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ESR、伊勢湾岸道沿線に15万平米の巨大施設を完工

2022年5月13日 (金)

拠点・施設ESR(東京都港区)は13日、マルチテナント型物流施設「ESR弥富木曽岬ディストリビューションセンター」(弥富木曽岬DC、三重県木曽岬町)の建築工事が完了したと発表した。総額270億円を投じた中京圏で最大級の規模を誇る物流施設は、2020年12月の着工から1年5か月を経て、いよいよその威容を現した。

▲鳥瞰したESR弥富木曽岬ディストリビューションセンター

弥富木曽岬DCは木曽岬干拓地工業用地の第一期分譲区域内に建設。国道23号(名四国道)や伊勢湾岸自動車道を介した中京圏各地へのアクセス性に優れているのが特徴だ。伊勢湾岸自動車道は、新東名高速道路や新名神高速道路と直結しており、首都圏と関西圏の中間地点に位置する地理的特性を生かした中継・代替拠点としての活用ニーズも視野に入れる。

ESRは、弥富木曽岬DCを「レッドウッド名古屋南DC」「レッドウッド弥富DC」「ESR名古屋大高DC」「ESR愛⻄DC」といった近隣に所有する物流施設との連携機能も訴求。より高水準の物流サービスを提供する環境を整えることで、中京圏における圧倒的な差別化を促進する。

施設機能における最大の特徴は、1階から4階まで全フロアに直接乗り入れることができる上下専用のダブルランプウェイだ。片面車路につき、荷さばきのスペースも広く確保できる構造とした。1階は低床式倉庫、2階から4階までは高床式倉庫とし、トラックバースは1階61台、2階から4階までは各56台の合計229台分を設置するなど、マルチテナント型物流施設としての機能を存分に発揮できる仕様とした。


▲(左から)1階・低床式倉庫、4階・高床式倉庫

倉庫部分は小割りでの賃借ニーズにも対応し、最小区画で1500坪(4950平方メートル)、最大で約1万坪(約3万3000平方メートル)のワンフロアオペレーションが可能とした。大型機械部品などの重量貨物にも対応できるよう、1階の床荷重は1平方メートルあたり2トンと3トンのエリアを設け、2階から4階も1.5トンを確保。全フロアで2.5トン対応のフォークリフトが走行可能な仕様とした。

有効高は1階で5メートルから6.8メートル、2階と3階が5.5メートル、4階は6メートルから7メートルと業界でも最高水準。全フロアの柱ピッチは11メートル×10.5メートルと保管効率の良いスパンを採用。敷地内には53台分の大型トラック待機場も完備。電力機能としては、ロボティクスやマテリアルハンドリングなどハイスペックなシステムの導入を想定した高圧電力の供給能力を確保した。

就業環境面では、ESRの基本理念である「HUMAN CENTRIC DESIGN.(ヒューマン・セントリック・デザイン、人を中心に考えたデザイン)」に基づき、施設で働く従業員にとって快適で魅力的な環境づくりとコミュニティーエリアの創出に注力した。

弥富木曽岬DCでは、木曽川河口のデルタ地帯に広がる木曽岬町は平坦な土地であることから、最上階にあるラウンジに起伏のある「柱状節理」のモチーフを採用。動きのある洞窟状の空間デザインを施した。さらに新型コロナウイルス禍を契機とした社会的要求から換気の重要性や屋外空間の有用性を見直し、天井を高くしてテラス席を設けた。

メインエントランスホールは「訪れる人に和み和らいでほしい」という想いを込め、ESRとして初めて「和」をデザインコンセプトに設定。自然豊かな木曽岬町の名所である鍋田川堤桜並木をモザイクタイルで描き、天然の竹林を取り入れた空間に。天然アロマの心地よい香りで、安らぎも演出した。エレベーターホールなど他のスペースについても、同様に和の雰囲気を印象づけた装飾でそろえた。

環境負荷低減に向けた機能として特徴的なのが、さらなる省エネルギーを図るため入居企業のレイアウトに合わせてエリアごとに照明の点灯区分を自由に設定できる、画期的な環境配慮型照明システムだ。AI(人工知能)技術を活用した植栽かん水システムも初採用。屋上に太陽光パネルを設置し、3メガワット規模の自家消費型太陽光発電システムも稼働する予定だ。

BCP(事業継続計画)対策では、非常用自家発電設備を設置。停電時でも一定時間、防災センターや荷物用エレベーター、トイレなどの使用が可能。全フロアのトラックバースに手動で開放できるオーバースライダーを採用し、停電時でも荷さばきが可能な仕様とした。高い造成基盤と防波堤など木曽川の安全対策により、津波・高潮・豪雨による浸水被害リスクが非常に低い。大きな地震への耐震基準も満たす。

ESR弥富木曽岬ディストリビューションセンターの概要
所在地:三重県木曽岬町新輪1-3-4
敷地面積:7万9096平方メートル(2万3926坪)
延床面積:15万5332平方メートル(4万6988坪)
構造:鉄筋コンクリート・鉄骨造、地上4階建て
交通:伊勢湾岸自動車道「湾岸弥富インターチェンジ(IC)」9.6キロ、「弥富木曽岬IC」11.8キロ、国道23号(名四国道)「木曽岬IC」2.8キロ、近畿日本鉄道名古屋線「近鉄弥富駅」9.3キロ、名古屋市中心部25キロ、名古屋港鍋田ふ頭コンテナターミナル13キロ、中部国際空港46キロ

ESR、物流「大動脈」の最適な活用法のヒントを提供できるか

ESRが中京圏における物流施設ネットワーク戦略の中枢と位置付ける弥富木曽岬DCが、ついに完成した。延床面積15万平方メートル超、建物の最大幅410メートルの巨大施設は、マルチテナント型施設として無限の可能性を抱かせるに十分だ。裏を返せば、ESRはこの巨大施設から将来の物流施設のあり方をいかに提示できるかが問われることになる。

物流施設の空室率がこれまでにない低水準で推移し、大型マルチテナント型施設の対応論が根強い中京圏。自動車関連産業をはじめとする製造業が数多く立地し、主要港湾も控えて倉庫需要も極めて高い土地柄である一方で、国土軸における地理的要素も強いのが中京圏の特徴だ。

首都圏と関西圏という2大都市圏を両方に抱えて、中京圏という独自の都市圏を抱えながら機能補完の役割も演じる必要がある、いかにも絶妙な立ち位置だ。こうしたバランスに着目したのがESRだった。

新東名高速道路から伊勢湾岸自動車道、新名神高速道路とつながる高規格高速道路は、今後の幹線輸送を担う物流の大動脈となる。その沿線にこれほどまでに広大な施設を整えたESRは、こうした大動脈における物流の最適な活用方法を提示するヒントを提供できるか。異次元の倉庫運営の手腕が問われる。(編集部・清水直樹)