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運送会社DXに盲点、点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や方向性探る

先進点呼「強みと弱み」検証-討論イベント詳報(7)

2022年9月29日 (木)

話題LOGISTICS TODAYは、オンラインイベント「運送会社DXに盲点、“点呼業務”の主要メーカー・販社と徹底討論」を9月7日に開催。点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や今後の方向性について論戦を展開しました。イベントにおける登壇者の具体的なやりとりを詳報する連載企画。第7回は、遠隔点呼とIT点呼、さらに自動点呼のそれぞれのメリットとデメリットを検証します。

3種類の点呼制度がそれぞれ持ち合わせる「メリット」「デメリット」

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
ここまで、「どうしてルールが作られたのか」との観点から話を展開してきました。改めて皆様のお手元のフリップを使って、もう1回お尋ねしたいことがあります。遠隔点呼とIT点呼、さらに自動点呼。この3種類の点呼について、現時点におけるルールの中でそれぞれメリットとデメリットがある気がします。それをキーワードでお書きいただきたいと思います。

今まで話を深めてきましたけれども、聞いている方からするとまだモヤモヤしているところもあるのではないかと思います。お客様の反応はどうですか。

<タイガー取締役営業本部長・成澤正照氏>
そうですね。我々も今、手探りなのが正直なところです。これは本当に仕方ないところだと思いますけれど、先ほどのお話でもありましたが、地域によってずれがありますので。1件1件を丁寧に対応させていただきながら、地域性をしっかりと踏まえたうえで、「この地区のときにはこういった対応」との形でノウハウにしていきたいと思っています。

<赤澤>
なるほど、わかりました。ありがとうございます。皆様、一斉に出していただきたいと思います。

東海電子の松本様が「遠隔一強」。テレニシ吉田様は「メリットは人手不足解消・デメリットは操作不安」ということです。サンコーテクノの坂口様は「メリットは労務効率アップ、デメリットは導入コストと人材スキル」とお書きいただきました。

ありがとうございます。なぜそういう風にお書きいただいたのか、聞いていきたいと思います。東海電子の松本様のお話を聞きたくてウズウズしていますけれども、楽しみは後に取っておくとして、まずサンコーテクノの坂口様です。3種類の点呼制度におけるメリットとデメリットについて、「メリットは労務効率のアップ、デメリットは導入コスト人材スキル」とお書きいただきました。どういうことでしょう。

労務効率アップは点呼DXのメリットだ

<サンコーテクノ機能材事業本部の坂口正一副本部長>
「物流の2024年問題」も含めて、運送業にとって人材・労務改革が大きな問題となる中では、人手不足の解消も含めてシステムといったツールを入れることによって、労務効率をアップすることが最大の課題になっています。その意味では、この遠隔点呼や自動点呼、AI点呼の導入はかなり大きなメリットが出てくると思います。そういった意味で、労務効率のアップと書きました。

<赤澤>
メリットですね。でもデメリットもあると。

<坂口氏>
そうですね。デメリットに関しては「導入コスト」がひとつのハードルです。その場に監視カメラを置かなければならない。そうした意味では、それなりに導入するためのコストがまずかかります。

さらに「人材スキル」と書きましたが、意外と自動化が進むことによって運行管理または人材を管理する能力も今後は問われると思います。その人材教育も含めて、デメリットになってくるところではないかと考えました。

ですので、メリットの部分で「人材不足の解消」とはいってるんですけれども、解消しながらもそこにいる運行管理者または人材のスキルを上げていかないと、実はこのデータ管理や一元管理が、対面で実施していたときと比較するとデメリットになってくるのではないかと思います。ただし、それに向かっていかなきゃいけないところではあります。

<赤澤>
要するにその運送業の業態の中で、必要な機能が少しずつ変わってきてるということですね。

<坂口氏>
そうですね。DX(デジタルトランスフォーメーション)も含めた世の中の背景によって安全が担保できることになれば、そのデメリットの解消についても自分たちが手助けできるのではないかと思っています。

<赤澤>
手助けしていただけるのですか。

<坂口氏>
そうですね、はい。ぜひ頑張っていきたいなと思います。

不安材料となる「先進機器の操作に対する対応力」

<赤澤>
ありがとうございます。続きまして、テレニシの吉田様は「人手不足の解消がメリット、操作不安がデメリット」とお書きいただきました。これはどういうことですか。

<テレニシ法人事業本部ソリューション営業二部の吉田寛之部長>
対面が絶対のところから、IT点呼と遠隔点呼、自動点呼とデジタル化に向かっていく中で、こういった機械・システムを入れることによって、運行管理者や補助者の業務時間を削減し人材不足の解消にもつながると思っています。

<赤澤>
なるほど。デメリットに関してはいかがでしょう。

<吉田氏>
デメリットに関しては、こういったシステムを扱う方も運行管理者または補助者になってくると思います。人手不足解消と相反するところにはなるのですが、高齢化が進んでいる部分もございます。このシステムを扱うにあたって「パソコンの苦手な方が現場では多い」とも聞いており、デメリットの部分になってくるのではないか、と個人的には思っております。

