調査・データ公正取引委員会は25日、独占禁止法が禁止する、荷主による物流事業者への優越的地位の濫用について、2021年度の調査結果を発表した。燃油上昇分などの物流価格転嫁を拒否した疑いのある荷主19社には立ち入り調査も行い、独禁法上の問題につながる恐れのある荷主が641社判明。注意喚起の文書を送付した。
調査は、公取委が04年に濫用防止に向けて告示して以降、継続的に実施している。今回は、荷主3万社に対して21年10月から11月までに、物流事業者にはことし1月に、それぞれ調査票を送る方式で直近1年間の状況を聞いた。荷主1万1438社(回答率38.1%)、物流1万8658社(46.7%)から回答を得た。
調査結果によると、注意喚起に至った濫用疑い行為は641社、737件見つかった。「不当な給付内容の変更及びやり直し」が351件と半数近くを占める。燃油高・原材料高の価格転嫁拒否が問題となっているが、それを含む「買いたたき」は26件あった。「不当な経済上の利益提供要請」は44件、代金の減額92件、報復措置は21件あった。
「濫用疑い」の641社を業種別に見ると、建築材料・鉱物・金属材料等卸売業が最多で60社、機械器具卸売業が46社、食料品製造業が35社と続いた。
なかには、荷主(飲食料品卸売業)が物流事業者に「協力金」との名目で数万円の金銭を提供させていたケースや、荷主(非鉄金属製造業)が物流事業者に毎月の支払額から一律5%減じた額を支払っていたケースもあった。
公取委によると、前年度の調査でも文書送付に至った荷主は644社あり、例年600社前後で大きくは減っていないという。