ロジスティクス物流業の人手不足倒産が2025年に52件と過去最多を記録した。帳簿上は黒字でも資金が回らず倒れる──そんな「黒字倒産」の連鎖が止まらないなか、26年春から夏にかけて、業界の構造を一変させる制度が相次いで動き出す。(編集長・赤澤裕介)
転嫁率の「二極化」が映す物流の断面
運賃転嫁の進捗を示す数字が2つある。いずれも26年2月時点の調査だが、意味が大きく異なる。
東京商工リサーチ(東京都千代田区)が中小企業5127社を対象に実施したアンケート(2月20日発表)では、道路貨物運送業の85.8%が「一部または十分に転嫁できた」と回答した。全中小企業平均の57.1%を大きく上回る。一方、中小企業庁の価格交渉促進月間フォローアップ調査(25年11月発表)では、トラック運送の転嫁率は36.5%。全業種平均53.5%を下回り、最下位クラスにとどまる。
前者は運送事業者自身が「転嫁できたか」を答えた数字。後者は発注側(荷主)の視点も含めた調査で、実際に価格に反映された割合を測っている。つまり、大手荷主との取引では転嫁が進んでいるが、中小荷主との取引では運賃据え置きの圧力が残る。この落差こそが、今の物流業界の断面だ。
大手荷主が転嫁に応じ始めた背景には、運送会社の倒産による供給途絶への危機感がある。帝国データバンク(港区)の調査(26年1月8日発表)によると、25年の人手不足倒産は全産業で427件、うち物流業は52件でいずれも過去最多。倒産企業の77%が従業員10人未満の小規模事業者で、ドライバー1人の退職が致命傷になる構造が浮き彫りになった。
この状況に対し、26年春から夏にかけて3つの制度が同時に動く。1月に施行された取適法(中小受託取引適正化法)は、発荷主が物品の運送を委託する「特定運送委託」を新たに規制対象に加え、買いたたきや協議拒否を明確な違反とした。4月には改正物流効率化法の特定事業者義務化が始まり、取扱貨物重量9万トン以上の荷主(国土交通省試算で上位3200社)にCLO(物流統括管理者)選任や中長期計画の提出が義務付けられる。命令違反には100万円以下の罰金だ。
そして最大の焦点が、適正原価の告示だ。国交省が実施した適正原価アンケート(回答義務あり)の締め切りは2月27日だったが、3月1日時点で回答率の公式発表はない。全日本トラック協会や地方協会が「回答率が低い」と周知を強化している状況だ。告示後は「適正原価未満の運賃強要」が法令上の違反原因行為となる。
賃金も動いている。帝国データバンクの調査では運輸・倉庫業の69.1%が26年度の賃金改善を見込み、東京商工リサーチの調査では運輸業の93.4%が賃上げ実施予定と回答した。大型ドライバーの平均年収は492万円(厚生労働省・令和6年賃金構造基本統計調査)に達し、月収40万円台の求人も珍しくない。だが、この賃上げ原資を確保できるのは転嫁に成功した事業者に限られる。転嫁できない中小零細は、賃上げ競争に敗れてドライバーが流出し、稼働率が下がり、黒字のまま倒れる。
春闘の集中回答日は3月18日。適正原価の告示時期、回答率の公表、特定荷主の届出状況──今後数か月の動きが、物流業界の構造を決定的に変える。
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