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労働時間を自動集計し配車時にアラートを出す新機能を年内に導入へ

進化を続けるAzoop「トラッカーズマネージャー」

2022年7月21日 (木)

話題「物流の2024年問題」。運送事業者を中心とする物流業界における問題認識として、このフレーズを耳にしない日はない。働き方改革関連法に伴う「時間外労働時間のc時間外労働」などが2024年4月から「自動車運転の業務」にも適用されることで、発生が懸念されている物流業界の諸問題。時間外労働の上限規制とともに、時間外労働の割増賃金や同一労働・同一賃金の厳格な導入が求められる。

物流業界にとって、この問題は就労環境を抜本的に見直す契機となる期待もある。一方で、社会に不可欠なインフラとして機能する物流サービスの維持が難しくなることへの危機感も根強い。2024年問題が物流業界にとって脅威と受け止められている理由は、まさにそこにある。

とはいえ、現場を支える従業員あっての物流サービスなのは言うまでもない。現場業務の効率化・最適化をデジタルの力で実現できないか。こうした物流DX(デジタルトランスフォーメーション)による問題解決を推進するのが、Azoop(アズープ、東京都港区)だ。

運送事業者向けの中古車売買プラットフォーム「トラッカーズオークション」を運営するとともに、車両管理や運行管理などの運送業務に必要な全ての機能を持つクラウド型運送業務支援システム「トラッカーズマネージャー」などのサービスを提供。物流現場における車両に関わる諸問題に対応するシステム開発で急速に存在感を高めている。ここでは、Azoopが取り組む車両管理システムの最新の動きとその背景に迫る。

複数の車両情報をクラウドで一元管理

Azoopが2020年3月に提供を始めたトラッカーズマネージャーは、車両台帳や運転者台帳などをクラウドで一元管理することにより、運送管理業務の効率化をサポート。さらには車両コストの「見える化」を支援する機能を持つ。例えば、購入から廃車までの車歴の管理や、配車・運行計画から請求書の発行までの日々の運行管理業務を一つのシステムで完結。さらに運賃交渉に役立つ原価集計もクラウドで効率的に進められる。

具体的には、各車両にかかる情報と、運賃に基づく燃料代など原価の管理をクラウドで効率化・最適化することによる企業価値向上の支援システムと言える。

トラッカーズマネージャーの特徴は、直感的でわかりやすい操作性だ。導入企業へのヒアリングを重ねることにより、使い勝手の良さを追求することでサービスのさらなるユーザーを開拓していく戦略は、アナログの要素が強くDXの推進力が鈍かった物流業界に高い親和性をもたらす効果もあった。

▲Azoopの朴貴頌社長

「Azoopのシステム開発のモットーは『現地現物』です。導入を希望する事業者の現場に出向き、ドライバーや配車担当者など業務改善の対象となる仕事をまる一日かけて、実際に追跡します。そこで得られた改善点を開発に反映することにより、より現場に即した問題解決につながるシステムの構築につなげるのです」。朴貴頌社長は、Azoop流の問題抽出とそれを反映したシステム開発の考え方についてこう語る。

Azoopはトラッカーズマネージャーの機能について、導入企業との情報交換や独自の市場動向分析などで探り当てた問題点やニーズを反映しながら、次々と拡張を進めている。車両やドライバー、事故情報管理や原価計算といった「車両管理」に加えて、案件や配車、実績入力(日報)、さらには請求書発行や売上管理、労働時間管理といった「運行管理」もシステム化。車両からドライバー、配車、運行計画、請求書の発行・送付まで、運送業務に必要なあらゆる機能を提供できる。さまざまな事業運営コストやトラック一台あたりの収益の集計・分析まで可能になっているのだ。

「社会に不可欠な物流の効率化は不可欠」との認識から生まれたトラッカーズマネージャー

とはいえ、トラッカーズマネージャーが目指す方向性については、全くぶれることがない。「Azoopがトラッカーズマネージャーで実現したいこと、それは『今まで属人的になっていた業務のシステム集約による情報の利用・活用体制』『システム集約による会社としての最適な情報共有体制』の2点です」

朴社長は、こうしたトラッカーズマネージャーの“進化”こそが、Azoopとして運送事業者を中心とする物流業界における問題解決を促す画期的なツールになると強調する。

朴社長が家業である運送事業・中古トラック専門商社を経て2017年5月にAzoopを設立した狙いもそこにある。中古車流通ビジネスから運送業務管理、さらに物流M&A支援事業とビジネスポートフォリオは大きく拡大したが、その根底にあるのは、社会インフラを担う現場における業務の効率化・最適化を通して物流サービスの持続的な発展・強化を支援する使命感にほかならない。

「そのためには、紙やエクセルによる属人的な情報管理、システムや情報の企業内における共有の欠如から脱却する必要があります。こうした問題認識を背景に生まれたのが、トラッカーズマネージャーです」(朴社長)

