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運送会社DXに盲点、点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や方向性探る

キーワードは点呼と運送DX-討論イベント詳報(1)

2022年9月26日 (月)

話題LOGISTICS TODAYは、オンラインイベント「運送会社DXに盲点、“点呼業務”の主要メーカー・販社と徹底討論」を9月7日に開催。点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や今後の方向性について論戦を展開しました。登壇者が安全運行の管理に欠かせない点呼のあり方を含めた持論を披露。先進的な点呼の導入に不安を抱える視聴者にとっても、足元の動きを捉えて今後の動きに対応するヒントを得る有意義な機会となりました。

ここでは、今回のイベントにおける登壇者の具体的なやり取りを10回に分けて詳報する連載企画。第1回は、各登壇者による意見交換に先立ち、点呼DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り巻く動きを見つめます。

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>

皆様、こんにちは。本日は120分にわたりまして「点呼」と「運送DX」の2つのキーワードで、「運送点呼DX」に関する討論会を行います。皆様がどういうふうに向き合っていけばいいのか。向き合っていく上でどんな課題があって、どう対処していけばいいのか。それからどういう利点があって、どういうところに注意しなければいけないのか。それらを明らかにしていく、非常にチャレンジングな討論会を予定しております。

私は、LOGISTICS TODAY編集長の赤澤と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

それでは議論に入ってまいります。最初に今日、私とともに点呼についていろいろと教えていただくタイガー取締役営業本部長の成澤正照様にお越しいただいております。成澤さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

<タイガー取締役営業本部長・成澤正照氏>
タイガーの成澤と申します。皆様には、タイガーの井上をご案内させていただきましたが、私がピンチヒッターを今日は務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

激変する物流業界が直面する安全や就労環境への懸念、その解決策として期待される「点呼DX」

<赤澤>
よろしくお願いします。ありがとうございます。それではまず、議論に入っていく前に、本日は「点呼DX」のテーマにフォーカスするイベントとなっております。その狙いを私の方から紹介させていただきたいと思います。

まずご視聴いただいてる方、トラック運送事業をやっていらっしゃる方が非常に多いと思うんですけれども、運送業はかなり長く人手不足が続いております。その背景には少子高齢化があります。それから今も話題になりましたけれども、新型コロナウイルス。これも運送事業のあり方に大きな変化をもたらしたと言えると思います。運ぶモノも変わったし、それから運び方も変わったし、いろんなことに配慮していかなきゃいけなくなりました。人手不足は、トラックドライバーの方に長時間労働を誘発する背景にもなっているのではないかと思います。

(イメージ)

さらに国際情勢に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵攻が国際物流にも大きな変化を強いています。この国際物流が変われば、国内の物流も当然影響を受けるわけです。

あらゆることが変わってまいります。その結果、物流の世界もかなり大きな変化を余儀なくされています。運ぶ内容、荷主の状況、世の中で必要とされる物資の中身やボリューム。それがさまざまな偏りをもたらして、この物流業界はそうそうないような変革期を迎えています。

運送事業をやっていらっしゃる方からすると、いろんなコストが上がってまいりました。自分たちの身の回りを見ても様々なモノの価格が上昇しております。運送事業をやっていくうえでも燃料でありますとか、あるいは車両、あるいはいろんな運送に必要な設備、こういったものが上がってきています。人件費も上がってきている中で、これがトラック運送業においては、運行業務にしわ寄せがいかざるを得ないわけです。これがさらに長時間労働を誘発したり、それによって安全性が阻害されたりといった原因にもなります。

(イメージ)

こういったことを未然に防いでいくためには、何が必要か。いろんなことがありますけれども、運送業といえば、まずは点呼なんですよね。昔ながらの対面型で点呼をしっかりとやるというのは非常に大事なんですけれども、昨今DXと呼ばれるデジタルの力を取り入れることによって、今までできなかったようなことが可能になります。ここに国土交通省も着目しておりまして、IT点呼、それから私が聞いたことあるところでは遠隔点呼とか。中にはAI(人工知能)点呼、ロボット点呼、自動点呼なんていうことも聞いたことがあります。非常にたくさんの点呼制度が出てきています。それぞれメリットがあるから、そういう言葉が出てくるんだろうと思います。

