調査・データ公正取引委員会は3日、エネルギーコストや原材料費、労務費の上昇分の価格転嫁を拒まれた事案について緊急調査を行うと発表した。調査対象は22業種で、物流業界では道路貨物運送業が含まれる。例年、荷主と物流事業者との取引関係のみについて行っていた「優越的地位の濫用調査」の範囲を他業界に拡大し、サプライチェーン全体で問題事案の洗い出しを徹底する。

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新型コロナウイルス禍による世界的な物流の混乱や生産の停滞にウクライナ情勢が重なり、原油高や原材料高、労務費に拍車がかかっている。適切な価格転嫁を進めることが喫緊の課題で、政府は2021年12月に「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」をまとめている。この緊急調査はそれに基づくもので、これまでの「濫用調査」の手法を用いて経済全体の取引適正化を急ぐ。
発表によると、緊急調査ではまず、独占禁止法上の優越的地位の濫用が疑われる価格転嫁拒否行為があったかどうかを、被害を受けがちな側(受注者側)に尋ねる。対象22業種は道路貨物運送業のほか、総合工事業や食料品製造業、輸送用機械器具製造業、飲食料品卸売業などで、調査票8万通を対象事業者に送る。また、調査票が届かない事業者でも自発的に調査に回答できるよう、公取委のウェブサイトに特設ページを設けた。
受注者側への調査結果を踏まえ、価格転嫁拒否の疑いがある側(発注者側)に対する書面調査を2万社以上の規模で実施し、問題性が高い案件には立入調査も行う。結果は22年度中に取りまとめる。
公取委が5月下旬に発表した21年度の物流事業者への「濫用調査」では、独禁法上の問題につながる恐れがある取り引きが737件見つかり、荷主641社に注意喚起の文書を送った。このうち価格転嫁拒否を含む「買いたたき」は26件あった。