ロジスティクスエージェント型AIが物流の現場に入り始めた。予測や提案にとどまっていた従来のAI(人工知能)と異なり、遅延の検知からルート変更、在庫調整まで自ら判断して動く。DHL(ドイツ)やフェデックス(米国)が相次いで実運用に踏み切り、人手不足に直面する日本の物流事業者にとっても無関係ではなくなっている。(編集長・赤澤裕介)

(出所:DHL)
DHLサプライチェーンは2025年11月、AIスタートアップのハッピーロボット(米国)との提携を発表した。AIエージェントが電話やメールで配送予約、ドライバーへの確認連絡、緊急の倉庫調整を自律的に処理する。DHLサプライチェーンのサリー・ミラーCIOによれば、18か月以上かけてユースケースを検証してきた。26年1月に米ラスベガスで開かれた世界最大級のテックイベント・CESでは、IT担当副社長のジェイソン・パウロウスキー氏が、配送予約の電話業務が「数日から数時間に短縮された」と語っている。DHL公式ガイドはAIを「副操縦士」と位置づけ、交通渋滞や天候、港湾の遅延をリアルタイムで検知しルートを自動調整する構想を示した。
フェデックスも26年2月、初の「物流インテリジェンスレポート」を公開した。物流・サプライチェーンの管理職700人を対象にした調査で、97%が「貨物の可視化だけでは競争力を維持できない」と回答。一方で自社システムが将来に対応できると強く認めたのは43%にとどまった。同社デジタルポートフォリオ担当上級副社長のジェイソン・ブレナー氏は、分析やAI、運送事業者との連携による「物流インテリジェンス」で、事後対応から予測型の運用へ転換する必要性を指摘している。同月にはAIを搭載した追跡・返品管理ツールも発表し、配送例外への対応を自動化する方向を鮮明にした。
人手不足がAI導入を後押し
日本では24年4月のドライバー時間外労働の上限規制に続き、26年4月からは物流効率化法による荷主企業への義務化が始まる。人手不足と規制強化が同時に進むなか、AIによる業務の自動化は「検討段階」から「実装段階」に移りつつある。ヤマト運輸はAIによる配送業務量の予測と自動配車を導入済みで、ファミリーマートはAIを使った配送ルート最適化でルート数を1割削減した。佐川急便はAIの文字認識で伝票入力を自動化し、月8400時間の工数を削減している。
ただし課題は残る。ガートナー(米国)が25年後半に実施した調査では、サプライチェーンのリーダーの多くがエージェント型AIによるエントリーレベル職の減少を見込んでいる。別の分析では、現在進行中のエージェントAIプロジェクトの4割超が27年までにコストや統合の難しさから頓挫すると予測されている。AIの精度はデータの品質に左右されるため、まずは自社の物流データを整備し、小規模なパイロットから始めるのが現実的だ。人材面でも、AIを監督できるスキルを持つ人員の育成が急務になる。
DHLのパウロウスキー氏はCESで「AIエージェント同士がプラットフォームを超えて連携し始めたら、まったく新しい次元の調整が実現する」と述べた。現場の変化は始まったばかりだが、その速度は想定より速い。
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