けれども、事業者の立場として見れば、何がどう違うのかというのも事実であります。本日はそのあたりを明らかにして、皆様にメリットとデメリット、それからどういったところに気をつけなければならないのか、気にしながらお話を聞いていただけたらと思います。

本日のプログラムをご紹介したいと思います。対面点呼、IT点呼、AI点呼、そういったものを総括して先進点呼と呼んでおりますけれども、どういったものがあるのか。それからさまざまな先進的な制度が、運送会社が抱える課題とどう関わっていくのか。さらに、後ほど出てきますけども、この遠隔点呼は結構ハードルが高そうだとも聞いております。そのあたりの実情ですね。さらにはこの先進的な点呼、実はまだ導入に至った企業が数少ないのではないかという話も聞こえております。けれども、既にその壁を乗り越えて導入に至った先駆者たちもいるわけですね。その辺の話も聞けたらいいんじゃないかなと思っております。

そういった話を整理した上で、遠隔点呼、IT点呼、それから自動点呼、この3つに着目してこれらを徹底比較していきます。最終的にはこの運送事業における点呼の仕組みがどうなっていくのかというところまでたどり着けたら、本日は大団円ということになるんじゃなかろうかと期待して、進めていきたいと思います。

それではまずタイガーの成澤様に、どういった点呼制度があって、それぞれどういう特徴があるのかを教えていただきたいと思います。成澤様、どうぞよろしくお願いします。

ICTの発展で可能になった「IT点呼」「遠隔点呼」「自動点呼」

<成澤氏>
ありがとうございます。それでは点呼についてお話をさせていただければと思います。今日ご視聴いただいてる皆様は運送事業者でございますから、釈迦に説法だとは思うんですけれども「こういったことを確認をしなきゃならないんだ」「点呼においてこういうことをしなきゃならないんだ」という点について、皆様とともに確認できればと思っております。

まず点呼の内容でございます。法律的にはこのように記載されております。「運行管理者が乗務前、乗務後、点呼を実施し、運転者から本人の健康状態や酒気帯びの有無、日常点検の報告を求め、それに対して安全を確保するために重要な指示を行うこと」。これを対面で行うことが基本事項になっております。

点呼で確認すべき項目ということで、これは例として挙げさせていただいております。点呼には出庫点呼と帰庫点呼がございますが、今日は出庫点呼を例に挙げました。また貨物、バス、タクシーと、その業体特有のスキームもあると思います。一例としてご確認をいただければと思います。アルコールチェックをはじめ運転手の健康状態、今日の運行の指示事項など、日頃から皆様がされている事柄について伝えていければと思っております。

点呼は、対面で行うのが大原則となっております。けれども、実際の運行状況の事情を見ますと、対面での点呼は、なかなか無理がある状況が否めないと思っております。先ほど赤澤さんの話にありましたが、IT点呼や遠隔点呼、そして自動点呼といった取り組みが、いわゆる最近のICTの発展により十分可能になってきたのが今の状況でございます。

今日は特にIT点呼、遠隔点呼、こういったものに対して焦点を絞って協議できたらいいかなと思っております。

まずIT点呼についてでございます。今、IT点呼につきましては、「Gマーク」(Gマーク制度=貨物自動車運送事業安全性評価事業)の取得事業者にだけ認められている申請でございます。2007年に点呼が施行されて、18年からは車庫間においての点呼も認められるようになりました。

これはスマートフォン(スマホ)の普及が大きく作用していると思いますけれども、iPhone(アイフォン)が07年に普及し始め、さらにAndroid(アンドロイド)が08年に発売されたと思います。それから10年が経過し、18年にやっとスマホをはじめとする携帯端末などで施行できるようになったのは、非常に大きなメリットだと思っております。

第2回も引き続き、点呼DX(デジタルトランスフォーメーション)の具体的な動きについてまとめます。

次>>第2回