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物流業でフォーク起因の労災増加、多忙さも一因か

2022年8月9日 (火)

短報記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「1-6月フォーク死傷事故40件増、運輸交通最多」(8月5日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

調査・データフォークリフトに起因する労働災害が増えており、中でも物流分野で顕著に増えている。日本産業車両協会は、EC(電子商取引)の急拡大による荷物の増加や作業の繁忙さも一因になっている可能性を指摘し、厚生労働省とともに現場作業での一層の注意を呼びかけている。

同協会が今月5日に発表した、ことし上半期(1-6月)のフォークリフト起因労働災害の発生状況(速報値)によると、死傷事故発生件数(休業4日以上の死傷者)は全業種で846件発生し、前年上半期から40件増加した。

業種別に見ると、運輸交通業は272件(前年同期比22件増)で全業種中最多となり、前年同期に同数で並んでいた製造業の250件(横ばい)との差が開いた。貨物取扱業も94件(24件増)と増えた。業種別3位の商業は134件(2件減)だった。

同協会の担当者は、断言はできないとしながらも、労災増加の背景として「運輸業界がECの拡大で忙しくなっていることはあり得る」と話している。

全業種の労災846件の事故型別の内訳は次の通り。

はさまれ・巻き込まれ303件(前年同期比19件増)▽激突され230件(36件増)▽墜落・転落103件(7件減)▽激突72件(10件増)▽飛来・落下43件(18件減)▽転倒52件(9件増)▽動作の反動・無理な動作29件(5件増)▽崩壊・倒壊8件(8件減)▽その他6件(6件減)

同協会の発表は、厚生労働省の労働災害統計から、フォークリフトに起因する労災を抜き出したものだ。同省は具体的な労災事例も発生から1年遅れで公表している。8月8日にも、製造業で起きたケースではあるが、フォークリフト起因事例を公表し、あらゆる業界の関係者に注意を呼びかけている。

(イメージ)

それによると、1年ほど前、ある金属製品メーカーで、被災者がプレス機械とフォークリフトに載せた金型の間に挟まれ死亡した。被災者はフォークリフトのフォークに金型(270キロ)を載せ、床面より高い位置に上げた状態で、プレス機械に向けて停車させた。運転席から降り、プレス機械とフォークリフトの間に立ち入ったところ、フォークリフトが動き出し、プレス機械と金型の間に腹部を挟まれ死亡した。停車位置は平坦だったが、エンジンを停止せず、シフトレバーは1速・前進だった。サイドブレーキは引かれていたが、クラッチディスクが摩耗しており、ブレーキが十分にかからなかった。

厚労省は、運転者が運転位置を離れる時にエンジンを停止させることや、その際はフォークを最低降下位置に置くこと、月次検査の項目にクラッチの異常の有無を加えることなどを、対策として呼びかけている。