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2時間ルール対応は入退場管理から始めよ

2026年2月12日 (木)

話題荷待ち・荷役時間の是正が制度として求められるなかで、物流現場では「滞在時間を把握する以前に、入退場の記録自体が曖昧」という課題が長く放置されてきた。特定荷主に課される2時間以内ルールへの対応も、受付簿への記帳や守衛の目視に依存した運用では、説明責任を果たせるエビデンスになりにくい。

こうした課題意識を背景に、古野電気が提供する車両入退場管理サービス「FLOWVIS」(フロービス)への引き合いが増えているという。ユーザーはどのような点にメリットを感じ、導入に踏み切ったのかを取材した。

滞在時間以前に、入退場が取れていない現実

同社の西村正也氏は、FLOWVISの立ち位置をこう説明する。「荷待ち・荷役の議論は、どうしても“中の作業”に目が向きがち。ただ、その前提として、入退場が正確に取れていないケースが非常に多い。まずはそこを押さえないと、制度対応も改善も始まらないと考えている」

▲古野電気システム機器事業部 事業企画部 企画マーケティング課 担当課長 物流DXサービス事業責任者の西村正也氏

FLOWVISは、ETCと車番認識を併用して車両を自動検知し、入退場時刻と構内滞在時間を記録する仕組みだ。ドライバー操作を前提とせず、受付での記帳やタブレット入力も不要になる。記録されたデータは一覧・集計でき、本社報告や改善検討にそのまま使える。西村氏は「入退場をトラックドライバーに申告させるようにしても、退場の際に申告をしないで出て行ってしまうというケースもある」と指摘。「これでは記録の体をなしていないし、ドライバーに負荷をかけずに入退場記録を自動的に取ることが重要」と語る。

記帳と目視に頼る運用が抱える構造的な限界

昔ながらの工場では入り口の守衛室で入場の記帳をし、退場する際にも退場時間を記帳するといった入退場管理が行われていることが少なくない。しかしこれでは、トラックドライバーがいちいち運転席から乗り降りする必要がある。また、車両が集中すれば、記帳の間にほかのトラックが列をなしてしまい、公道でトラックが渋滞することも問題となるだけでなく、荷待ちの時間がいたずらに長くなってしまうことになる。ドライバーにとってよいことは何もない運用をいつまでも続けていれば、2時間ルールへの対応や荷主責任が問われる局面で説明がつかず、制度対応の遅れがそのまま経営リスクとして跳ね返ってくる。さらには、人手不足が深刻化する中で「敬遠される荷主」になりかねず、結果として自社の物流そのものが立ち行かなくなるリスクを高めることになる。

▲FLOWVIS(フロービス)設置イメージ(出所:古野電気)

荷主企業には2024年問題を背景に、「車両入退場記録の取得」「滞在時間の可視化」「2時間以内運用の徹底」が一体で求められるようになった。西村氏は「今後の法対応や行政対応を考えると、正確な記録を“自動で”残せること自体がリスクヘッジになる」と指摘する。

制度対応と並行して、工場特有のセキュリティ課題への対応も導入動機になっている。登録車両のみを通行させ、未登録車両は停止させることで、不法侵入や誤進入を防ぐ。守衛業務は全件対応から例外対応へと切り替わり、省人化や無人化につながる。「工場では、荷待ち対策と同時に“守衛をどうするか”が必ず課題になる。FLOWVISはその両立を前提に設計している」と西村氏は話す。

濃霧でも雪でも──悪天候でも確実に記録を取れるのがETCの強み

ETCの大きな長所は、高速道路で実際に活用されていることからもわかる認識精度の高さと、悪天候下での確実な動作だ。雨、霧、雪などの気象条件下では車番認識ではそもそもナンバープレート自体が読み取れないことがある。また、悪天候でなくとも西日で車番認証が行えないというケースもある。西村氏は「雨や雪、西日など、自然条件でカメラが弱くなる場面は少なくない。ETCなら気候や時間帯に左右されずに車両を確認できる」と強調する。

▲FLOWVIS管理画面(出所:古野電気)

FLOWVISがETCを中核技術として採用しているのも、さまざまな天候や日照などの現場条件を前提に、制度対応に耐えうる“確実性”を重視しているからにほかならない。

