ロジスティクスJR貨物は3月14日、2009年以来17年ぶりとなる通常列車の輸送力増強を柱とするダイヤ改正を実施する。トラックドライバー不足が深刻化するなか、モーダルシフトの受け皿を大幅に広げる狙いだ。改正後の全体輸送力は12フィートコンテナ換算で1日あたり2万1045個となり、改正前の2万650個から395個増える。EF210形機関車6両、荷役機械73台、コンテナ4000個を新たに投入する。大型31フィートコンテナの取り扱い区間も拡大し、宇都宮-広島、名古屋-熊本、福岡-金沢で大型トラック並みサイズの輸送が可能になる。(編集長・赤澤裕介)
東京-大阪、1日135個の大幅増枠
最大の目玉は東京-大阪間の増強だ。1日あたりの輸送力は340個から475個へ135個増える。新設の5063列車(東京19時14分発、大阪5時46分着)に加え、65列車は所要時間を18分短縮し、東京22時57分発、大阪6時45分着とする。関西圏での午前中配達に対応する体制を整えた。物流の大動脈である東京-大阪間で4割近い増枠を実現したことで、トラックから鉄道への切り替えを検討してきた荷主にとって、具体的な受け皿が広がった形だ。

(クリックで拡大、出所:JR貨物)
名古屋-福岡間も120個から150個へ30個増やす。名古屋115個、岐阜35個に振り分け、中部圏からの九州向け貨物を取り込む。自動車部品の生産拠点が集積する中部圏では、完成品や部品の九州方面への輸送でトラック手配が難航するケースが増えており、鉄道シフトへの関心が高まっていた。
仙台発着は東京方面で20個増、名古屋方面で15個増、大阪方面で30個増と各方面で底上げした。3074列車、3075列車の新設・再編で、東北発の長距離貨物が鉄道に乗りやすくなる。秋田といった内陸部からの貨物も、仙台経由で全国主要都市へ運びやすくなる。
このほか新潟-大阪間に需要期対応の臨時列車(90-100個)を設定し、静岡-福岡間でも10個増やした。全体の輸送営業キロは1日あたり800キロメートル伸び、17万5800キロメートルとなる。EH500形機関車の上越線運用拡大でBCP(事業継続計画)も強化する。日本海側ルートの確保は、大規模災害時に太平洋側の幹線が不通になった場合の代替輸送手段として重要な意味を持つ。
改正前の輸送実績は堅調だ。25年度第3四半期累計(4-12月)のコンテナ輸送量は前年同期比4.3%増で推移している。平日の積載率は79.2%とほぼ満杯の状態が続く一方、休日は54.9%にとどまり余力がある。JR貨物は中期経営計画2026でコンテナ輸送量をコロナ前水準に回復させ、鉄道事業の黒字化を目指す方針を示している。
シフトが進む品目は自動車部品、積み合わせ貨物、紙パルプが中心だ。24年4月に施行されたトラックドライバーの時間外労働上限規制(いわゆる2024年問題)を機に、長距離輸送を鉄道に切り替える動きが加速している。特に東京-大阪間は1日で往復するドライバーの運行が事実上困難になり、中継輸送を組むとコストが増す。鉄道なら夜間に運行し翌朝に届くため、リードタイムでもトラックと遜色がなくなりつつある。
31フィートコンテナの拡大も重要なポイントだ。大型トラック(10トン車)の荷台とほぼ同じサイズのため、荷姿を変えずにそのまま鉄道に載せ替えられる。従来の12フィートコンテナでは積み替えの手間がかかり、鉄道シフトに踏み切れなかった荷主にとって、31フィートは心理的なハードルを大きく下げる。宇都宮-広島、名古屋-熊本、福岡-金沢といった新規取り扱い区間の設定は、地方間の長距離輸送にも31フィートの選択肢を広げるものだ。東京-大阪間の475個枠がフル活用されれば、モーダルシフトは一段と進む展開が見込まれる。CO2排出量の削減を求める荷主企業の姿勢も追い風だ。鉄道貨物のCO2排出量はトラック輸送の11分の1とされ、脱炭素の観点からもシフトの意義は大きい。
一方で需要の急増に供給が追いついていない現実もある。1-2月にかけて、コンテナ不足や空コンテナの回送遅れを訴える声が現場から相次いだ。モーダルシフトが進むほどコンテナの需給はひっ迫し、特に北海道や東北といった遠隔地では空コンテナの回送に時間がかかるため影響が大きい。ある北海道の荷主は「1月28日出荷分がいまだ発駅から出られない。次の荷物は空コンテナが本州から届かず集荷できない。ここまでひどいのは初めてだ」と窮状を明かす。中小荷主や利用運送事業者からも「東京-大阪の新枠がすぐ埋まる」「予約が取りにくい」との声が上がっている。
平日積載率79.2%という数字は、ピーク時間帯への集中を映し出している。特定の時間帯や曜日に予約が殺到する一方、休日や深夜帯には空きがあるという偏りが課題だ。荷主側が出荷日や時間帯を柔軟に調整できるかどうかが、枠確保のカギを握る。

JR貨物はコンテナ4000個の新製に加え、31フィートコンテナの拡大、往復実装化を進めるラウンドマッチングで対応を急ぐ。片道だけ荷物を積み、帰りは空で回送するという従来の非効率を解消し、コンテナの回転率を高める取り組みだ。コンテナ不足の背景には、モーダルシフト需要が供給を上回る構造的な問題に加え、機材の高騰や保守制約もある。インターネット予約システムIT-FRENS(アイティーフレンズ)のキャンセル待ち機能では、24年8-12月の期間で3万6447個の枠を取得した実績がある。キャンセル待ちを活用すれば空きが出た時点で通知を受けられるため、中小荷主にとっても有効な手段だ。ただし需要がモーダルシフトの供給を上回る「待ち」の状態は当面続く見通しで、機材の増備と保守体制の拡充が急務となっている。
改正後の輸送量と積載率がどう動くかが、次の焦点だ。荷主にとっては早めの枠予約と大型コンテナの活用、休日便の検討が現実的な対策になる。利用運送事業者(日本通運、ヤマト運輸など)経由であれば、コンテナ手配から集荷まで一括で任せられるため、鉄道貨物を初めて使う荷主でも始めやすい。
17年ぶりの増強で受け皿は広がった。あとは荷主がどれだけ使いこなせるか。3月14日の改正を機に、鉄道シフトを具体的に検討する価値はある。
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