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敦賀市でスマート物流に向けたドローン配送を実証

2022年1月24日 (月)

▲食料品が入った箱を届けて飛び去るドローン(出所:セイノーHD)

国内セイノーホールディングス(HD)と福井県敦賀市、次世代ドローン研究開発型スタートアップのエアロネクスト(東京都渋谷区)、グループのNEXT DELIVERY(ネクストデリバリー、山梨県小菅村)の4者は、敦賀市愛発(あらち)地区で地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けたドローン配送の実証実験を実施した。

NEXT DELIVERYが24日発表した。この実証実験は、2021年11月にセイノーHDと敦賀市、エアロネクストの3者が、敦賀市の目指す水素・再生可能エネルギー・ゼロエミッション物流などの脱炭素化の取り組みによる、高齢化や過疎化といった地域課題の解決に向けて締結した包括連携協定に基づくもの。次世代高度技術の活用により新しい物流のビジネスモデルの構築を図るため、敦賀市の地理的特徴を考慮した「市街地・過疎地連結型ドローン物流」のモデルケースとするのが狙いだ。

セイノーHDとエアロネクストが開発し推進する、ドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流「SkyHub」(スカイハブ)の社会実装に向けて実施する。実証実験はNEXT DELIVERYが中心となって行った。

▲注文した食料品を受け取る様子(出所:セイノーHD)

今回の実証実験は、商業施設が集積する敦賀市市街地と過疎化が進行している愛発地区との「市街地・過疎地連結型ドローン物流」を想定。市街地から離れた愛発地域の住民の買物支援として、住民がSkyHubアプリで注文した地元スーパーの食料品の詰め合わせセットを、愛発地区公民館に置いた仮設のドローンデポから愛発地区の3か所の仮設ドローンスタンドまで、1.4キロから2.3キロの距離をドローンで届けた。

実証実験後は、来年度を目標に地上配送と将来のドローン配送を想定した買物代行サービスを開始する予定だ。今後も、敦賀市の課題や市民のニーズを抽出しながら、ドローンを含む次世代高度技術の活用による地域活性化に寄与していく。

実用化に近づいたドローン配送、これからはドローンで解決できる具体的な課題の抽出だ

ドローンを活用して地域活性化を図る取り組みが、各地で本格化してきた。セイノーHDやエアロネクストが敦賀市と連携して取り組む今回の実証実験は、ドローン配送と陸上輸送を組み合わせた点に意義があると捉えるべきだろう。ドローン物流の実用化においては、こうした「空」と「陸」を組み合わせた輸送スタイルが現実的だと考えるからだ。

今回の実証実験は、雪景色が広がる中で実行された。敦賀市の冬の定番とも言える天候下での実験が成功を収めたことで、より当地におけるドローンによる活性化策が現実味を増してきた。雪の場合は、いくら慣れた土地であると言えども陸上輸送が困難になる事例も少なくない。市街地が中央に位置し、放射状に山間地が広がる扇状地形も特徴だ。地域活性化の取り組みは、その土地の気候や地理的な特性に相応しい方法で展開されるのが、定着の度合いの観点からも理想だ。

▲雪が降る天候下での配送を成功させた(出所:セイノーHD)

その意味では、新スマート物流の構築というゴールを見据えた実証は、その実現に向けた手段としては結果を出せたことになる。今後は、こうした新しいインフラを活用しながら、愛発地区のような山間地の諸課題にソフト面で対応できるスキームを掘り下げていく必要がある。

ドローンを使うことで、実現できる住民サービスは何か。解決できなかった課題に対応できるテーマはないか。ドローン配送サービスが始まることで、新たな課題が生まれる可能性もある。実証の成功は、新たな課題解決への取り組みが始まるスタートラインでもあるのだ。(編集部・清水直樹)