ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

紅海・ホルムズ二正面危機、海上物流の選択肢狭まる

2026年3月1日 (日)

(イメージ)

国際2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃で、世界の海上物流が2つのチョークポイント(海上交通の要衝)を同時に失う事態が現実味を帯びてきた。ホルムズ海峡ではイラン革命防衛隊(IRGC)が通過禁止を放送し、紅海ではフーシ派が攻撃再開を宣言した。いずれも国際物流の大動脈にあたり、影響は世界のサプライチェーン全体に波及する。(編集長・赤澤裕介)

紅海の混乱は今に始まったものではない。2023年10月以降、フーシ派による商船攻撃が続き、100隻以上が被害を受けた。25年10月のイスラエル・ハマス停戦で攻撃は一時止まり、ことしに入ってAPモラー・マースク(デンマーク)など一部船社が紅海・スエズ運河への試験的な復帰を始めていた。しかし復帰は限定的で、スエズ運河の通過量は危機前の23年比で6割減(26年1月時点、BIMCO=ボルチック国際海運協議会調べ)。コンテナ船に限れば25年第4四半期で86%減と、正常化には程遠い状態が続いていた。

マースクは2月27日、紅海経由の一部サービスを再び喜望峰回りに戻すと発表した。理由は「紅海地域の予期せぬ制約による遅延リスク」で、これはイラン攻撃の前日にあたる。緊急割増料金(ECS)も3月15日出発分から20フィート・40フィートコンテナとも600ドルに倍増する。紅海が安定を取り戻す前から、船社は再び迂回を選ばざるを得ない状況にあった。

そこにホルムズ海峡の危機が加わった。IRGCの通過禁止放送を受け、既報の通り邦船各社がホルムズ回避に動いたほか、タンカーやLNG船の待機・Uターンが相次いでいる。紅海が「通れるかもしれないが危険」な状態だったのに対し、ホルムズは「通過自体が事実上止まった」段階に入った。

▲紅海危機とホルムズ危機の比較(クリックで拡大)

アジア‐欧州航路に15-20日の遅延も

2つの海峡が同時に機能不全に陥った場合、物流への影響は深刻になる。アジア‐欧州航路では喜望峰回りで15-20日の遅延が見込まれ、船社はスケジュール維持のために空白航海(寄港地を飛ばす措置)を増やす可能性が高い。

コスト面でも圧力が強まっている。紅海の一部復帰で下落傾向にあったコンテナ運賃は反転上昇の兆しがあり、タンカー市場では超大型原油船(VLCC)の日額運賃が20万ドルを超えたとの報道がある。戦争リスク保険料は数倍に急騰し、紅海・ホルムズを通過する船舶は保険の取得自体が難しくなっている。

▲コスト面の主な変化(クリックで拡大)

マースクは26年通期の業績見通しを15億ドルの損失から10億ドルの利益まで、きわめて広い幅で設定している。世界最大級の船社ですら先行きを見通せない不透明さが、現在の海運市場を象徴している。

この状況が長引けば、エネルギー価格の上昇を通じて燃料費・輸送コストが連鎖的に上がり、荷主企業のコスト負担は一段と重くなる。喜望峰回りが再びデフォルト化するなか、物流企業には代替ルートの確保、在庫水準の見直し、保険条件の再確認といった対応が急がれる。

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。