導入企業で起きている変化

FLOWVIS導入企業で最も分かりやすく表れているのが、守衛業務の省人化だ。人件費高騰や採用難を背景に、工場では守衛の確保自体が課題になっている。登録車両は自動通過させ、未登録車両のみ対応する運用に切り替えることで、業務負担は大きく軽減される。西村氏は「守衛コストは近年、年間800万-900万円/人が一つの目安。FLOWVIS導入の直接的な投資回収だけでも、早ければ1年程度で完了するケースもある」と話す。採用難の折から、守衛の欠員補充が必要となればまた求人のためのコストやマンパワーがかかることもあり、あらかじめ省人化しておくことの意味は大きい。手書きで入退場履歴の分析工数の削減など、入退場管理をめぐる業務改善への間接的な効果も見込めそうだ。

▲入退場管理、バース・トラックの予約システムの中では、ETC認識の入退場管理システムが、自動化・省人化の効果が最も高い(出所:古野電気)

東洋アルミニウム(千葉製造所)での導入事例も示唆に富んでいる。同所では人件費の高騰や人材確保難を背景に、従来2人体制で行っていた守衛業務の見直しが急務となっていた。そこで、車両での来場が大半であることに着目し、ETC認証と車番認識を併用できるFLOWVISを導入。その結果、段階的な省人化を経て、現在は守衛業務の完全無人化を実現した。登録車両はスムーズに自動通過でき、入退場履歴も自動で記録されるため、セキュリティを強化しながら大幅なコスト削減と業務効率化に成功した。AIカメラとの連携など、現場の運用に即したさらなる高度化も進められているという。

とあるメーカーでは、入退場の自動記録によって滞在時間を可視化し、これまで感覚的にしか把握できていなかった構内滞在の実態をデータで捉えられるようになった。また他の工場でも同様に、入退場記録をエビデンスとして活用する動きが進んでいる。「まず“事実として何分滞在しているのか”を示せるようになることが重要。そこから初めて改善の議論ができる」と西村氏は述べる。

こうした事例に共通しているのは、FLOWVISが単なる荷待ち対策のツールではなく、経営企画、総務、現場といった複数の部門が抱える課題を同時に解きほぐす基盤として機能している点だ。

▲FLOWVIS本体データベース(青枠)と同一ネットワーク上にあるPCからFLOWVIS LITEアプリケーションを通じて、遠隔地からでも操作・情報閲覧が可能(出所:古野電気)

経営企画の視点では、入退場と滞在時間が自動的かつ網羅的に記録されることで、特定日だけでなく平常時の実態を示せるようになる。月平均や曜日別、時間帯別といった形でデータを整理できるため、2時間ルールへの対応や荷主責任が問われる局面でも、感覚論ではなく事実に基づいた説明が可能になる。対策前後で滞在時間の変化を比較し、改善の効果を検証できる点も、制度対応を「やりっぱなし」にしないうえで重要だ。

総務にとっては、守衛業務の省人化やセキュリティ強化、近隣への渋滞対策といった課題を一体で進められる。入退場口を整理し、登録車両のみを自動通過させることで、守衛は全件対応から例外対応へと役割が変わる。人手不足が深刻化するなか、守衛業務そのものをどう維持するかという問題に対し、現実的な選択肢を示している。

一方、現場やトラックドライバーに新たな負荷をかけない点も、FLOWVISの大きな特長だ。受付操作や申告、入力作業を前提としないため、「入った」「出ていない」といった認識の食い違いが起きにくく、記録を巡って現場とドライバーが揉めることも減る。管理者側でも、記録の確認や修正に追われることが少なくなり、「まず事実を見る」議論が可能になる。

西村氏は、こうした点を踏まえ、「人に依存しない仕組みであることが、結果として制度対応を持続可能にする」と強調する。ETCを中核に据えた入退場管理は、濃霧や降雪といった環境条件にも左右されにくく、データを“取り続けられる”という前提を崩さない。

法令順守を厳格に進めながら、拠点の利便性を高め、それでいて現場やドライバーに無用な負担をかけない。FLOWVISが示しているのは、制度対応と現場改善を対立させず、同時に成立させるための現実的なアプローチだ。

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