アナログ業務からの脱却による情報集計力の向上を促進する「車両管理」

トラッカーズマネージャーは、車両管理と運行管理の2つの機能で構成するクラウド型システムだ。まず車両管理は、大きく「車両」「ドライバー」「事故」の3項目を一元管理できる機能が特徴。最新情報はもちろん、過去の履歴やファイルも管理できる。

車両台帳のデジタル化については、車両に係る登録年月日や種別、総重量、駆動方式など各種基本情報をデジタル上で管理。「車検証や請求書などファールデータもアップロードできるため、ペーパーレス化にもつながります」(朴社長)

修理履歴や燃費管理につながる燃料情報管理のレポート化、整備・点検スケジュールの集約、リース・保険情報のリスト化など、車両の適正な管理につなげられる機能をそろえた。より効率的でコストを抑えた車両管理を実現するためのデータ集約・分析も可能で、まさに現場における車両管理者の業務の効率化と最適化を両立できる機能と言えるだろう。

さらに、物流業界でもカーボンニュートラル実現に向けた機運が高まるなかで、環境負荷低減策として車両情報に基づく「グリーン経営に必要な帳票データ」を自動で集計できる仕組みも導入。まさに、導入企業の事業戦略を意識した機能と言えるだろう。物流DXの進展を見据えて業界の枠を超えた多くの企業が参入する車両管理システムの市場で、トラッカーズマネージャーが存在感を維持し続けている背景には、こうした鋭いニーズ探索の成果があるのだろう。

拠点間のコミュニケーション強化も促す「運行管理機能」

トラッカーズマネージャーの「両輪」をなすもう一つの機能が、運行管理だ。「システム連携やCSVによる取り込みなど、大量のデータ投入で入力を簡素化できるのが強みです」(朴社長)

象徴的なのが、案件・日報情報を一覧できる機能だ。毎日の案件・日報情報を登録することで、月次の請求書作成や労働時間の集計の基本情報を管理できるほか、入力作業の簡素化を図れるのだ。請求書や売上高を自動集計できるため、こうした書類の作成における負担を大幅に減らせる。

▲日報情報一覧画面(クリックで拡大)

さらに、配車表をデジタル上で表現することにより、営業所をまたいだ配車状況の共有が可能となる。「配車状況を共有して営業所間のコミュニケーションを促すことにより、自社稼働比率を高めることも想定できるのです」(朴社長)

「あと何時間働けるか」を可視化するトラッカーズマネージャーの新機能

トラッカーズマネージャーの運行管理機能は、さらに拡大し続ける。Azoopが新機能として年内の導入を目指すのが、「改善基準告示アラート」だ。

今まで多くの運送会社の現場では、ドライバーの労働時間の集計のみで終わっており、改善に活かすまでは至らないケースが散見されていた。今回の機能として、日々の日報を基に各ドライバーの労働時間を自動で集計し、配車時に改善基準告示に対するアラートが出ることで、違反の未然防止(改善)に役立つことが期待される。さらに、トップ画面で拠点ごとの「超過寸前」「超過」の人数をそれぞれオレンジ色と赤色で掲示。その数字をクリックすれば、その対象者が表示される仕組みだ。

▲改善基準告知アラート画面(クリックで拡大)

労働時間の集計と改善基準の告示により、労務管理の集計における負担軽減につなげるほか、長時間勤務が続いているドライバーの「抑止力」効果を期待できる仕掛けも特徴だ。

朴社長は「『あと何時間働けますよ』と告知するのが本来の機能。特にドライバーの勤務時間に係る情報は、なかなか適時に把握しにくいものであり、運送現場の要望もありました。『物流の2024年問題』への対応、さらにはコンプライアンスの観点からも、こうした労務管理業務の効率化支援は今後も重要性が高まっていくでしょう」と意義を強調する。

▲運行実績詳細表の画面(クリックで拡大)

物流における「車」と「人」の問題解決へ、進化を続けるトラッカーズマネージャー

物流現場における「車」と「人」の問題解決を支援するシステムの開発に挑んできたAzoop。トラッカーズマネージャーの進化は止まらない。

Azoopは現在、整備事業者と連携し、トラッカーズマネージャー内でトラック点検・整備の事前予約ができる機能の導入を目指して検証中だ。運送事業者の業務運用スケジュールに応じて自動車継続検査(車検)や各種点検・整備を整備事業者に依頼できるサービスだ。点検整備データをクラウド上で共有することで自動でトラッカーズマネージャーに反映されることから、車両の効率的な運用にもつながる取り組みだ。

さらには、リースや保険をトラッカーズマネージャーで取り扱うサービスの検討も始めている。「『車』と『人』に関わるあらゆる業務をワンストップでできるシステム。これがAzoopの掲げるサービスの『ありたい姿』です。今後も、様々な領域にこのワンストップシステムを広げていきます」(朴社長)

運送会社に寄り添った物流DXを推進するAzoopのこだわり。トラッカーズマネージャーというシステムを通して、物流事業者における業務負担の軽減と価値の最大化を促す。物流サービスのさらなる進化へ、Azoopの挑戦は終わらない。

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