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ロシア事業「停止」、物流など進出企業の36%に拡大

2022年4月15日 (金)

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調査・データ物流業界をはじめ、ロシアでのビジネスから撤退する企業が相次いでいる。帝国データバンク(東京都港区)のまとめによると、ロシア事業の停止や制限、撤退を明らかにした企業は、当地へ進出する企業の36%に達した。なかには完全撤退を決めた企業もあり、ロシアのウクライナ侵攻が長期化するなかで、ロシアビジネスの先行きについて警戒感が高まっていることも、停止や凍結に踏み切る企業が急増している要因となっている。

帝国データバンクは、ことし2月時点でロシアへ進出する国内上場企業168社を対象にロシア事業の方向性について調査。4月11日までにロシア事業の停止や制限・撤退を発表・公開した企業は、36%にあたる60社だった。3月15日時点では22%にとどまっていたが、この1か月弱で2倍に拡大した形だ。

3月時点では完全撤退を表明した企業はゼロだったが、4月時点では新たに3社がロシア現地事業からの完全撤退を発表。受注残といった理由から現地での事業を当面継続する企業もあった。

事業の停止や中断となった内訳では、製品の出荷・受注などを含む「取引停止」が31社で最多。次いで現地工場の稼働停止など「生産停止」(11社)が続いた。店舗や現地の販売活動などを含めた「営業停止」は9社だった。ロシア事業の停止理由としては、物流停滞や部品調達難による現地生産や商品配送などサプライチェーン面の混乱を挙げる企業が多かった。

業種別にロシア事業を停止・撤退した割合をみると、最も高いのは製造業で、業種全体の42%。現地工場の操業停止のほか、部品や完成品の輸出・取引を一時的に停止するといった措置をとる企業が多い。次いで金融機関や事業持ち株会社など金融・保険業、商社などを含む卸売業、運輸・通信業と続いた。

ロシアが撤退する外国企業の資産国有化を打ち出すなどビジネスリスクの高まりも浸透したことで、対ロシア事業の停止や撤退の判断は「侵攻当初よりも容易にはなっている」といった見方もある。国際的な対ロ非難は長期化する可能性が高く、ビジネス環境が正常化する道筋も現時点では立っておらず、そのためロシアビジネスを見直す動きはこれまで以上に進む可能性が高い。

縮小するロシア事業、「収束後」の経済復興への対応を考えておきたい

ロシアのウクライナ侵攻が開始されて以降、現地における事業停止やロシアへの製品輸出の見合わせなどの動きが日本企業でも急速に進んでいる。米欧各国を中心とした対ロシア経済制裁の発動を受けて、正常な事業活動が困難と判断したためだ。その最大の要因は、物流の混乱であろう。

改めて、物流が国際ビジネスを根底で支えるインフラであることを実感する。軍事行動は、こうした物流インフラに物理的な打撃を与えるだけでなく経済の縮小やビジネス機会の喪失を招く。欧州を中心としたビジネスは、ウクライナ情勢が長期化すればするほど、不透明感を強めることになる。サプライチェーンが弱体化するのは必然だ。

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とはいえ、国内の物流事業者は当地でのビジネスの撤退や縮小を進めると同時に、準備しておく必要のある取り組みもある。ウクライナ情勢が沈静化した後のビジネス対応だ。

現時点では軍事行動の収束後の情勢など全く想定できないが、経済的な復興の動きはいずれ顕在化するであろう。そのタイミングで、いかに迅速に動き出すことができるか。当地の物流ニーズに応える時がいつか必ずやってくる。そう信じてやまない。(編集部・清水直樹)