国際アジア-米国航路(トランスパシフィック)の2026年サービス契約交渉が膠着している。スポット運賃は旧正月後の7週連続下落が続き、ドリューリー(英国)の世界コンテナ指数(WCI)は2月26日時点で40フィートコンテナあたり1899ドルまで沈んだ。上海-ロサンゼルスは2191ドル、上海-ニューヨークは2771ドル。船会社は空白航海(欠便)を急増させて運賃を下支えしようとしているが、荷主側はさらなる下落を見込んで契約締結を先送りしている。こうした膠着の最中、2月28日に米国・イスラエルがイランへの軍事攻撃を開始し、ホルムズ海峡の航行が事実上停止する事態に発展した。海運市場の前提が根底から揺らいでいる。(編集長・赤澤裕介)
契約交渉は例年にない遅れ

(イメージ)
太平洋航路の年間契約は通常、5月1日を発効日として3-4月に締結される。毎年3月に米カリフォルニア州ロングビーチで開かれるTPMカンファレンスが交渉の起点となり、大手小売が先行して契約を結ぶことで市場の目安が決まる。
26年はこの流れが止まっている。1月以降のスポット運賃は20%以上下落し、米西岸向けで1700-1800ドル台に落ち込んだ時期もあった。大量の新造船就航で供給が膨らむ一方、米国の輸入需要は鈍い。ロサンゼルス港の1月の取扱量は81万2000TEUと前年同月比12%減で、同港が「3年近くで最低の月間処理量」とした水準だった。
荷主はスポットがさらに下がると見て契約を急がず、船会社も運賃底打ちを待ちたい。双方が様子見を決め込んでいる状態だ。ゼネタ(ノルウェー)の船腹データベースでは、アジア-米西岸の投入船腹量は1月の119万TEUから2月126万TEU、3月には140万TEUに増える見通しで、船腹の余剰感はさらに強まる。
25年末に締結された年間契約は米西岸向けで1800-2400ドル、米東岸向けで2800-3600ドルだった。26年はこれを下回る水準で決着する可能性が高い。ゼネタは26年通年でスポット運賃が最大25%、長期契約運賃が最大10%下落すると予測している。
船会社は空白航海で対抗している。ドリューリー(英国)のキャンセル便トラッカーによると、3月初旬から4月上旬の5週間で703便中66便が欠便となる見通しだ。2月19日時点では翌週の太平洋航路だけで31便の欠便が発表されていたが、旧正月明けの工場再稼働に伴い2月26日時点では9便に減った。それでも運賃は下げ止まらず、供給管理の限界が見え始めている。
紅海の情勢変化も供給側に効いている。APモラー・マースク(デンマーク)は1月にスエズ運河経由のMECLサービスを再開し、2月にはジェミニ協力体制のME11サービスもスエズ経由に切り替えた。紅海復帰が進めば喜望峰回りで吸収されていた船腹が解放され、供給過剰に拍車がかかる。ゼネタの試算では紅海への大規模復帰でグローバルのコンテナ船腹量の6-8%が市場に戻り、運賃への下押し圧力はさらに強まる。ドリューリーも26年のグローバル運賃について大幅な下落を予測しており、スエズ復帰の規模とタイミングを「大きな変動要因の一つ」と位置づけている。
ところがマースクは2月27日、紅海で「予見できない制約」が生じたとして一部サービスを再び喜望峰回りに戻すと発表した。翌28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃で、この判断の背景が明らかになった。
ホルムズ海峡ではイラン海軍が商船にVHF(超短波)無線で航行禁止を通告し、タンカーやLNG船が引き返す事態に発展した。UKMTO(英国海事貿易運用センター)は「法的拘束力はない」としながらも注意を呼びかけた。船舶追跡データでは750隻以上の商船が海峡内に取り残されており、バーレーンでは港湾業務が停止した。
BIMCO(ボルチック国際海運協議会)は「イランは短期的にペルシャ湾への商船の進入を阻止できる能力がある」との認識を示した。ゼネタも「米・イスラエルの軍事行動とイランの報復により、コンテナ海運の紅海大規模復帰への期待は打ち砕かれた」と分析している。
ホルムズ海峡の混乱は原油・LNG(液化天然ガス)市場への影響が最も直接的だが、コンテナ海運も無関係ではない。紅海・バブエルマンデブ海峡でのフーシ派の攻撃再激化リスクがあり、これが現実化すればアジア-欧州航路の喜望峰回りが長期化し、太平洋航路にも船腹配置の連鎖的な影響が及ぶ。
太平洋航路の契約交渉は、TPM26の開幕(3月1-4日)とともに本格化する。だが交渉の前提条件はこの48時間で一変した。運賃のさらなる下落を前提に値下げ交渉を進めていた荷主は、地政学リスクによる急反転の可能性も織り込まなければならなくなった。ホルムズ情勢がどこまで拡大するか、フーシ派が攻撃を再開するか。この数週間の展開が26年の海上輸送コストを大きく左右する。
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