<赤澤>
なるほど。そのあたりは先ほども言いましたが、運送業の業態の中ではITの得意な方がいることが、これまで異例だったと思います。必要ありませんでしたから。さらに今は人手不足でそれに向き合っていこうとすれば、これまで運送業の中では存在しなかったITをある程度使いこなせる人材が、アドオンで必要になってくる。なかなか難しい問題です。

<成澤氏>
特に夜間で点呼を取っていらっしゃる方は、運転をしていたんだけれども年齢とともに定年になった方々が多いです。事務職でも一緒だと思うのですが、当然65歳以上、さらには70歳を超えた方々が夜間点呼のお手伝いをしてくださっています。これは人員的には非常に貴重です。だけどITになかなかついていけないとなると、デメリットになってしまうので、簡単で誰でも使える技術の進歩を期待したいと思います。

遠隔点呼の普及は「対面点呼の終わり」で運用面の負担軽減

<赤澤>
ものすごく大事だと思います。それでは皆様お待たせいたしました。東海電子の松本様、「遠隔一強」とお書きいただきましたけれども、いかがでしょうか。

<東海電子取締役安全・健康システム営業部の松本剛洋部長>
そうですね。メリットとデメリットはお二人におっしゃっていただいた通りかと思うんですけれど、そもそも再三申しておりますとおり、「対面点呼の終わり」が非常に大きなキーポイントになっているのが、この遠隔点呼かなと思ったので書きました。

デメリットをあえて挙げるとすれば、費用面や初期導入の手間、そのぐらいです。逆に安全性を担保できて、運用が非常に楽になる面ではメリットしかない、と私は思っております。そのうえで、まずIT点呼と比較した場合は、範囲がもう決定的に違います。IT点呼がGマーク(Gマーク制度=貨物自動車運送事業安全性評価事業)基準なので点数的にも頭打ちになっている中で、大きな一歩だと思っております。自動点呼と比較した場合も、自動点呼は今のルールではユーザーの満足には足りないと感じています。言い方を変えると、これは半自動点呼です。

<赤澤>
なるほど。

<松本氏>
決してユーザー様の労務費削減や労力削減にはつながっていないのが現状ですので、大きなハードルがまだ残っていると思います。

<赤澤>
そこはかなり興味深いです。今ここでお尋ねしているところは、特にIT点呼と遠隔点呼の違いみたいなものを浮き彫りにできたらいいなと思っているんですけれども、そこにさらにいうと、自動点呼ですよね。その自動点呼と遠隔点呼の違いは「自動点呼=半自動」という解釈が正しいのではないか、とありました。

<松本氏>
IT点呼と遠隔点呼の非常に大きな違いがひとつあります。IT点呼はあくまでも「3分の1ルール」という運行管理者のルールに縛られていて、すべてをIT点呼で終えることはできないんです。逆に遠隔点呼は「対面点呼と同等と見なす」のが絶対的なルールですので、極端な話、人手の足りない狭い営業所であれば、すべてを遠隔点呼で終えることができます。このあたりが決定的な違いかなと思います。

<赤澤>
なるほど。要するにこの遠隔点呼に対して、IT点呼はできることがかなり制限されてしまっていると。

<松本氏>
根本の考え方の入り口が違います。運行管理者さんのDX化が本当に実現できるかどうかが、大きなポイントかなと思います。

<赤澤>
それで、比較した場合には「遠隔一強」ということですね。

<松本氏>
そうですね。自動点呼に関しては本来であれば、無人化・省力化につながるべきなのに、現状では帰庫点呼しか認められていません。なおかつ、人が事務所にいなければいけないので、まだ不十分であるのは間違いありません。

<赤澤>
なるほど。けれどもある意味では、その時間が解決するか慣れてくれば、状況が変わってくる面があるかもしれませんね。

<松本氏>
ただハードルは大きいと思います。自動点呼に関して次の一歩は、乗務可否が無人でできるかどうか、システムが乗務可否をしてくれるかどうかにかかっていまして、このハードルは相当に高いと思います。何年かはかかると思っています。

<赤澤>
なるほど、そのハードルを乗り越えるのは運送事業者ではなく、ひょっとしたらメーカーの皆様かもしれないですね。なるほど。

<坂口氏>
安全を担保するのが最大の目的です。それがすべて自動化になってしまうことで安全を担保できるのか、という議論をしっかりしていかなければいけないと思います。

自動化が無人化となった場合に、最も大事な安全担保を忘れてしまって、そもそも楽になるところだけにかたよってしまうと、本来の目的を達成できないのではないか。そのあたりも含めてメーカーと皆様が協力しながら、いいものをご提供できればと思っています。

第8回は、「遠隔点呼をトライすべきか否か」について議論します。

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