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第3報、17日17時現在

福島県沖地震、交通インフラの通行止め区間縮小

2022年3月17日 (木)

国内3月16日夜に発生した福島県沖を震源とする最大震度6強の地震は、物流への影響を広げつつある。高速道路などの交通インフラでは、管理者による安全確認が進み、通行止め区間が段階的に縮小してきているが、新たに判明した被害もあり、今回の地震による影響を見きわめるには今しばらく時間がかかりそうだ。

■高速道路の通行止めは順次縮小

▲黒塗り区間が通行止め(出所:ハイウェイ交通情報、17日16時50分現在)

17日16時50分時点における高速道路の通行止め区間は、常磐自動車道の常磐富岡インターチェンジ(IC)・山元IC間の上下線のみとなっている。地震発生後に通行止めになっていた他の区間については、すでに通行止めが解除された。

東北道では、宮城県白石市内の下り線で、50メートルにわたり地面のひび割れが発生。復旧には時間がかかる見通しだ。常磐道でも路面の段差やクラック、遮音壁などの付属物の倒壊が50件発生しているという。

■陸運各社の集配に影響

高速道路の通行止めなどを受けて、宅配サービスへの影響も出ている。ヤマト運輸(東京都中央区)は、全国から東北6県(青森、秋田、岩手、宮城、山形、福島)宛ての荷物と東北から全国宛ての荷物に半日程度の遅れが生ずるとしている。加えて、関東1都6県(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川)・山梨県・静岡県から北海道宛ての18日到着予定の荷物についても、1日程度の遅延が発生する可能性があるとしている。

佐川急便(京都市南区)も、北海道と東北6県で一部の荷物で配送の遅延が発生する可能性があるとしている。日本郵便も、北海道と東北6県で引き受けまたは配達となる郵便物・ゆうパックなどの配送で一部遅れが発生しているほか、停電により茨城県・東京都で引き受けまたは配達となる郵便物・ゆうパックなど一部の配達が遅れる可能性もあるという。

北陸甲信越地方に本拠を置く新潟運輸(新潟市中央区)、トナミ運輸なども東北6県における荷物の輸配送に遅延が発生していると報じている。

■鉄道貨物への影響広がる

東日本旅客鉄道(JR東日本)は、JR東北線や常磐線など東北各線区で安全確認を進めており、本日午後から18日始発までに一部区間を除いて運転を再開する見通しだ。

なお、東北新幹線は福島駅・白石蔵王駅間で「やまびこ223号」が脱線。17日朝の始発から運転を見合わせているほか、架線が傾くなどの被害も確認されており、再開には相当程度の時間を要する見通しだ。

■港湾への影響
13時現在、仙台塩釜港でコンテナターミナルは稼働中だが、蔵置コンテナにズレが生じている模様。RORO船への運航に影響はなし。フェリーへの影響は調査中としている。

16日夜の強い地震、インフラ維持への迅速な対応は「11年前の教訓」の賜物だ

3月16日深夜に発生した福島県沖を震源とする強い地震は、改めて物流インフラの強靭化のあり方が問われることになった。東北新幹線が脱線した姿からは、交通網がいかに自然の脅威に対して無力であるかが思い知らされる。とはいえ、発生から半日余りがたった現時点で、一部を除いて主要道路や在来線が通行できるようになったのは、高速道路会社や鉄道事業者の使命感の結晶だ。こうした努力こそが、物流を維持している現実を見せつけられた思いだ。

発生が深夜だったこともあり、道路や鉄道をはじめとする交通インフラの被害状況を確認する作業は、実質的には17日朝からとなった。東日本高速道路(NEXCO東日本)は、路面のひび割れで早期復旧が難しい区間を迂回する案内を、午前中の早い段階でウェブサイトなどで告知。他の区間における被害が軽微だったこともあるが、こうした「ソフト面」の対応こそが、車両運行スケジュールを含めた輸配送計画の策定を最適化するためには不可欠だ。

今回の地震では、こうした迅速な対応が随所に見られた。先週11日には、東日本大震災から11年を迎え、各方面でその教訓をどう伝承して防災や被災時の社会維持活動につなげるかが問われている。こうした機運が高まるなかでの今回の地震だ。余震の心配も続くなかでの復旧作業、さらには社会のあらゆる活動を継続するために不可欠な物流業務。こうした厳しい現場を支える従事者の存在が、災害からの着実な復旧を後押しする。11年前の教訓は確実に受け継がれている。(編集部・清水直樹)