食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は309万トンと半数以上を占める。食品流通業界は食品ロス削減への対応とともに、労働力不足や高齢化、物流コストの上昇といった課題が顕在化しているなかで、持続可能な社会の実現に向けたトラック輸送の生産性向上と物流業務の効率化を通じたホワイト物流の推進も求められている。

シノプスは、小売の販売データに基づいた需要予測値をもとに、自動発注・在庫最適化ソリューションを展開するITソリューション企業。1980年代から需要予測・自動発注の分野に着目し、開発したシステムは特許も取得している。

▲デマンド・チェーン・マネジメントのイメージ(出所:伊藤忠商事)

伊藤忠商事は、中期経営計画の基本方針として「SDGs」への貢献と取組強化を掲げており、マーケットインの視点による川下起点のバリューチェーンの変革を推進。今回の協業をテコに、シノプスの需要予測・自動発注におけるノウハウと伊藤忠商事の多様なネットワークを組み合わせることで、小売業の需要情報を卸・メーカーに対して一気通貫で連携させる食品のデマンド・チェーン・マネジメントを構築していく。

将来的には両社での合弁会社設立も視野に、食品バリューチェーン全体の需給最適化を実現するとともに、食品ロスの削減やホワイト物流推進運動への貢献を目指す。

SDGsへの対応策として食品ロスに着眼した伊藤忠商事のセンスは評価されるべきだ

伊藤忠商事が、食品ロス削減にビジネスチャンスを見出し、新規ビジネス創出に乗り出すことになった。それに必要な取り組みである物流の効率化とともに、本格的な事業化を推進する意思を明確化した格好だ。

企業経営に不可欠なトレンドとして、目が離せないのがSDGsへの対応だ。もはや、社会で認められた企業体であるか否かを判断するための分水嶺として、SDGsへの本気度が試されている感さえある。こうした状況で、伊藤忠商事は、社会的だけでなく倫理的にも課題となっている食品ロスに着目した。

もっとも、伊藤忠商事は、マーケットインの視点による川下起点のバリューチェーンの変革を推進する取り組みを通して、食品領域におけるデマンド・チェーン・マネジメントを構築することで、この分野における支配的なビジネス機会の獲得につなげたい思惑もあるのだろう。いずれにせよ、こうした社会課題に企業が真正面から取り組む姿勢は、素直に評価すべきであるのは間違いないだろう。(編集部・清水直樹)